表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残り銀貨500枚からの再スタート  作者: 切身魚/Kirimisakana
133/177

幕間その4:キマルとヒョウムの孤児院訪問

チーム『ゆるふわ』のあと、孤児院に行った新婚さんのお話です。


2023/03/01 タイトルが幕間「3」だったのを、「4」に訂正しました。

 まず、君たちへの補償。

 君たちの依頼で土地売買契約書を作成したジェスネ派書記に、契約無効の書類を依頼してある。それが筋というものだからな。土地家屋の所有は君たちに属し、小作人との契約も含めた内容は現行で不満がないなら、このままとしておく。また、来年以降の支払い義務は、今回の償いのために相殺し、免除とする。

 銀貨で2万5千6百枚、がザレナの個人資産として押収した額だ。

 この中から、まず半分が≪万神殿≫へと奉献される。このうち、7000がマーエへの賠償。残りが神殿の取り分となる。

 残り銀貨は1万2千8百枚。お好きに使いなさい。



 訪れた孤児院で、育て親たちの一人に誘われた先は、小礼拝室。そこでそう告げられて、キマルは喜び、ヒョウムは黙り込んだ。

 キマルの聞いた金額は、はっきり言えば大金が転がり込んできて、それは単純に喜ばしい。

 ヒョウムとしては、すでに聞いていた話に加え、大金までついて来るという事態を、胸騒ぎなしには受け入れられなかった。

 動揺を押し隠すヒョウムをよそに、キマルは思った疑問をすぐ口に出す。


「それはいーんだけど、フィー父さん。ザレナがやらかした件は相当良くないけど、けど、……何か≪神殿≫の動き、凄くない?」

「それはそうか。うむ」


 頷いたのは、育て親。フィー父さん、は愛称呼びで、本名はフィーブルテンという。

 彼は大きな手をしている。相応に太い指を組み合わせる形にすると、すこし身をかがめた。


「これはあまり大っぴらにせんで欲しいのだがね。」

「あっ、わたし言いません、ヒョウムも絶対言いません!」


 秘密を打ち明けてくれる気配を察して、キマルがすぐ宣言する。ヒョウムも隣で、首を振って『他言しない』意志表示。

 それを見届けて、フィーブルテンは小さく微笑んだ。


「マーエは大司教様を筆頭に、≪千匹の仔を孕みし黒山羊≫教会の力ある方々から気に入られていてね。早速明日にも、マーエの獲ってきたテルチワーン肉での昼食会が催されるはずだよ。」

「ほぇえー」


 キマルが嘆息する横で、レンジャーも詰めていた息をそっと開放する。


「……ダイア・キンケイを仕留めたとは聞いてました。珍味に事欠きませんね。」

「うむ。テルチワーン肉の裂き煮込みを用いたチャパティ包み、黒ガイナンのソースとナマンナッツのペーストを添えたメインディッシュなど、相当な美味だ。≪森の大鹿≫≪くらきもの≫といった、他宗の司祭、司教をお招きしておる。」


 ≪森の大鹿≫は言わずと知れた大宗派。

 ≪くらきもの≫も大きな組織。後ろ暗い連中から「規律と法律を押し付けてまわる」と陰口をたたかれる、それだけ都市警備隊よりもずっと、治安の維持をがんばってる宗派だ。

 そういうところの偉いさんが招かれて、マーエが獲ってきましたお肉です、という料理に舌鼓を打ってる。

 『美味いものをくれるヤツに悪いヤツぁ居ねえ』

 『飯の恩は死んでも忘れるな』

 獣人でもそうでなくても、胃袋に恩を売られたら、絶対返すのが筋というもの。獣種によっては、夫婦の誓いが「手ずから獲った食物を、相手に食べさせる、食べてもらう」ことが条件になってるひと達も居る。

 そういうもろもろを思い出したキマルは、


「そりゃあ色々、してあげたくもなるってもんだ。」


 納得したように頷いた。

 その横で、ヒョウムは


(もしかして孤児院出って、皆こういう繋がりとかお持ちなのでは……俺の伴侶までもしかして大司教の懐刀とかじゃないだろうな……?)

 

 とひそかに震えていたのだった。

大司教「さすが『お肉のひと』と呼ばれるだけはありますな。この肉の弾力……」

事務方主任「ぷりっぷりの脂身から、じゅわーって溢れるのがたまりませんね」

教区統括「はむっ!ハフハフ! この、2種類のソースで交互に!一口が終わるのが名残惜しい!」

事務方主任「あ、お代わりもあるそうですよ。ベレバ菜で巻いて、塩と黒ガイナンだけというのもこれはこれで!」

大司教「これはこれで……!くッ、もう満腹なのにまだ食べたくなる……」


全員「やはりマーエは特別ですね。我々のことを覚えてもらう必要はない。だが、これからもひっそり手助けをして参りましょう。それが一飯の恩というものです。」


みたいなやり取りがあったようですが、それは別のお話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ