決意
あの日のことを覚えている。
『ふざけないで!!私が、四代目を継ぐ!四代目は、この私です!』
お嬢は、生まれて始めてと言うぐらいの大声で叫んだ。
覚えてる。
その日は、綺麗な満月だったということを…。
話す相手に必ず笑顔で話すお嬢。
そのお嬢が最近、元気がない。
いや、笑顔が見られないと言ったほうがいいのかもしれない。
俺の部下と話していても、三代目と話しても、恋人である川原さんと話していても、お嬢に笑顔が見られない。
笑顔がとても素敵な方なだけに、笑顔が見られないのは右腕としてとても辛い。
「お嬢?」
「……え?ヒ、ヒロ?」
今もそうだ。
俺が話しかけても、お嬢は笑顔を見せてくれない。
前のお嬢は笑顔を見せてくれたのに…。
――― 笑顔をみたい。
そう思うのは、いけないことだろうか?
「大丈夫ですか? 顔色が悪いですけど…」
「…?大丈夫…だよ?」
「本当ですか?」
「本当だよ。ヒロってば、心配し過ぎ」
ニコッと、笑顔を見せてくれたお嬢。
その笑顔は、俺が見たいと願った笑顔と少し違っていて…悲しくなる。
「ヒロ?」
「俺のせい…ですよね…?」
お嬢から笑顔が見られなくなった理由、それは俺のせいだ。
俺が…。
「俺が自分勝手な行動をしたせいで、三代目が撃たれて…!お嬢が…、」
「…ヒロ」
「お嬢、幼稚園の先生になりたがっていたのに…俺のせいで…!!」
「ヒロ…」
「俺のせいで!お嬢が、組を継がないといけなくなったんだ!」
「ヒロ!!」
お嬢に大声で名前を呼ばれて、お嬢を見つめれば静かに言った。
「いいよ…気にしないで、こうなる運命だったんだから…」
さぁ、この話はおしまいにしてお菓子食べよう。
とお嬢はリビングへと向かった。
「お嬢…」
俺は、リビングへ行ったお嬢の後をついて行けなかった。