前衛は体力おばけ
手持ち、残り銀で4890(+12000)枚と銅2枚。
この世界、印刷技術は木版がありますが、手作業の写しも共存してます。
チーム『ゆるふわ』に呼ばれたキマルとヒョウムにくっついて、アタシたちもお邪魔することになった。
出迎えてくれたのは、シバ…じゃなかった、シジラさん。新婚さん2人がビヌトゥアから降りるや否や、走り寄って。
「無事で良かった」
もうそれしか言えない。って感じで、キマルとヒョウムの肩に手を置いて、ぎゅうってハグしてた。
他の『ゆるふわ』メンバーにビヌトゥアと荷車、ほかの荷物を引き渡した後、会議室に案内されて。そこで今回の旅の経過や、屋敷での呪いの話とかを色々説明した。
シジラさんと、もう一人、書記官かなってくらい、ペン動かすのが速い女性(ナントカ派の魔術師ですって紹介された)が、アタシの話をサカサカサカーって書きとっていく。テイ=スロールと同じか、それ以上かな。
アタシの話が終わるのとほぼ同時に、「できました。」ってシジラさんに紙の束差し出して、って凄くない?
それをさっと読んで、シジラさんはテーブルに肘をつく。
「≪叫星組≫の悪さにはまったく底が無いな……。」
「うん、それは同感」
説明でも言ったけど、あの呪術師。詐欺にかけられてる自覚なかったな。
師匠の借金が弟子に及ぶとかちょっと考えられない話だし、証文の控えをもらえてないとかもあんまりだった。
係累がいたら何とか形見渡してやりたいけど、それは後でもいい。てか、あまり実現しなさそうだなとは、自分でも思ってる(お焚き上げになる公算のほうが大きい)。
≪万神殿≫経由で、詐欺師を面通しするのは明日以降だし。キマル達はお金を幾らかだして、書類を複写させてもらってた。写すのは少々手間だけど、自分たちで報告書を書き上げるよりははるかに楽だもんね。
孤児院に行く新婚さんと別れて、アタシ達4人はちょっと顔を見合わせた。
一人ぶんの分け前は、銀貨208枚と銅貨2枚で、すっごい儲けとはいいがたかった今回のお出かけ。
まだ午後の早い時間で。
「あのさ。この後まだ暇があるなら、行ってみない?」
どこ、って言わなくても皆に通じた。
「平和な旅で、体が鈍ってしまった気がします。」
ボリスが首を回してると、ウィザードが不思議そうな顔をする。
「疑問ですが。あれで鈍ったとは到底思えないですよ?」
「あ、アタシもそれは思った。」
帰途は特に街道ぞいだったから、戦闘なんてほぼ無くって。前衛二人は、体が鈍るからー、って休憩時に『軽く』運動してた。
アレは……全然軽くなかったと思う。
例えば、ひとりが大きく手足を広げて立ってるところに、もうひとりが腕や足を手掛かりに登ったり(つまり相手の全体重がかかる)。あとボリスは「瞬発力が大事」と言って、ヨアクルンヴァルを投げ上げてたり。投げ上げてる間に体勢入れ替えて、逆立ちした足底で受け止めたり(でもって足の力で投げ上げてたり)。
アタシも投げ上げてもらったけど、二階の屋根より上まで投げ飛ばされるのは、勇気を試される経験だった。何回もやるうち面白くなってきてから、空中で回転してみたり、体をひねってポーズつけてみたりもできるようになったけど。
キャンプ地でそれやった時は、休憩してた別のグループからやんやの喝采とおひねりをもらってしまった。
体が鈍ったかどうかは、ほんとはどうでも良くて。『コリウォンの迷宮』での勘が鈍ったかも、っていうのが理由だろうな。
二層『夜』とかに潜るのはナシで、一層『迷宮』だけ入ることになった。
手持ち、残り銀で5096(+12000)枚と銅2枚。
手に入れた分から銀貨2枚減ってるのは、伝言とかお茶代とかです。
お読みいただきありがとうございました。




