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事件

 パーティーの終焉を告げるアナウンスが宮殿に響き渡った。ザイザルはファンコニーに戻ることを伝えた。


「ザイザル様、私はあなた様から離れたくありませんわ」


 ファンコニーはザイザルの右腕にしっかりと抱き着いた。


「しかし、一度会場に戻らなくてはなりませんから……」


 ファンコニーはなおも離れようとしなかった。


「私は絶対にザイザル様の元を離れません!ザイザル様?私が横にいてはいやですか?」


「いいえ、そういうことではなくて、招かれざる人と一緒に戻ったら、怪しまれると言っているのです!一度顔を出したら、またここに戻ってきますから……」


 ザイザルがこう言うと、ファンコニーの瞳が再び暗くなり始めた。


「そう言って、私から離れるおつもりなのでしょう?ザイザル様も、他の勇者様たちと同じように、もっと身分の高い令嬢様とお付き合いしたいとお思いなのでしょう?私よりもスマートで、体つきもよくて、そして、将来有望な令嬢様を伴侶にしたいとお思いなのでしょう?ザイザル様?私のことを捨てるおつもりなのでしょう?それはできませんわ。どうしてかって?私はあなた様に一目ぼれしてしまったのですから!ですから、どんな理由があろうと、私はあなた様のことを離しません。どうしても離れたいというのなら…………魔王を切り刻んだ時のように、私を殺してくださいませ!」


「お待ちください。どうして、私があなたを殺さなくてはならないのですか?」


「あなた様に捨てられてしまったら、私は生きる意味がないからです。たった一つの宝物を守れない世界に生きる意味などありましょうか?あなた様は、その宝物を守るために命を懸けられました。ですから、私もあなた様と一緒なのです。あなた様への愛を、命懸けで守りたいのです!ですが、それが叶わないというのならば、この場で私を殺してくださいませ!お願い致します!」


 ファンコニーが必死に訴えていることを、私は中々理解できなかった。しかしながら、ここまで私のことを愛してくれる女性なんて、未だかつていなかった。だから、少しだけ嬉しいと感じたのは事実である。しかしながら、この場で私の伴侶だと決めることはできなかった。


「とりあえず、パーティー会場に行きますか?」


 ファンコニーは再び笑顔に戻った。あまり気が進まなかったが、これ以上仕方がなかった。


 私が会場に戻ると、既に楽園気分を満喫しているメコンと、取り巻きの令嬢たちが総立ちで、


「お帰りなさい!」


 と言って迎え入れられた。


「ザイザル……君の腕にしがみ付いている女の子は一体誰だい?」


 メコンは、ファンコニーを指差して言った。


「さっき、道でばったり会ってね。迷子みたいだ……」


 私は取り繕うとしたが、メコンの目をすり抜けることはできなかった。何よりも、令嬢たちがざわつき始めた。


「勇者様のお隣の女性はひょっとして……ファンコニーさんじゃないかしら?」


「うそっ?彼女は破門されたんじゃないの?」


 メコンの近くでニコニコしていたキャシーも、ファンコニーの姿を見かけると、急に怒り出して、近くにいた侍従を呼びつけた。


「あの女にも招待状を送ったの?」


 侍従は、取り急ぎ調査いたします、と言って、国王の元へ急いだ。


「ザイザル……君は女に興味が無いそぶりをしていたが、実際は違うみたいだな……」


「いや……そんなんじゃないんだ……」


「またまた!顔、赤いぞ!」


「これは……不可抗力だ……」


 私とメコンが適当に会話している間、会場は妙にざわついていた。ひょっとすると、ファンコニーは招かれざる客だったのだろうか?私が余計なことをしたのだろうか?


 そうこうしているうちに、怒り狂ったキャシーと、その後ろには銃を構えた義勇兵たちが列を組んでやって来た。


「一体、どうしたんですか!」


 私は叫んだ。しかしながら、キャシーの耳には私の声など届いていないようだった。


「ザイザル様!この一件について、これ以上ことを荒立てるつもりはございません!ですから、私がこれから申し上げることをご理解頂きたく思います!今すぐ、その女から離れてください!さもなければ、その女をこの場で射殺致します!」


「それはどういうことですか!」


 もう一度叫んだが、キャシーは私の質問に直接答えなかった。


「その女から、今すぐ離れてください!さもなくば、女を射殺します!」


 義勇兵たちは、本当にファンコニーの頭に照準を合わせたようだった。このままでは本当にファンコニーが殺されると思った。だから……。


「ファンコニー……済まない!」


 私はとっさにファンコニーを突き放した。


「えっ……?ザイザル様?」


 次の瞬間、キャシーの撃てと言う声が響くと同時に、銃弾の嵐がファンコニーを襲った。

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