何でもそろうよドゥイドゥイ屋
手持ち、残り銀で466枚と銅0枚。
ダンジョンの便利屋的存在、ドゥイドゥイ言ってるから『ドゥイドゥイ屋』。ただし、ちょっとビジュアルが特殊です。
『ドゥイドゥ~イ、ドゥイドゥ~イ♪』
歌声が近づき、明かりの輪の中にやってくる。
ドゥイドゥイ屋は第一層でなら、よく会える便利屋だ。単純な節回しの『ドゥイドゥ~イ』という歌声で、迷宮のあちこちにやってくる。ただ、ちょーっっと……見た目が特殊っていうか風変りで。
今回やってきたドゥイドゥイ屋はと言うと。
荷物を満載した丸い台座に、真鍮の車輪を4つつけてある。バネと伸縮できる金属の管で方向を変えるようになっていて。荷物の間から、これも伸縮自在の金属管がのびてて、先は指のように分かれている。
荷物の山のまんなかは、お椀を伏せたような、さび色の合板でできた半球が載ってる。球の下側は、ぐるぐる回るようになってる。 車輪の回転と同じ速度で、ゆっくり回る合板。そこには、まぶたの色がちがう目玉が4つ、前後で口が2つ、均等に配置されてて。
口がそれぞれの音程で
『ドゥイドゥ~イ』
を歌うんだ。球の上側はまわらない。代わりに、コウモリみたいな毛の生えた耳が4つ、ネジ止めされてて、いろんな方向に向けてたまに動いてる。
便利なんだよ?
迷宮の外で買うよりちょっと割高で、だけど、明かり油とか、携帯食料や甘いもの、袋の予備とか『無いと困るけどいちいち迷宮をでてまで買うと、通行料で高くつく』ものがそろってる。出すもん出せば、一般むけの魔術品もあるらしい。アタシみたいな貧乏人には縁のない話。
そういう便利なお店、なんだけど。
ちょっと引くよね……。
アタシは最初みたときドン引きした。(正直、今もだけど)今はまだ買うものもないし、世間話でもしてお別れすればいいかな。
と思ってたら、4人の手練れの反応が凄かった。
ウォーリアが盾を揚げて大股に進みでる。低い声で、
「皆、動くんじゃないよ。話も無しだ」
「?」
残り3人もさっと表情を引き締めて、あと僧侶がアタシの袖を引っ張って、指を唇にあてる。アタシがえっ、となってるうちに、ウォーリアの大声が壁に反響した。
「止まりな! お前さんに用はない!」
『ドゥイ!?』
車輪が止まったのと同時に、ウォーリアがさらに前に出て、防護円のふちに、掲げていた盾をふりおろす。重い音がした。
「そのまま下がって立ち去りな!」
『?……ドゥイ、なんでもそろうよ?』
笑いの形になった口が、なだめるように言うのを。
遮る。
盾から見えるように、ウォーリアは斧をふりかぶる。
「去れ、と言ったんだよ!」
膝立ちになった格好のアタッカーも、両手を剣柄に置いていて。
ウィザードは、座ったままの格好だけど、杖はしっかり握りしめてる。無理やり表情を消しました、って感じのこわばった顔で。
アタシの袖をつまんだままの僧侶は、二人の殺気がなんでもないことみたいに周りをきょろきょろして……あ、アタシもちゃんと警戒はしてるよ?
通ってきた通路と、左側の通路。
右側の通路は。
『ドゥイドゥイ屋』がすごい速度で、そっちにバックしてった。
ウォーリアはオノを振り上げた姿勢のままだった。車輪の音が聞こえなくなるまで、そして、
「アンタ、『ドゥイドゥイ屋』から何を買った?」
質問と同時に、ぶん!と刃先がアタシに向いた。
手持ち、残り銀で466枚と銅0枚。
ウォーリア(ドワーフの年配女性なんですが、主人公には覚えられない情報なので割愛)にも事情がありましてな。
お読みいただきありがとうございました。




