第二章 死神 ━der Tod━━ (挿絵&ちびキャラ)
これからは毎週水曜日投稿にします。
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《北極部》
その地はこの世界屈指の豪雪地帯と知られる地。
そしてこの山、氷龍山はそこでも特別の霊山であった。
降り積もる雪は永久に溶けず、
寒さに特化した魔物や妖物が闊歩する。
ギルドの『竜殺し』さえ幾人も行方不明になっている謎の多い地だ。
ギルドのハンターには位があり、
下から『小鬼狩り』、『大鬼狩り』、『混獣狩り』『巨人狩り』、
そして最上位は『竜殺し』、『吸血貴族狩り』の二つである。
よって『竜殺し』が行方不明になったと言えば尋常ではない。
怪しい噂も多く、
この世界を守護する七龍の一角がいる、
かつてドワーフ達の国があったが実験の失敗によって滅びた、
亜空間への入り口がある…etc
といった物がある。
そしてその魔境の中を、
馬車は昼の町中を行くかの様に進んでいた。
魔物や妖物達はそれでも襲い掛から無かった。
否、襲い掛かれ無かった。
馬車中の気配に恐れをなしたのだろう。
馬車は進んで行った。
-2-
「…ああ、それにアダムとイヴの拘束が甘くなっているからな。包帯巻き直すまで使用は出来るだけ控えておけ。」
「はい。」
話しながら二人は麓の町の大通りを歩いていた。
先程まで湯たんぽをしていたカンダタは少女の頭上に定位置を決めていた。
結構気に入っている様だ。
この町はこの様な所にあるが故警備は厳重だ。
人間に化けた妖物を侵入させない為、
町に入る審査だけで半日待たされる事もある。
最上位のハンターや国王程で無ければそれは免れない。
民間の『吸血貴族狩り』の拠点もここにあり、
門番には「吸血貴族狩り』、『竜殺し』が常に一人ずつはいる。
警備は完璧だ。
「この辺りは氷の下に住む魚を刺身にして食うんだってよ、嬢ちゃん。
今日の晩飯はそれで行くか。」
頭上からカンダタが話し掛ける。
「じゅるり」
「ん? 何か聞こえたぞ。【じゅるり】ってやったのお前か?」
カンダタが問う。
「いいえ、何も言ってません」
「シスターたる者一切の欲望を断たねえと駄目なんじゃねえのか? 」
「いいえ、何も言ってません。そしてテンプル騎士団第13支部ではその様な教えはありません」
「…そうか。」
(…これ以上は聞くまい)
カンダタは大人であった。
少女は道を曲がると、
道の遠くに見える学校の様な建物へと歩いて行った。