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反抗期

作者: Kate

大都会の喧騒。ざわざわと中身のない会話だけが鳴り響く。よくもまあこんなにも大人数がくだらない会話を同時にできるよ。なんの為に生きているかを考えろだなんて高尚なことは言わない。でももう少し価値のある人生を送ろうよ。

かく言う私も意味のある、価値に溢れた人生を送ってきた自信なんてないんだよね。だから付加価値ってものをこれからつけていこうと思うの。みんなと同じように流れに乗って、誰にも逆らわずに顔色だけに目を向けて、その他大勢になることを目標にやってきたの。でも17年目にして気づいたんだ。なんのために生きているんだろうって。

だからわたしは今日変わる。自分のために自分の人生の時間を使ってやるんだ。







ぽっかりと穴が空いた。

わらわらと集まるゴミのような群衆の中にひとつ、大きな穴が空いている。ゴミ共は好奇の目で、穴の中心にいる女子高生を見ている。スマホを向けるゴミ、目を覆い見ようとしないゴミ、ゴミ予備軍に見ちゃダメと声を荒らげるゴミ、ゴミ共がみんな中心を見ている。異様な光景。


穴の中心で女子高生は死んでいた。

白くて細いからだを真っ赤に染めあげ、喉元にナイフを突き立てている。苦しみ、痛みの表情の中に少しだけ笑顔が見えるのは気の所為だろうか。

何にせよ彼女はとても美しく、芸術的な姿でスクランブル交差点の中央に大きな穴を作った。うごうごとざわめくゴミたちがつくる真っ黒な大きな影のど真ん中に真っ赤な穴を1人で開けたのだ。まるで満開の花のような鮮やかなコントラスト。その中心には恍惚の表情で自分を殺した少女。


彼女の制服のポケットから1枚の紙が見えている。






先立つ不幸をお許しください。


なんて事は絶対に言わないよ。私は自分の人生の最高の終わり方をみつけて実践しただけだし誰にも迷惑はかけてない。死にたいわけじゃないんだよ。学校でなにか辛いことがあったとか、失恋とか友達に裏切られた。とかそんなことはまったくないから余計な詮索は絶対しないでね。

ただ、私はこの世界がおかしいと思うの。なんで自分の人生なのに他人からの評価を気にして、言葉を選んだりビクビク怯えなきゃならないの?そんなのおかしいよ。システムもそれに慣れているみんなも。

だからね、私はこのままじゃいけないと思った。私は自分の意思を持ちたいし、他人に邪魔なんてされたくない。そこだけは絶対に譲れないんだよ。でもこのまま生きてたらどうせみんな私を洗脳するんでしょ?髪を黒くしなさいだの、まわりと合わせなさいだの、なんだの。って。しまいには、常識的な高校生らしい格好をしなさい。だってさ。


あなたの常識が私の常識なわけないでしょ!!!


そう。みんな自分をしっかり持ってね。私はもういないけど、最後まで自分らしく目立つように死んだよ。首に刺すの結構怖いんだよ。やったことないけどね。わかんないけどね。

はいじゃあこんなところで私の遺書は終了です。

すこしでもわたしのしでみんなの気持ちや世界の在り方が変わってくれたらいいな。

バイバイ


女子高生より。








遺書を読み終えたニュースキャスターがコメンテーターに問う。

「こちらの遺書の内容を聞いてどう思われましたか?」

心理学者が言う。

「そうですね。これは思春期によくある考え方のひとつで、全てを否定したくなったり、自分の正当性を過信したりする人が多いんですよ。」

社会派気取りの芸人が言う。

「革命家にでもなったつもりですかね笑。くだらない戯言を言うのは構わないんですけど、あんなおおきなどうろのまんなかでやるのはやめて欲しかったですね笑。ぼくもあの日そのせいで仕事に遅刻してしまいましたよ。」

ゲスト出演している女子高生の母親が言う。

「皆様に多大なるご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。教育の仕方が間違っていたようです。すいませんでした。」




彼女が命をかけてでも成し遂げようとした事の結果がこれだ。自分の人生を見つめ、腐った世の中を変えようと日本のど真ん中での悲痛の叫びは何も変えれなかった。

ゴミに知ったような口で批判され、母親にも嫌がられ、ただ一時だけ世間を騒がしただけだった。



ただ1人、僕という1人だけが彼女の味方だということを伝えようと思う。


僕はナイフを持ってスクランブル交差点に向かった。








女子高生の死後、スクランブル交差点での自殺が8件起きて1ヶ月間世間を賑わせた。


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