顔無
響子はテレビでホラー番組を見て、ここらへんにもそんな噂がないか気になり、祖母に聞くことにした。
「そんな噂訊いたことない?」
響子は祖母に尋ねると祖母は少し考えた後。
「ああ、そういえば噂話を聞いたことがあったかな」
「もっと詳しく話してよ」
「記憶があいまいだが確か――」
ある女の子が弟と遊んでいたとき弟が急に洞窟で遊びたいと駄々をこねたのだ。
その洞窟は村人たちからもあまりいい噂もせず女の子は親から危ないから入るな、と訊かされていた。
なので、女の子は止めてその日は何もなかった。
しかし、翌日弟は家のどこにもいなかった。弟の机に紙が置いてあった。
その紙には――洞窟に行く、と一言書かれていた。
親は二人とも働きに出ていて、女の子は親にばれたら、「お前がいながら」と怒られると思い一人で洞窟へ向かった。女の子が洞窟の中へ入ると暗くなり不安になった。早く出たい一心で必死に弟の名前を呼んだ。けれども返事は聞こえない。
ここまでくると大変なことになったと女の子も思った。そして親を呼びに行こうと洞窟を出ようとするが
出られない。むしろ女の子は光のほうへ走れば走るだけ光は遠ざかって行くように思えた。
すると誰かが女の子の足をつかんだ。
女の子がゆっくりと下をのぞくと顔がのっぺらぼうな男だった。
女の子は声も出ずそのまま見つめていると、
「顔をくれ」
そう一言男が発すると女の子は倒れてしまった。
女の子は家にいた。さっきまでのは夢なのかと思うとほっとした。
とりあえず朝ご飯を食べようと居間に行く。居間にいる親が女の子を見た瞬間
「化け物ー」と大声で叫び、皿やら椅子やら――とにかくいろいろなものを投げられた。
訳も分からず女の子は家を飛び出した。外は雨が強く降っていた。
女の子は水溜りを見ると自分の顔がなくなっているのに気づき発狂した。
「なんて噂を聞いたことがあるよ。その洞窟は戦のときに獲った首をしまう場所だったらしい」
「その洞窟は実在するの?」
こくりと祖母はうなづいた。
「でももう建物の開発とかなんとかでなくなっちまったけどね」
「どこらへんにあったの」
「この家だね」
祖母は少し笑いながらそう言った。