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俺が好きなのどっちなの!? 『生ワキ』それとも『あの娘』だけ!?  作者: カプサイシン
2章 青年は、アンダーアームに夢を見る
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やるべきこと

回想は終わり、病院からの帰り道に場面は移ります。

 病室での出来事の振り返りもそこそこに、受付で精算を済ました俺は病院を出た。この時間帯は夏に比べると随分と日差しも弱くなっており、もうじき陽も落ちる時間帯になる。

 記憶はほとんどないけど、今日1日すごく疲れた。


「だってなんだかすごい経験をしちまったもんな……」


 まさかサブカルコンテンツのテンプレ導入ランキングTOPランカーの『空から美少女が降ってくる』パターンと『主人公が記憶を失ってしまう』パターンを同日に味わうとは。


 世界を見渡しても俺だけなのでは?

 宝くじが当たるよりも、隕石が降ってきて頭に当たるよりも低い確率で起こる出来事なのでは?


 ラッキーだったのかアンラッキーだったのかで言えば、間違いなくラッキーだった。

 まず普通に生きているだけでは銀髪美少女の生ワキとの接触なんてイベントはあるまい。


「おっと……」


 今、目の前に3人組で歩いていた女子高生たちが腕を上げて何かを指差している。

 俺の目はその指の向かう先ーーではなく、二の腕に持ち上げられたセーラー服の裾から覗ける『ワキ』をガン見してしまっていた。


「マズいな……これじゃただの変態じゃないか……」


 このようにガン見をしてしまうのは病院を出てから通算3回目。

 胸や脚ではなく、何故か気になるのは女の子の『ワキ』の下。

 これはニーナちゃんとの出会い頭で経験したラッキースケベのせいなのだろうか。

 それか頭でも打って人が性癖が変わってしまったとか……いや、性癖に目覚めた、という方が正しいのかもしれない。


 ただ1つ、気になる点があった。


「覇太郎の言っていた、『俺が変わったのは事故の前から』、ってのは結局どういうことなんだろ」


 覇太郎が『変わった』と俺を評した点がこの性癖のことを言っているのだとすると、いったいどういうことになるのだろうか。

 可愛い女の子を見かければその服の下のワキの下が気になってしまう、それに気づいたのは病院を後にしてからだ。

 そしてその180度の思考転回に至るキッカケは、間違いなく『生ワキ』が関わっていると信じている。

 しかし、それが事故の原因であるわけだから、覇太郎の言う『俺が変わったのは事故の前から』という主張はつじつまが合わない。

 直近の記憶がまだかなりボヤけているため、病室の記憶以前に何かがあったとしても今は思い出せそうにない。どこかモヤモヤした気持ちを抱えて、深くため息を吐く。


「はぁ。なんだか、日々の小さな悩みなんかが吹っ飛んでしまったような気がする……」


 今日遭遇したアクシデントの印象に比べれば、大概の悩みの重さなど羽毛のようなものだ。

 例えば、ボディソープ切れてるの忘れてたけど、毎回買い物でそれだけ買って帰るの忘れてしまう、とか。休み明けに提出予定の講義のレポートまだ全く手を付けてませんよ、とか。今日のご飯はそろそろ野菜を取らないと肌荒れしそうだな、とか。

 どーでもいいよーな、それでいて日々の割合を小さくても確かに占めている悩みの種たちは、全くの視界の端へと吹き飛ばされてしまう。


 でも見えなくなってしまいそうだというだけで、結局目の端には留まるわけで。放っておいたって悩みの種自体が無くなるわけでもないわけで。


「帰りに野菜と……ボディソープか。買って帰らないとな……」


 そんな大事件が起こった今日でさえも、日々量産されていく小さな悩み事に振り回されて、俺は買い物に行く決意を固めたのだった。




「トマトにブロッコリー、キャベツは入れた。ボディソープも今日は忘れなかった……っと」


 病院から最寄りの駅で電車に乗り、自宅近くのスーパーで買い物をしている。近くに商店街もあるんだけど、スーパーで買う方が1度に必要なものが揃って都合がいいし、スマホのアプリでポイントも加算できるから節約にもなる。

 だからこそ、最近は消費者の商店街離れが進んでしまって、シャッター街も増えてしまったという嘆きの声をテレビのコメンテーターなどからも頻繁に聞くが、消費者としてはそれでもやっぱり便利な方に傾いてしまうよな。

 お! これ今回提出しなきゃならないレポートのネタに使えるかもな。

 心の内にメモメモ。

 さて、他に必要なものはーー


「そうだ、最近まだ残暑もキツイし、アイスを買おうと思ってたんだ」


 アイスコーナーへと行く。

 カップアイス、小袋系のアイス、色々あるけど、俺が好きなのはーー


「これこれ。シンプルな形で味もシンプルなアイスキャンディーなんだよな」


 ケバケバしい水色の円柱型をしたアイスキャンディーがプリントされている箱を手に取る。


「このソーダ味が昔から好きで…………あぁっ!!」


 思い出してしまったもう1つの、直近最大の悩みの種。


「あ、明後日までじゃんか……学園祭の出し物決めなきゃならないの……」


 ぼんやりと思い出されるのは、昨日アイアの部屋で出し物の相談をしていたこと。確かアイスキャンディーを出すみたいな話が上がってたから連想されたのだろう。


「あぁぁああ……仕方ない、明日決めよう……」


 とりあえず今日のところは買い物かごをレジに持って行って、家に帰って飯作って食って風呂入ってアイスキャンディー舐めて寝ることにした。

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