復活
「世界の民が祈ります。平和世界トロイツを救い給いし勇者ザイザルの魂をこの地に刻みます……」
誰かが私のことを弔っているようだった。私は銃弾に倒れて死んだ……はずだったのに、どうして人の声が聞こえるのだろうか?
「ザイザル様ザイザル様ザイザル様ザイザル様ザイザル様ザイザル様ザイザル様ザイザル様ザイザル様ザイザル様ザイザル様…………」
それに懐かしいこの声は……紛れもなくファンコニーだった。ひょっとして、口を動かせば話をすることができるのか?目を開ければ、ファンコニーを見ることができるのか?肢体を動かせば、起き上がることができるのか?
私は最初に目を開けてみた。すると、前と同じく、希望を失い、必死に私の名前を連呼しているファンコニーの姿を見つけた。
「ファ……ファンコニー……」
次に口を動かしてみた。病人のようにゆっくりしか喋れないと思ったが、案外平気だった。
「ザイザル様…………ザイザル様?ザイザル様!」
ファンコニーは、私が目を覚ましたのに気付くと、思いっきり抱き着いてきた。
「ザイザル様……やっと目を醒まされたのですね?心配しましたよ……もう二度とザイザル様と一緒にいられないと思うと、ザイザル様が本当に死んでしまうと思ったら、私……」
ファンコニーは身体をふるふると震わせて、今にも泣きだしそうだった。
「ファンコニー……事態がよく理解できないのですが、とりあえずごめんなさい。私が君を会場に連れて行ったせいで、君は銃弾の嵐を浴びることになりました」
「そんな……ザイザル様は何も悪くありません!悪いのは全てこの私なのですから……」
「一体、何があったというのですか?」
ファンコニーの抱えている問題を、私は知りたいと思った。キャシーや義勇兵たちが、ファンコニーを目の敵にした理由を知りたいと思った。
「分かりました。もう少ししたら、全てお教えします。ですから、ザイザル様。一度、この場を離れませんか?」
「ここは一体どこなのですか?」
「ザイザル様を葬るために用意されたお墓です。私が案内します。一度地上に出ましょう」
「しかし、上には私を追悼する人々がいますでしょう?」
「ご心配なく。別の道を掘削致しました。私の生家にたどり着く道を用意しました。こちらは人目につくことがなく、安全です」
ファンコニーの行動力は群を抜いていると思った。こんな短時間で、どこにあるのかは知らないが、実家まで地下通路を作るだなんて……って、ちょっと待った!
そもそも、どうして私は生き返っているんだ?