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俺が好きなのどっちなの!? 『生ワキ』それとも『あの娘』だけ!?  作者: カプサイシン
3章 男を突き動かす原動力。それはロマンとエクスタシー
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男の下心《ピュア・ハート》

純心=下心=ピュアハート!!


Q.E.D!!(なにが?)

 俺に前を向かせたその熱、その感情は、理屈じゃない。

 男として当然もつ性的嗜好を倒錯的に満たしたいという、圧倒的な『下心(ピュア・ハート)』だった。


「なっ……!?」


 覇太郎は絶句し数瞬間を開けるがたちまち頭のキレを取り戻す。


「いやそれ絶対純心(ピュア・ハート)じゃないよ!! ただの超個人的な性欲だよ!!」


 これまたキレの良いツッコミをかまして純心を否定してくるが、つまりコイツは勘違いをしている。


「何言ってるんだ当たり前だろう? 『純粋な下心』を略して『純心』だぞ?」

「おぅっふぅ…………」


 そう、俺にとっての純粋さとは自分に嘘を吐かないということ。それはもちろん自分の欲に対しても誠実であるということだ。だから、性欲にだって俺は真摯に向き合う。

 さて、本題に戻ろう。


「ところで覇太郎よ。お前の言う3つの欠点だが……それは全て防げるもの、あるいはそもそも欠点などではなく、メリットとも言えるものたちだ!!」


 まさか、欠点そのものを否定されるとは思わなかったのだろう。


「なん……だと……!!」


 覇太郎が驚愕の眼差しを向ける。


「1つ目で挙げた欠点だが、俺も元々ニーナちゃんに直にワキで米を握ってもらうつもりはない。つまり、ラップを間に挟んで握ってもらう」

「……確かに、そうすれば米自体に垢や汗が付着することはない。しかし、だ。ラップに挟んだところで形は不格好になるし、熱を防げるわけでもないから結局冷や飯でしかおにぎりが握れないぞ?」


「ふん、焦るな覇太郎よ。その2点目の問題は、そもそも問題ですらないんだからな」


 俺は、余裕を持った態度で覇太郎の指摘を一蹴する。


「なっ!? いったい、どういうことなんだ……?」


 予想外の反応に、狼狽(うろた)えるのは覇太郎の番だった。


「なぁ、覇太郎。おにぎりだけ食いたいなら家で握ればいいよな? 冷たくてもいいならコンビニおにぎりでもいいだろう。つまりおにぎりはどこでも手に入るが、わざわざ消費者があえてワキおにぎりを買いにくる理由とはなんだ?」

「そ、それはもちろん……美少女がワキで握ったものを食べたいからだろう……」


 そうして考え込んだ覇太郎だったが。


「ーーッ!! お前、まさか!!」


 さすが、気付いたようだな。

 俺はニヒルに見えるように片方の口角だけ上げて笑い返す。


「そうだ!! 形に関しては、ワキで握ったんだから不格好で当然! むしろワキで握った感があって良い! という方針でいく。さらには冷や飯で作るからこそ、出来上がったおにぎりに微かに残った美少女の体温が感じられやすいだろう? むしろその方がよっぽど興奮するに違いない」

「欠点をあえて()()にするというのか!!」


「欠点とは、ワキおにぎりをある一方からしか見ないから生まれたものであり、男の純心(ピュア・ハート)を満たしたいという方向から見ればこれはメリットでしかない」

「し、しかし結局はそれもワキ好きな特殊性癖を持つ男の純心(ピュア・ハート)を満たしたいという一方向からしかワキおにぎりを見ていないじゃないか!!」


 チッチッチ、と俺は人差し指を左右に揺らす。

 そして、自分の主張の土台が崩れかかり危うい覇太郎の心へ、畳みかけるように言葉を紡ぐ。


「そこで3点目にお前が挙げた欠点だ。覇太郎はワキおにぎりは男の中にあってもニーズが狭いと言ったな?」

「……ああ。その通りだ。全ての男がそんな特殊性癖をもっているわけではないからな」


 瞬間、俺は立ち上がり、




「そこだぁッ!!」




 と覇太郎を指差した。


「!! な、何なんだ! びっくりさせるなよ!」


 しかし、そんなクレームには構わずに俺は言葉を続ける。


「その特殊性癖だのなんだという分類方法からしてお前は盛大にはき違えているんだ!」


「な……だって、ワキだぞ? おっぱいやお尻とは違うんだぞ?」


 キョトン、とした表情で覇太郎が固定観念にまみれた自身の常識を元に疑問を投げかける。


 コイツは……まったく。女に困らないイケメンの唯一の欠点というところかもな。

 まったくもって、男の(サガ)というものをわっかちゃいねぇ。


「いいか? よく聞け。男はなぁ、男なんてのはなぁ。……胸だ尻だじゃないんだ! 女の子の体そのものが大好きなんだよ!!」

「……へ?」

「女の子が触ってくれたものを意識して大切にしてしまうようになる! 女の子との不意の接触に胸がドキドキする! 女の子の使ったたて笛が気になる! たまに学校などで女子の使用済み体操服が消える事件が発生する! これらの現象が全てを物語っているだろう!?」


 勢いに押され、ゴクリと喉を鳴らす覇太郎に、しかし俺は構わず言葉を続ける。


「そう! 部位なんてほとんど関係ないんだ! ただ特別男が興奮を感じてしまう部位は確かにある。それが胸や尻やワキやおなかや足の指だったりする。なぁ、こいつらにはある共通点があるんだが、お前にわかるか?」

「き、共通点だと……? いや、その前にカズキは足の指にも興奮するのか……?」

「そりゃ興奮するわ!! お前足の指は第4の陰部だぞ!? 憶えておけ……で、共通点だが、それはいま挙げた部位の全てが普通に過ごしているだけじゃお目に掛かれない部位だということだ」

「ああ、確かにな。胸や尻は服と下着に、ワキも服の下で足は靴下の中だ。普通は外にいる間に見れるものじゃない。だが、それがどうしたと言うんだ?」


 俺はここで大きく息を吸い込み、そして吐いた。

 盛大なため息をだ。


「覇太郎よ。本当にお前は何もわかっていないな。こいつらが普通にお目に掛かれるものじゃないっていうのは、単に服の中にあるからではないぞ?」

「どういうことだ? ぜ、全然わからん……」


 仕方ない、1から講義することにしよう。


「まず女の子の生の胸や尻を拝める男というのはどういう男だ?」

「そ、それは……彼氏じゃないか? その女の子が男相手なら誰でもいいってわけじゃないならな」

「そうだな、その通りだ。では次に生のワキとおなかと足の指を拝める男はどういう男だ?」

「それに関しては割と写真とかでよく見る気がするから、別に彼氏じゃなくても拝めるんじゃないか?」


 ふむ。そこが覇太郎と俺の認識の差だな。

 確かに色んな所で見ることはできる。雑誌で、グラビアで、CMなんかでも、水着の可愛い女の子なんてどこでも見ることができる時代だ。

 しかしそれはーー


「実際に見ることができるわけではない、だろ?」


 紙を媒体にするにせよテレビを介するにせよ、それは()()()()()()()()()()での体験に過ぎない。


「リアルに見ることはできるか? どんな男でも、自分の理想の女の子の生のワキを見ることはできるのか?」

「それは……難しいかも知れない。グラビアアイドルならまだしも、自分の片思いの女の子にワキを見せてもらうのは至難の技だ」


「そう。つまり、俺が先程挙げた部位たちは、女の子にとって特別な男にしか見る機会のない部位なんだ!!」


 ここにきてようやく、覇太郎の目に理解の色が浮かぶ。


「……なんとなく理解できてきたぞ。つまり、男は特別な関係の男しか見れないハズの女の子の体の部位に興奮してしまうということだ。そしてカズキが本当に言いたいことは、おっぱいやお尻に興奮する男は同じく隠された部位であるワキにも興奮するということで、だからこそワキという単体の部位ではなく『隠された特別な部位』という分類をすれば大きなニーズを獲得できるということだな?」


「う、う~ん…………ちょっと理屈っぽ過ぎるぞ? 俺はそんな女の子の秘められた部位でおにぎりを握ってくれるんだから、男が食いつかないハズがないってことが言いたいだけなんだから」


 覇太郎はしかし、自分の理解に充分納得したらしい。


「わかったよ。ワキ好きが特殊性癖だと言ったのも改めよう」


 覇太郎が両手を挙げて、降参のジェスチャーをする。

 こうして、俺と覇太郎は少し、自分たちの性癖の溝を埋めることができたのだった。

3話連続投稿は今日で最後になると思います。

忙しない更新でしたがお付き合いくださりありがとうございました。

今後ともよろしくお願いいたします!

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