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第零話 終焉と再始動

初投稿になります。初回でちょっと長いかもですが、最後まで読んでいただけると現実性崩壊するほど嬉しいです。

 瓦礫と火の海の都市を疾走する少女。

 高校生くらいであろう少女は、"連盟"では特級戦略とされていた。

 彼女の名前は████。しかし"連盟"では、如月(キサラギ)(ハル)という偽名を与えられ働いていた。


 ふと、近くの陰から矢が放たれる。彼女はそれをナイフで薙ぎ、陰に向けて〈残像〉を放つ。

 陰にいた"仮面"は砕かれ、消滅した。


 今ので他の"仮面"に気づかれたらしい。宙にいた"仮面"たちが春のもとへ殺到する。

 計8体の敵、逃げ道はない。

「チッ、やるか。」

 仕方なく瓶のようなものを取り出し、中身を一気に飲み干す。

 そして、一言。

「〈一時停止〉。」

 直後、世界が停止する。彼女を除く全てがモノクロとなり、一切の音が消える。

 華奢な腕を振り回し縦横無尽に回る春。その間、ナイフの軌道に〈残像〉が残されていく。

「〈再生〉。」

 そして、世界が色を、時間を取り戻した。

 配置されていた〈残像〉が"仮面"を次々と穿つ。

 少しして、聞こえるのは炎の音のみとなった。

 このまま能力を使い続ければ、すぐにSP……春の力は尽きるだろう。"活性化薬"はあれで最後。能力が尽きれば、いくらエリートといえどこの数は相手にできない。きっと蜂の巣にされ殺されるだろう。

 いや、()()()()のか。奴らは正体不明の敵。その能力は戦闘、破壊、そして消去。前にSPが尽きたとき、それを見た。それも、パートナーが消されると言う形で。


 あの時彼は、SP切れの春を庇うように前へ出た。彼の能力は〈防衛〉。その鉄壁の防御は奴らの武器など軽く弾くだろう、そう思った時だった。奴らの中でも上位とみられる個体が現れ、仮面の二つの穴を融合させた。そこに現れたのは、どこまでも暗い1つの穴。彼はそこへ吸い込まれ、戻ってくることはなかった。

 ああ、意識しないようにしていたのに。

 あの時少しでもSPがあれば、彼を救えただろうか?

 いや、ダメだっただろう。

 春はあの穴を見た時、硬直していた。彼はさまざまな抵抗値が高いため離脱しようと動けた。でも。

 春はクオリア値……精神汚染に対する抵抗値がもともと低めだ。その上ひと月前の事件によりさらに弱っている。

 ……私は役立たずだ。結局バックアップがなければ戦えない。


 春は敵とネガティブな思考を振り切り建物の陰に向かう。その時だった。

 イヤホンを模した通信機から音が漏れた。……中継基地は破壊されたはずなのに。

『……えるか!?《刹那の刃(フラッシュ)》、応答せよ!繰り返す……』

 聞き慣れた声だった。春の任務の関係で一週間ほど会えていなかった、数少ない親友の1人の声。

 まだ生きてくれてたんだ。

「こちら春!現在██区の███に潜伏中。」

『了解。できればただちにサイト-44、"武器庫"に向かってくれ!』

「了解!」

 親友、清札博士の連絡を受け、危険を伴う移動を決意する。

 博士、清札月夜という偽名を使う、装備開発を任されていた博士。その容姿は完全に小学生女児、実年齢も1█歳という常識はずれの存在。

 まだ1█歳でありながら博士号をもち、その好奇心と技術と頭脳を用いてさまざまな兵器を開発してきた博士で、春のナイフもその特別製だ。

 ちなみに"武器庫"とは彼女の研究室のことだ。中は文字通りの状態である。

 そんな幼女博士は春とよく気が合い、よく(ソーダを)飲み交わす仲だ。また大人顔負けの天才である彼女はその頭脳を活かし、春のさまざまな相談にものってくれた。

 親友が、まだ生きている。春はそのことで頭がいっぱいだった。


 廃墟となった建物を出ると、当然"仮面"どもに見つかった。春は次々と迫ってくるそれを〈早送り〉と〈残像〉を駆使して斬り続け、包囲を強引に突破する。

 〈早送り〉は自分のみ高速化、〈残像〉はナイフの残像に物理特性を持たせるものだ。どちらも消費SPが少なく、まだまだ戦える。

 本人は気づいていないが、春の強さはその適応力だ。〈一時停止〉は浪費が激しい。そこで無意識のうちに行動を最適化したのだ。

 多少の無理をしつつ、春は家へ、サイト-44へ向かう。


 たどり着いた団地、かつてのサイト-44居住スペースは、瓦礫の山と化していた。ところどころから出火しており、時折血のようなものも見える。

 地下施設への入口、エレベーターはダメなので非常階段を探しているとき、見覚えのある死体があった。

「綾野博士?……と聖也さん、かな。」

 その声は震えていた。綾野博士もフィールドエージェント・狩野も、仲の良かった親友たち。死体のそばにはハッチが隠されていた。精巧な絵により床と大差のないように見える入口。それはすでに開かれていた。

 2人はどちらも芸術を得意分野としている。綾野博士は美術、エージェント・狩野は音楽だ。狩野の持つヴァイオリンを見れば、最後まで隠蔽型の精神汚染をばら撒いていたことがわかる。だがハッチは開いている。なにせ相手は人間ではないのだ。敗北したのだろう。

「……ありがと。」

 最後まで施設を守ろうとした2人に、感謝と敬意を込めて。


 施設の中ではそこら中に銃弾が散らばっていた。どこを向いても死体だらけ。吐き気がする。

 うっかり血溜まりに踏み込んでしまった。途端に例の"仮面"が集まってくる。

「ッラァァァァァ‼︎」

 大きく腕を振り抜き、大量の〈残像〉をもって殲滅する。この場はなんとかなった。だが。

「あぁ、切れたな。」

 もうSPは残っていない。次に囲まれれば終わりだ。その前に辿り着かないと。


 やっとの思いでたどり着いた部屋、第11研究実験室、通称"武器庫"。廊下との窓には段ボールが貼られ、外から様子は見えない。

「オレだ。博士、春だよ。」

 ガチャ、と重い音がした刹那、オレっ娘エージェントは部屋へ引き込まれた。

 小さな影はすぐに鍵を閉め、春を椅子に座らせた。

「……春ちゃん?」

「ああ。」

「春ちゃぁぁぁんっ‼︎」

「うわっ!?」

 いきなり抱きついてきた博士。よく見れば目元が赤い。

「春ちゃん、ありがとぉ。ほんとに怖かったよぉ。」

 ここまで子供っぽい博士は初めて見た。もとより子供だが。

「みんな通信……グスッ、途絶えちゃって、来てくれたの春ちゃんだけだよぉ。」

「そうだね、博士。怖かったよね。」

 それもそうだ。そもそも大人でも、この孤独と恐怖には抗えまい。

「ねえ春ちゃん、最後の頼み、聞いてくれる?」

 ……何言ってるんだ、博士。最後?なにそれ。

「春ちゃんにしかお願いできないことなんだ……」

 そう言った博士は、私の左腕に何かを突き刺した。

「っ‼︎?」

 顔を上げると、博士の目には大粒の涙が。

「春ちゃんごめんね。ほんとは話してからのつもりだったけど……」

 博士が謎の機械を操作し、何か電気のようなものが流れ込んできた。

「これ……SP!?」

「そう、Dr.Darkerの遺した、"コードネーム《刹那の刃》を利用した一方的なタイムマシン"。」

「まさか、オレの〈時間操作〉を使って……」

 そんなの無茶だ。たとえ考案者があのDarker、いかれた天才だったとしても、世界そのものを巻き戻すなんてそんな……


 でも。

 もし戻れるなら。

 もし自分の能力で、この運命を変えられたら。


 今まで考えたこともなかったこと。でも今ならできる気がする。幸いSPは、博士の装置から供給される。

 それで足りるかはわからないが、やるなら今しかないだろう。

 できるかじゃない。

 清札博士、綾野博士、エージェント・狩野、そして、██たち。

 やるんだ。


【決意】


 自分の中のSPに集中する。

 この終焉(オワリ)再始動(ハジマリ)へ。


 さあ、帰ろう。

 まだ笑っていられたあの頃へ。


 次こそは、勝利を掴むんだ。


「〈時間逆行(タイムリープ)〉」


 意識が白く塗りつぶされていく……




 ◇


 清札博士こと清札月夜は、目の前の軌跡を眺めながら涙を拭いた。

 時間が戻れば、記憶も戻る。短かったとはいえ、楽しかった日々も全て忘れてしまう。

 そして何より、何も知らずに同じことを繰り返すのだ。


 これは敗北宣言だ。

 何度でも負け続ける。

 そうして、何度も全部を先延ばしにする。

 協力してくれた春を冒涜する結果になる

 ごめんね、春ちゃん。

 ありがと、春ちゃん。

 何度だって繰り返す。


 そんなことを思いつつ、僅かな奇跡の可能性に想いを馳せる。

 もし変えられるのなら。

 もし覚えていられるなら。


 次は、どうなるだろうか。

ちょっと長くてすみません。更新ペースはあできるだけ短くしようと思いますが、忙しいのでそうもいかないかもしれません。

これからよろしくお願いします。

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