翌日会議は商売の仕込み
手持ち、残り銀で5109(+12000)枚と銅0枚。
大きい街道を外れた土地に、冒険者が行くってことは商機です。
翌日、アタシはスロール商会の会議室にいた。
昨夜のご飯で打ち合わせしていて、問題が発覚したのだ。
何気なく、
「アタシ、日持ちのする甘味を買っておいたんだよ。」
と告げたらば。
「実は……」
「僕もですよ。」
「え、なんで二人とも?」
「ありゃまあ!」
という返事がほば同時にありましたとさ。
旅に出て、最初の休憩で、全員が全員、同じようなお菓子を取り出す前に分かったから、良いっちゃあ良いことなんだろうけど。
買っちゃったものは仕方ない。
それにこの話から、何かしら『交易品』も買いこんでないだろうな? とお互い確認しあうことになった。アタシはお菓子の大量買い込みとかはしてない。
けど、不思議でもある。
「交易品とかって、アタシたちに何か売れるものあるのかな?」
「そりゃあアンタ、色々あるさね。」
「色々。」
売れそうなものって言ったって、日持ちのする食べ物とか、街で買えるものでしょ。別にク=タイスまで来なくても、巡回する商人とか居るだろうし、売り買いで利がでるようなものがあるかなぁ。
そしたら、僧侶さんが鞄の中から、蝋で封した油引き紙の袋を取り出して、振って見せる。ザラザラと、軽くて小さなものが動く音を立てる袋を、メバルさんは、
「ショコア豆の、生の豆。東部で採れたもの。」
と言う。
これを売ってお金になるのかな。
疑問が顔にでてたのを、ヨアクルンヴァルに見つかってしまった。
「だから、本当に売れるんだよっ。特に今回は、街道を外れて、小さい領地の間を通っていくルートだからね。余裕のある巡回商はなかなか来ないもんだよ。ちょっとしたぜいたく品を売りつけるような、余裕のある商人は、ね。」
「ショコア豆は、街から遠いところ、なかなか届かない。西のほうはすごく高くなる。」
メバルさんも、にっこりと袋を持ち上げる。たしかに、ブランド名が付くようなおいしーショコア豆は、暖かい大陸東部の産か、『迷宮』からので。
街の外、今回行くような西のほうなら、量はちょっとでも、値段は高くなる。メバルさんはそう考えてるのか。
「そういう事なら、アタシ達はもう少し荷物に余裕を持つべきかなぁ?」
テイ=スロールが「それは良い提案だと思います。」と乗り気になって、今日の会議になったのだった。
議題は、スロール商会で使っている『なんでもたくさん入る袋』の貸出について。
この魔術的物品は、サイズが大・中・小とあって、テイ=スロールが持ってるのは中サイズ。「生き物は入れられない」とかの制約はあるけど、ダイア・キンケイが3体近く入ると思えばすごい容量だ。手を突っ込むと、中で手が伸びて、思った物品に手が届く。そして出し入れが終わるまで、重量はない。(逆に、重たいものは中に入れ終わるまでが大変なのだ。)
「貸出そのものは、安値で提供します。ですが、破損や紛失すれば高額……小サイズで銀7千、中サイズで1万5千、大だと3万は賠償金を取られます。」
「うーん……」
ボリスさんが、悩みすぎて人相悪くなってる。(もともと目つきが鋭いところに、眉間に皺が寄って怖い)
まーでも、分かるよ。小サイズですら7千は、高い。
誰がどれだけ物を買って持っていくか?
それはどのサイズに入るか?
あーだこーだと話すだけじゃなく、テイ=スロールから繊維紙を借りて図にしてみて、あと重さも数字にして計算してもらって……。って、この時点で部屋とかも色々借りまくりだな。計算はアタシも手伝ったけど。
結局、小サイズを2つ借り、借り賃は全員で出し。万一のことがあったら賠償金も折半しようってことになった。テイ=スロールが証文作るのも担当してくれて、借り賃の半分だけ前払いに、残りは帰り着いてから、という。
冒険者組合より安い借り賃が、さらに借り手に優しい貸し出し内容になった。
あとは、交易用のお買い物だ!
手持ち、残り銀で4990(+12000)枚と銅0枚。
借り賃の割り振り分を支払いました。
お読みいただきありがとうございました。




