勇者の死
「ザイザル様。申し訳ございません。しかしながら、私どもが導いた最善の結論でございます……」
今度は、キャシーの言葉が全く耳に響いてこなかった。どうして、ファンコニーは撃たれなければならなかったんだ?丸腰の少女を銃撃するだなんて、これはまるでテロじゃないか?彼らは突発的なテロリストなのか?その頭はキャシーなのか?あるいは、国王?
「平和世界トロイツの治安を乱す反乱分子……それがこの女、ファンコニーの正体なのです……」
反乱分子……この少女が反乱分子?確かに、狂気的ではあると思った。一つのこと、例えば私に固執しているとは思った。でも、だからと言って、それ以上のことはないだろう?ファンコニーは一体何者なんだ……?
「ザイザル様!お手を触れてはなりません!」
私は無意識に、ファンコニーの亡骸を愛でていた。どうして?私のことをここまで愛してくれるのが嬉しかったのか?
「ザイザル様……ザイザル様!」
ファンコニーの声が微かに聞こえた気がした。
「ああっ、ザイザル様が!」
キャシーは何かを嘆いていた。私がどうかしたというのか?それよりも、この惨劇の始末はどうするのだろうか?私はキャシーに尋ねようと立ち上がった。
「おい、キャシー!何をしているんだ!」
メコンがキャシーを制止するように叫んでいた。
「申し訳ございません!これはもう、取り返しのつかない事態なのです!」
キャシーは義勇兵たちに命じて、私に銃の照準を合わせた。
「どうしてザイザルを狙うんだ!」
メコンは必死にキャシーにしがみ付こうとしたが、ハーレムは一時的に無効となった。
「反乱分子の亡骸に触れた者は……その精神を蝕まれて、悪魔へと変貌するのです。ですから、ザイザル様はもう人ではなく、悪魔なのです!世界の平和のために戦った勇者様!あなたの安らかなる魂の旅をここにお約束いたします!どうか……お赦し下さい!」
「ザイザル!!!!!」
メコンの叫びと銃弾の発砲音が、私の最後の記憶になった。私は天を向いて倒れた。胸元から溢れてくる血を拭いながら、少しずつ意識が遠のいていった……。せっかく勇者になったというのに、私の英雄物語は呆気ない形で終わってしまった。