表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

勇者の誕生

 結論から言うと、私たちは魔王の討伐に成功した。しかも、誰一人も犠牲者を出さなかった。私たちの能力は、魔王を前にしたら酷いものだったが、何よりも、天から授かった剣の威力がすさまじかった。


「神様のご加護により討伐します!」


 こんな感じで適当に叫んだら、黒ずんでいた空が一瞬光を取り戻し、切先に全ての光を吸収した。少しの力で振りかざすと、吸収したエネルギーで魔王を真っ二つに切り裂いた。魔王は見苦しいうめき声を発しながら、空高くに消えていった。そして、再びよく晴れた青空が、この世界に戻ってきた。


 討伐を終えた私たちは、その望みが叶うこととなった。戦いを見届けた世界の民が、私たちのことを称賛した。そして、今は世界の中心であるトロイツ宮殿のバルコニーに立っている。戦いを讃える臨時大会に、数十万の民が集結した。式典が始まって間もなく一時間だというのに、聴衆の拍手喝采が止まらなかった。


「それでは、この平和世界トロイツを代表して、トロイツ国王より、五人の勇敢なる戦士に、最高位自由勲章と勇者の称号を贈呈致します!」


 司会者がこう発言すると、聴衆はより一層盛り上がった。トロイツ国王が私たちの元に歩み寄り、本来ではありえないことであるが、深々と頭を下げ、祝いの言葉を語り始めた。


「これほどまでに勇敢な若者を、私は未だかつて見たことがありません。この平和世界トロイツを代表して、最高位自由勲章と勇者の称号を贈呈したいと思います!」


 最高位の勲章と勇者の称号を同時に授与されたことにより、私たち五人は聖者になった。聖者は、平和世界を統治する神様の元に成り立つ公会のメンバーであり、国王と同等の地位であることを示した。また、自らの望みを全て叶えることができた。すると、メコンはいきなり国王に、


「私は恋と言う物をしてみたいのです!」


 と言い出した。


「メコン……」


 いくらなんでも話が急すぎると、私は思った。しかしながら、国王は、


「承知しました」


 と言って、侍従に今夜国王主催のパーティーを開くことを伝えた。また、全ての貴族の令嬢を集めるように命令した。


「今夜、あなた様の恋人が見つかることを、老婆心ながら祈っておりますぞ」


 国王はそう言って、宮殿の中へ帰っていった。


「おい、メコン……」


「いいじゃないか。望みは何でも叶えてくれるんだろう?私たちの功績を考えれば、こんなの安い話じゃないか?なっ、ザイザルもどうだ?」


「私は……まだそういうのが分からないから、保留しておくよ」


「そうか?まあ、いいや!今夜は愉しもうな!」


 あの頃のやんちゃなメコンが戻ってきた、私はそう感じた。別に私たちがすごかったわけではない。ひとえに神様のご加護によるものだった。しかしながら、確かに少しくらいは羽を伸ばしてもいいのかな、と思った。


 恋人……それは本当に分からない。私は……アルビノーニのような勇者になることが目標だった。それが、思わぬ形で叶ってしまった。だから、これ以上望むことなんてなかった。


「とりあえず、食事でも頂くとしようじゃないか!ああっ、そこの侍従の方、五人分用意してくださいますか?」


「はいっ、畏まりました!」


 侍従たちは、すぐさま私たちを宮殿の広場に案内した。そこで、今まで口にしたことのない豪勢な昼食を御馳走になった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ