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残り銀貨500枚からの再スタート  作者: 切身魚/Kirimisakana
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純粋に聞いてみたかったから

手持ち、残り銀で4890(+12000)枚と銅0枚。

帖(繁体字読み)したらそういうお名前の人が先祖にいたんです。

そのまま名前いただくのは畏れ多いので、ティエがテイになりました。

「別に訊いてほしくないとは言ってないです。」


 アタッカーはにっこりと──作ったような笑顔になった。


「言いふらすようなことでもないので、訊かれなければ言わない、その程度で。それにスロール家のように、名のある家ほど優秀な他種他族を入れてるものです。」

「聞いたことはあるけど、本当にあるんだ。」


 美談は滅多にないことだから、美談になるんだと思っていたんだけど。

 テイ=スロールが、自分の分のお茶を注ぎながら補足してくれる。


「説明します。スロールの家は、5代前当主の時代に≪豊饒の大地≫の魔術師を入れてから、特に豊かになった家です。その魔術師は、獣化しなかった。ヒト族だったといいます。」


 その人物が連れてきた同族も、家の発展に貢献して、分家の一つはほぼヒト族。それがテイ=スロールの家だという。当然≪豊饒の魔術師≫派とのつながりも増えて、そこで魔術師になる家の者が増えたんだそうな。


「告白しますと、僕の名前の『テイ』は、その魔術師からもらったものでして。畏れ多いことなので、そのままじゃないですけどね。」

「スゴイ人の名前もらったんだね?」

「はい。異界のひとだったそうです。名前もそうですが、このひとの何より凄い所は、失敗も成功も常に記録をつけ、比較するにも記録を基にせよ、という研究手法の確立です。今でこそ一般的ですが、当時どこの流派にも農書にもなかった技法ですし、形だけ真似ができたとしても、その真髄は……」

「ちょ、ちょちょ、早口っ、早口すぎるって!」


 ヨアクルンヴァルが止めてくれたけど、放っておいたらずっと話続けてそうだ。

 暖かくて安全な拠点のなかは静かで、お茶のいい香りがふんわりしてて、ちょっとくらい不躾な質問してもいいかなって感じがして。


「ヒト族は『シーズン』が来ないって本当?」

「本当本当。」


 黙らされたテイ=スロールの代わりに、ボリスが機嫌よく頷く。


「おかげで春ごろは依頼に困ることがないです。そうは言っても、ヒト族だって恋に落ちることはありますよ? 現に僕はメバルに出会っ」「はいはい、その話は長いからまた今度!」


 ヨアクルンヴァルが止めてくれたけど、放っておいたらこっちもずっと話続けてそうだった。

 ボリスは笑い顔の余韻みたいな顔で、肩をすくめてた。

 自分の分の麺麭粥を椀よそうと、ヨアクルンヴァルの隣に腰を下ろして。彼女にこそきかなきゃって思っていたことをぶつけてみた。


「ねえ、結婚するってどんな感じ?」

「ぶふっ!?」


 何かが口から飛び出してたのは、見なかったことにしてあげた。

 ヨアクルンヴァルは、誰か止めてくれ、的な助けを求めてボリスを見て、


「……。」


 ニヤニヤ笑顔に出会い。

 テイ=スロールを見たけど、


「……。」


 何でしょうかー、とすっとぼけた微笑みに出会った。

 メバルさんはというと、仲間相手に語れないことなどあるわけがないじゃん、みたいな純粋な目で見つめ返すだけだし。

 アタシのこともヨアクルンヴァルのことも、止めるひとは居ないってこと。


「あんまり語って聞かせるような話じゃあ、ないんだけどねぇ……」

「いいじゃん、アタシは知らない話だろ。聞かせてよ。」


 絶対笑ったりしないから。

 ね?

手持ち、残り銀で4890(+12000)枚と銅0枚。

唯一の既婚者(で離婚経験者)だもんね、聞いてみたいよね。


お読みいただきありがとうございました。

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