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俺が好きなのどっちなの!? 『生ワキ』それとも『あの娘』だけ!?  作者: カプサイシン
2章 青年は、アンダーアームに夢を見る
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革新的なアイディア

カズキの頭に閃くアイディアとは……!?

「ところで、そろそろ本格的にアイディアを募集したいと思うんだが……」


 心の中の理想の異世界ファンタジー像が現実とのギャップに敗れたことで、俺はかなりのダメージを受けていたものの、ようやく精神的に回復をしてきたので再度3人に問いかける。


 3人は思い思いに過ごしていたようで、覇太郎は『魔法陣グ〇グ〇』を読んで笑い転げていて、アイアとニーナちゃんはテレビゲームで対戦して遊んでいた。

 ニーナちゃん、この世界への順応が早いな!!

 ひとまず俺の声は届いたのか、テレビゲームを中断したアイアがこちらを向く。


「だから何でもいいって言ったじゃない……一昨日からずっと悩んでいて、今の時点でなんでアイディアの欠片すらないのよ」


 うっ……痛いところを突かれるなぁ……。


「いやぁだって昨日は色々あったし、事故のショックでか文化祭での出し物を考えなきゃならないっていうのも忘れてたんだよ」


 そう言うと、ニーナちゃんがビクリとしてこちらをうかがうようにする。


「き、昨日は本当にすみませんでした……私にできることがあれば、全力でお手伝いいたします……」

「ご、ごめんごめん。そういうつもりじゃなかったんだけど……」


 はぁ~、とアイアがため息を吐く。


「ホントあんたは気が回らない人間ね……」


 とても冷たい目を向けられてしまった……


「……すみませんでした」

「いっ、いえいえ! 本当に、悪いのは私の方ですから……!!」


 そんな会話をしていると、覇太郎がやっとこさ起き上がってきた。


「ところでカズキ、また話がズレてないか?」

「あっホントだ! だからアイディアを頼むよお前たち!!」


 そう言うと、ニーナちゃんが首を傾げる。


「あの……ところでそのアイディア? っていうのはいったい何に対してのものなんですか?」


 あぁ、そういえばニーナちゃんには初耳だろう。


「えっとね、今度俺たちの通ってる大学で文化祭があるんだよ。そこでお客さんに出す食べ物をどうしようかって話してて。できれば今までにない革新的なものが良いんだけど……」


 って、いきなり説明したって普通分からないよなぁ……。ニーナちゃんがいた世界と俺たちの世界の文化体系だってきっと違うだろうし。

 いったいどこから話した方がよかったか、俺はそう考えていたのだがーー


「理解しました。他に出店している店とは一味違った食べ物を提供したいけど、しかしそれが中々思いつかないということですね」

 

 ーーニーナちゃんは瞬時に、俺の言わんとすること、そして悩んでいることをバッチリ把握してしまう。 

 

「めちゃくちゃ順応が……理解が早いね!? うん、でもそういうこと」

「ちなみに今までに出ている案って、どういうものがあるんですか?」


 ニーナちゃんの問いに、アイアがスマホを取り出して答える。


「まだアイスキャンディー以外は出てないんだけど、他にどこでもやりそうな食べ物は……ホラ、見て? たこ焼き・焼きそば・チョコバナナ、あとはこういうのとか……」

「ほうほう。私の世界にも似たようなものはありますね。確かに屋台でよく見かけます……」


 アイアがニーナちゃんに屋台での売り物事情を教え始める。

 女の子同士でキャッキャウフフと、『あっ、こういうの美味しそうですね!』『そうね! これなんかもどう?』『いいです! いいです! 食べてみたいです~!!』という甘ったるい会話が花咲く。

 こういうのを隣で眺めてるのっていいよね。


 心清らかにその花園に見惚れていると、ちょっと邪魔だったのか、ふいにアイアが長い髪の後ろで結び始める。花の香りがして、ふいに胸がざわつき波立つのを感じた。それはどこかで経験したことのある心の動きで、熱だった。

 香りの元はかき上げられたアイアの髪。

 そしてさらに俺の心を揺り動かしたのは、ワキだった。


 ニーナちゃんと同じような、ちょっと自信の体格にしては大きめの半袖を着ていたアイアのワキが、後で髪を結うために腕が上がって露わになっていた。

 陽に当たらないソコは白くてスベスベしていそうでーーとてもキレイだ。

 体感時間的には結構な時間、実際には数秒だったろうが、目が釘付けになってしまっていた。


「……な、なによ?」


 ハッとする。

 あまりにジッと見過ぎていたからだろうか、アイアが訝しげに尋ねられていた。


「い、イヤなんでもないぞっ!? は、覇太郎! 俺たちも何か考えよーぜっ!!」


 覇太郎はお見通しだったのだろうか、苦笑いで、それでも「そうだね」とだけ言って俺の言葉に乗ってくれた。

 俺は必死でアイアに対しての感情を抑えつけ、それ以上ワキについて考えることを止める。

 そして場をなんとか取り繕うためにも無理やり質問を絞り出す。


「は、覇太郎はなんか革新的なの知らないか? 例えば最近女子の間で流行してる食べ物とかさ……」


 覇太郎は顎に手をやり真剣に考え始める。


「う~ん……そうだなぁ。この前のデートで行った先で食べたのがあったんだけどさ」

「おお!! いいじゃん、いいじゃん! そういう生の声を待ってたんだよ!」


 なんとか順調に滑り出した会話に安堵する。

 それにしてもやっぱ実際に女子とデートしまくってる男は違うな。

 これは棚ボタ的にいいアイディアが手に入るかもしれんと続きを促す。


「これがさ、クレープなんだけど、ただのクレープじゃないんだよ」

「クレープか! 昔からずっと廃れることもなく続く人気スイーツだよな! それでそれで?」


「なんと中身に入ってるのが納豆とサバ味噌で、ついでにしっかりと生クリームが入っててさ、気持ち悪いし不味いったらなかったよ……」


「いやいやいや! 不味いやつ思い出してどうすんのさ……美味いやつにしてくれよ」


 そんな話のオチは今いらないんだ……


「いやでも、女子はその甘いとしょっぱいのギャップ? 臭いのがそれはそれで良い? みたいでさ、美味しそうに食べてたんだよね……うっぷ」


「お前は思い出すだけで吐き気を催してるみたいだけどな……しかし、男子と女子はやっぱり好みが違うもんなんだな。女子にはウケても男子にはウケないっていうのもなぁ」


 やっぱり男にも女にも平等に人気が出そうなものがいいんじゃなかろうか。

 しかし覇太郎には別の考えがあるようで、人差し指を揺らして「ノンノン。それは早計だぜ?」と気障なパフォーマンスをし始める。


「うざったいな、出し惜しみせずにはよ言いなさい」


「うん。つまり僕が言いたいのはさ、男子が全く見向きしなくても、その商品が女子の全員が興味を持って買ってくれるようなものなら、それに特化しちゃうのはアリなんじゃないかな? ってことなんだよ」


「ほう? 女子しかターゲットにしないってことか?」


「まぁ、男子でもいいんだけどね。考えてみれば町のクレープ屋さんなんかは主に若い女子にターゲットを絞って営業しているじゃないか。だからその子たちが店から離れないように色んな種類の甘いフルーツやお菓子のトッピングを揃えたり、はたまた女子の心を掴むような色物、納豆とかサバ味噌だとかを用意しているんだ。それで昔からずっと営業を続けられる店だってあるんだから、売り上げだって充分に見込めるんじゃないか?」


「た、確かに……お前やっぱりすごいじゃないか! なんで最初っからその脳みそを回転させてくれないんだ!」


「いやぁ、それほどでもあるけどね……」


 覇太郎とそこそこ中身のある会話をしている間に、ニーナちゃんはこの世界の屋台知識をそこそこ吸収できたらしい、こちらの話に加わってきた。


「今はクレープのお話をされてましたね? でもクレープとかもどうやら学園祭では定番の出し物のようですよ?」

「え? マジか……じゃあ奇抜なクレープだけ売るっていうのはどうだろう?」

「それだと物好きなお客さんしか来ないと思いますし、一時の話のタネとして人気が出たとしても文化祭3日間は売り続けられなさそうですね……」

「そ、そっか……」


 まさか文化祭3日間の流れから見られての指摘を受けるとは思わなかった。

 ニーナちゃん本当に吸収が早すぎる……さすが1国の王女なだけあるな? ……多分。


 しかし、色物クレープもダメだったか。

 となると他に何があるかなぁ……

 再び悩む俺たちで部屋の中が静かになる。


「まぁ別にそういう色物にこだわる必要もないんじゃない? 普通の食べ物を普通に売ったって、そこそこ楽しいと思うわよ?」


 そんな中で最初に口を開いたのはアイアだった。

 奇抜さを狙わずに食べ物を売ったって、売り上げはそこそこいくだろうし作業もあって楽しいだろうからそれでもいいじゃないか、そういう気持ちもわからなくはない。

 だけどもーー


「でもせっかく食べ物を売れるんならさ、やっぱり他ではやってないような新しいことを試してみたくないか……?」


 アイアや覇太郎がまた始まったよとばかりに呆れ顔でこちらを見る。


「……だから具体的にその新しいことってなんなのよ」

「いや、だから革新的な何かを求めているんだが……」

「その『革新的な何か』っていうのが抽象的過ぎんのよ! もうちょっと方向性を絞れないわけ? どういうスイーツをアレンジするとか、こういう材料を使ったの新しいスイーツとか」

「う、うむぅ……俺スイーツとか詳しくないんだよなぁ……」


 するとニーナちゃんが助け舟を出してくれる。


「別にスイーツに限らなくてもいいのではないですか? 焼きそばなどはご飯でしょう? 他にこの日本で馴染みがある食べ物を使ってみるのもいいかもしれませんよ?」

「そ、そうだな。うーん、日本ならではっていうと……う、梅干し?」

「それ調理必要ないわよね……」

「他は、そうだな。おにぎりとかお味噌汁とか、天ぷらとか?」

「あー、おにぎりとかはアリかもね。日本でメジャーな食べ物だけど、屋台で売ってるところはあまり見ないしね。味噌汁は確か相撲部が去年ちゃんこ売ってたから被りそうだし、天ぷらはちょっと危なくないかしら?」


 おぉ! アイアが割と肯定的だ!

 ニーナちゃんは「おにぎり……?」とちょっと具体的なイメージが追い付いていないようだ。

 向こうの世界にはなかったのかな?

 覇太郎はなんだか変な反応だ。笑いをこらえているのか、体を震わせている。


「ど、どうした? 覇太郎? なんか俺面白いこと言ったっけ?」

「い、いや……それがさっき読んでた漫画でさ……お、おにぎりって言えばさ……ふふっ」


 それきりまた腹を抱えて床に転がってしまった覇太郎。

 覇太郎が読んでた漫画ってーー


「ーーッ!!」


 この時、俺の中で、まるでパズルのすべてのピースがカチリと合ったような音がした。


 一昨日、昨日、そして今日。

 この3日間で散りばめられていたキーワードが組み合わさりーー

 燦然と輝く、新しい絵が誕生したのだ。


『革新的な食べ物』、『異世界の巨乳美少女』、『ターゲット層を絞る作戦』、『魔法陣グ〇グ〇』、そしてーー

 ーー『ワキ』と『おにぎり』。

 

 この全てから、とうとう答えは導き出された


「ど、どうしたのよ? 急に下向いて、真剣な顔して固まって……」




「ーーおにぎりだ」


「え?」


「今回の学園祭の出し物! 俺たちはおにぎりを提供する!!」


 そう、おにぎりをだ。


 しかしただのおにぎりなんかじゃない。




 美少女に夢見る全ての男どものための、『美少女がワキで握ったワキおにぎり』をだッ!!

ここまでお読みいただきありがとうございます。

2章がこれで終わりとなります。

最後の思い付きの元ネタ、誰もが1階はトラウマになるやつだと思います。

知らない方は『グルグル ワキおにぎり』で検索!


これからも毎日1話の更新を続けていきますので、少しでもご興味をお持ちいただけたらブクマしていただけると嬉しいです!

評価・感想もお待ちしておりますm(__)m


次回もよろしくお願いします!

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