表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残り銀貨500枚からの再スタート  作者: 切身魚/Kirimisakana
112/178

白と黒のでっかいやつ

手持ち、残り銀で4890(+12000)枚と銅0枚。

戦闘に持ち込む前にできること。

ダーフーは『大幅』の中文読み、なんかでっかいヤツの意です。

 アタシは「何かに襲われた」と「防御」を叫んだ。

 立ち上がったとたん、左肩と首の間に一撃くらったけど。あそこで皆に「攻撃」を指示するには、あまりにも情報が無い。向こうには、遠くから攻撃できる手段が何かある。弓矢じゃないだろうけど、何かが。

 視界の端、雨のカーテンの向こうに、ぼやけた白黒の塊が見える。さっきより近い。

 前衛二人が進み出ると同時に、テイ=スロールが短い呪文を叫んだ。草や土くれをこぼしながら、土が壁のようにせりあがる。

 それより速く、また白黒の塊の『毛』がぶわっとして。

 ヨアクルンヴァルが大盾をかざして割り込んだ。パッ・ガッ! って感じの鋭い音。

 直後、せり上がり切った壁のこっち側に、切り落とした『毛』が落ちる。盾で弾ききれなかった『毛』を、アタッカーが切り落としてた。

 テイ=スロールが立ち上がって、前衛二人がアタシを挟むようにして荷車まで一緒に後退した。

 倒れてるビヌトゥアが、壁のすぐ前で苦しそうに胴をよじってる。怪我してる足が上手く動かないみたいだ。そういや、と手を触れると。


「あ、感覚が無い。」

「麻痺か、まったく無か?」


 荷台から降りてきた僧侶がやってくる。


「全く無し、てか、体がここだけ欠けた感じ。」

「無の方だな。強い麻痺だ。」


 普通の薬だと遅い、と言って治療呪文を使おうとする僧侶を、アタシは手を挙げて止めた。麻痺が広がる様子はないし。前衛二人が油断なく見張ってるほう、土壁の端と端にはまだ動きが見えなくて。その動きを見るのは、アタシの役だ。まだ動けるし、目や耳や鼻だって効くんだから、アタシが動くべきなんだよ。

 気配を消すのは当然して、さらに雨でびっしょり濡れてるけどフードもすっぽり被ると、アタシは地面に伏せた。伏せたまま移動で、前衛の間を通り、土壁の右端にくっつく。

 手鏡に息を吹きかけてからぬぐって、土壁の端から手鏡だけを出す。

 ここまでの間、だいたい10数えるくらい。『毛』は飛んでこない。


 雨の向こうで、白黒のぼんやりしたやつが見える。大きさは、ビヌトゥアの胴体と同じくらいだ。麺麭パンみたいな形(寸詰まりの芋虫っぽいとか思ってしまった)で、両端が黒く、こっち向いた端にはもう二か所、角だか耳だか、三角形に黒い部分がある。で、全体的に黒っぽい長い『毛』が生えてて、それが動いてるせいで、輪郭がぼんやりに見えるんだ。

 体は地面にくっついてないな、ちょっと浮いてる。何本かの『毛』が、足みたいに何対も地面に刺さって、胴体を持ち上げてるのか。あれって、見た覚えもあるんだけど、知ってるヤツよりずっと小さいんだよな。あんな『毛』は生えてないし。

 観察はこれで十分。

 考え付いたことがあるから、今のうちに試してみよう。


 小さな動きで、アタシは紐を外すと、『それ』をできるだけ速く遠くに放り投げた。

 ほぼ同時、ってもアタシよりは遅い動きで、白黒のヤツが反応する。背中側の『毛』がばっと広がり、バズバスッ!と革袋を貫く音がした。


 予想はしてたけど、予想どおり、だったな。

 アイツ、暖かいものにだけ反応してる。

 さっき投げたのは、朝がた僧侶にもらった、温石がわりの暖かい水袋。

 アイツはビヌトゥアの足の下側(毛が薄くて体温が分かり易いはず)とか、むきだしだったアタシの顔(とっさに避けて肩に当たったけど)とかを狙った。そして、分厚い土壁で遮られたら、その向こうにいるアタシや仲間のことは、まるで見えてないみたいになってる。

 顔を伏せたままざりざりと後退して、この話を仲間に伝えると。ヨアクルンヴァルが首を傾げた。


「そいつぁ、沼とかにいるダーフーじゃないかい?」


 テイ=スロールも頷く。


「同意します。あの幻獣も、白と黒です。毛が生えている、攻撃に使用しているの2点は異なりますが。」

「いや、アタシの覚えてるダーフーはもっと、島か岩かってくらいデカいし、動かないよ?」


 ダーフーは水の多い、湖ってほど深くはない、ほぼ浅い水の沼地で、デンチャ芋とか掘ってるとでくわすヤツだ。全体的に白で、頭と尻、あと頭の脇に2箇所黒い部分がある。そこは似てるけど、大きさは違う。小さくても荷車を2台つなげたくらい、大きいとちょっとした島みたいで、ひとがウッカリ踏んでも動かない。水の中に頭を突っ込んでひたすら、その下の水草や生き物を食べてて、食べ物が少なくなると、のろのろ這って動くくらい。

 あんな毛は生えてない。

 攻撃とかしてこない。


 今のところ、土壁が遮ってるから、アタシ達は無事。僧侶はビヌトゥアに治療呪文を使い終えたところだったので。

 手早く皆で作戦を練った。

手持ち、残り銀で4890(+12000)枚と銅0枚。

謎のなにかと、次回は戦闘です。


お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ