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第一話 《司令官》現る

始まり回ですかね。

 研究サイト-44地上施設《団地》の一室。引っ越しを終えた春はベッドに突っ伏していた。

「ああ、やってけるかな……」

 春はかなりの人見知りであった。

 もともと人と関わること全般が苦手であり、前に配属されていた《収容研究管理部》の看守時代からほとんど1人で動いてきた。

 さらに追い討ちををかけたのが、先程声を掛けてきた青年。春が高校生相当の年齢なのに対して彼は20代前半。身長も高く体格も良く、目を合わせるのが怖いため顔は見ていないが、おそらくここの所属であろう。青年は春に気軽に声を掛けてきた。

『お前見ない顔だな?もしかして新人さんか?』

 今までずっと一匹狼のエリートだった春にとって、フランクに話しかけられるのは初めてに等しかった。

『ああ収容部からか。なるほど、迷ってるわけだな。』

 その時春は施設内で迷っており、割り当てられた自室を探していたのだ。

『よし、今暇だし案内してやるよ!』

 その青年はまるで少年のようだった。しかも純粋に善意から()に声を掛けてくれた。

 誰とも利用し、利用されるだけの存在であった春にとって、それは喜び以外の謎の感情をもたらすものとなったのだ。

 トドメを刺したのは最後の台詞。

『にしてもかわいいな、お前。』

 電撃が走った。

 そしてとりあえず逃走した。

 なぜわかったのか?

 あの時の春はパーカーのフードを深くかぶり、見た感じは完全に不審者だった。

 確かに童顔だが、少しだけハスキーな声を生かし、態度、仕草にも気をつけて()()を演じていたはずだ。

 春の新生活は、本人曰く災難だらけなスタートだったそうだ。


 ◇


 同じくサイト-44のとある研究室、通称"武器庫"の隅で、清札月夜と青木研究助手は熱心に作業をしていた。

 今作っているのは新型の近接武器。丈夫さと軽さ、高い現実性強度をもつ素材を探しているがなかなか見つからない。

「……カーボン系のとかどうです?堅いですし。」

「ダメだダメだ、簡単に〈改変〉されてしまう。」

 見た目は白衣をまとった兄妹だが、幼女の方が立場が上のようだ。

 その時、ノックが響いた。

「は〜い。」

「綾野だよ、入るよー。」

 返事を待たずに入ってきたのは、若い白衣の女性。綾野博士は長めの髪を後ろで結い、常に赤いネックレスを身につけている変わり者の博士だ。

 その目は糸目で、彼女の瞳の色を知る人はいないらしい。

 何より彼女はここでは珍しい芸術系の研究員。彼女の担当する異常物品は多く、暇はないはずなのだが……

 彼女は毎日絵を描いている。

 その作品はコミカルなイラストから壮大な風景画まで、もはや何でもありだ。彼女に作品の依頼をする職員も少なくないらしい。

「あれ、なんか面白そうなことやってるじゃん。僕も混ぜておくれよ。」

 ついでに言うと、綾野博士は僕っ娘である。


 しばらくして成果が上がらなかった3人は、綾野博士により即席のティータイムとなっていた。

「博士、今職務中ですけど……」

「いいじゃないか、先週なんて士気を上げるためとドッジボールをやったじゃないか。」

「そうだよ青木くん、こうした息抜きも仕事のうちなのさ。」

「はぁ、水野人事官が来ても知りませんよ。」

「「忘れてた!」」

「ま、その時は僕も一緒に叱られますよ。」

 そう言ってカップを手に取る助手くん。してやったり、などと思う青木であった。


 ◇


 春が意を決し、世話になる部隊に自己紹介しようと部屋から出た直後、サイト-44全体に臨時放送がかかった。

 それはサイト管理官の声らしい。

『サイト-44全職員に通達。本日午後より、"レベル5ライセンス保持職員"がここに配属される。』

 レベル5ライセンス。ヤバい。

 ここ"連盟"では、情報にアクセスする権限が"ライセンス"と言うシステムにより厳重に管理されている。

 例えばレベル2の春は異常に関する大体の情報を得られるが、敵対組織や連盟の長期戦略についての権限はほとんどない。

 一方のレベル5は、連盟のありとあらゆる情報にアクセスする権限を持つ。事実上、最高権力者の1人というわけだ。

 そんなヤバい人物がなぜ研究サイトへ来るのか。通常は米本部司令室や《現実戦線統一会議》に置かれるはずなのだ。たかが研究と職員の住居に重点を置いた施設へ来るはずがない。

『上によれば、その方の目的は敵対組織に対する戦略に44が必要だから、とのことだ。』

 つまり。

 ここサイト-44は、今日から長期戦略拠点となると言うことらしい。

 色々と不安な気もするが、春にはそれが必要なことに思えた。


 何より、自分の父のような人物、少なくともそれと同等の人間なのだ。


 きっと頼れる司令官だろう。


 ◇


 例の3人はその人物について議論していた。

「レベル5ってことは、戦える戦略家、という認識でいいのか?」

「いや、案外作戦指揮専門かもしれないよ?まぁ戦闘訓練が義務付けられてるから一般人ほど弱くはないだろうけど。」

「レベル5ってパスワード何百桁でしたっけ。とにかく常人の頭じゃやっていけないそうですけど。」

 とりあえずレベル5ということは、普通でないのは確かだ。

 レベル5職員には機密保持の義務があり、情報漏れを防ぐために軍隊クラスの戦闘訓練、そしてありえない桁数のパスワードが押し付けられる。パスワードを間違えれば即座抹殺もあり得るため、少なくとも頭は常人のものではない。

 そして敵対組織に対する長期作戦司令官ということは、()()()()()()にも長けているのだろう。

 これはなかなか凄いのが来そうだ。

「これであたしの武器達をもっと増産できるぞ!」

「僕にはあんまり関係ないかな〜」

「清札博士、ほどほどにしてくださいね。」

 周りが騒ぐ中、特に気にしていない様子の3人組だった。


 ◇


 食堂で1人寂しく昼食を終えた春は、もう迷子になるまいと施設をまわっていた。

 結局あの青年と再会することはなく、ホッとしたようだが残念そうな春。

 正直お偉いさん云々より、友人づくりの方が大事だ。

 でも悲しいかな、現実は色々と不都合が多いものだ。

 地上・地下施設を繋ぐエレベーターに向かうと、ふとその扉が開いた。

 現れたのは、黒いバイザー(?)で目を覆った少年。おそらく小学生か。服は旧日本海軍の制服らしきものに複数の黒いラインが走っている。被っている帽子はバイザーと一体化しており、これまた旧日本海軍を彷彿とさせるものだった。

 なんとなくだが、この少年は存在してはいけない、そんな気がした。()はこんな人物いなかったはずだ。

 ……前?

「そろそろ通ってもいいかな?私も忙しいのでね。君は……ああ、《シータ》の娘か。」

「……はい。」

 《シータ》、それは収容研究管理部部長のコードネームであり、春の血の繋がらない父のことだ。当然ライセンスは、レベル5。

「私はコードネーム《司令官》だ、よろしく。」

 見た目と一致していない物言いと言葉で握手を求めてくる少年に、春は動揺を隠せなかった。

《司令官》は、書いてて覚えきれないような設定の塊です。

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