お金の話は部屋でしよう
手持ち、残り銀で5128(+19000)枚と銅9枚。
ルーキンというのは、以前組んでいたパーティメンバーの僧侶です。
自分の夕飯を済ませたアタシは、蜂蜜いりの乳飲料ちびちびやってた。お代わり頼もうかな、って迷いだす頃合いに、新婚カップルが下宿屋に戻ってくる。
キマルが何か言いながら、ヒョウムの肩をぺちぺち叩いて、アタシに気づいた。
「や、マーエ! 古巣に行ってきた話聞きたい?」
「そりゃもう。一杯だけなら奢るよ。」
「奢らなくて結構。なぜなら……」
何か得意げに語りだそうとしたのに、キマルの肩にヒョウムが手を置いて。小さく首を振る。キマルは目線をカウンターの方、もう注文を待つ体勢になってる従業員を見て、にこっと笑い顔を作った。
「ま、せっかくだから1杯ね、エールで!」
「俺もエール。」
「毎度ありー」
飲み物を受け取って、アタシ達は上階の部屋に移動する。新婚さんは二人部屋なんで、そちらで話をすることにした。
まずキマルから報告してもらったのが、≪叫星組≫というか、ザレナの資産没収の話。土地や家の所有はそのままで良いし、補償がちゃんとしてるのは良かった。
「急に金持ちになった気分ね!」
キマルはにっこにこしてるけど、ヒョウムは自分のエールをひと啜りして、咳払い。
「≪転移の座標石≫、メンテナンスというのを頼むにも、お金は要るんだよ」
「あ、うん。」
正規品なら一回あたり銀貨で二千くらい、って以前アタッカーが言ってたのを教える。
二人が持ってる≪石≫は、そもそも正規品なのかどうかも怪しい。だから鑑定してもらってからの修理やら何やら考えると、軽く三千、多く見て六千枚はお金が出ていくだろう。
そういう話をすると、キマルがしぼんでしまった。
「水車小屋とか作りたかった」
尻すぼみな言葉と、スン、と小さく鼻をすする音に、ヒョウムが身を乗り出して手を握る。
「まぁまあ。それは来年以降の稼ぎで何とかしよう。入るはずなかったお金が減ったって、困ることはなんもないし。フィー父さん言ってたろ、来年以降の払いは、相殺で無くなったんだって」
「うん……(ぐずっ)」
「だから来年からの稼ぎの方がさ、大事。俺たち二人とも、こうして元気に生きてる。畑だってこれから。そうだろ?」
「うん。」
水車小屋か。流石に職人を呼びつけて、原材料費だけって訳にはいかないだろうから、銀貨一万程度では建たないんじゃないかなあ。
とは思ったけど、キマルが可哀想だったんで言わずにおいた。代わりに、
「明日から、アタシは≪コリウォンの迷宮≫に行くよ。朝早めに入って、午後半ばくらいで出てくる感じ。キマル達はどうする?」
と誘ってみたのだけど。まだ詐欺師の面通ししてないし、≪迷宮の神≫信仰団にも行くってんで、二人の返事は保留となった。
「空白の時間てゆーか、もうひと月近く入ってないから」
「それもそっか。」
まー、アタシ自身、本気かっていうとそうでもない。今のメンバーと探索している『二層≪夜≫の未発見ダンジョン』は、絶対秘密な訳だし。
ジ…ギーチャンやルーキンに伝言出したか聞いてみると、まだって返事だったので。今度ご飯食べようよ、アタシが伝言出しておくって話をしておいた。
二人の部屋を出たあと。
「……むふ」
補償金が7000かぁー。
な・な・せ・ん!
いい響きに、ついつい、笑いがこみあげてしまうね!
手持ち、残り銀で5116(+19000)枚と銅3枚。
夕飯代、奢った飲み物代と伝言でちょっと減ってます。
キマルが色々と夢想しがちで、ヒョウムは現実に引っ張り戻す感じのカップルなのかも。
お読みいただきありがとうございました。




