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シスエン° ~姉援~  作者: ハルカ カズラ
優しい世界
8/9

7.夕暮れに映るお姉さん

                

 一人で迷い込んだ修学旅行先で、僕は思い出に残る出会いが出来た。意地悪をされてひとり寂しく街中を歩いていたけど、異国のアリサお姉さんと双子の姉妹コノハ、シズクお姉さんたちに優しく声をかけらたら、何だかすごく気分が落ち着いた気がする。


 そんな思いをしたせいか、迷子になった僕を見つけた女子たちと、先生が必死に駆け寄って来た時には、とびきりの笑顔を見せることが出来た。


「ケントくん、いいことあった顔してるよ?」


「うん。迷子になって、心細かったけど親切なお姉さんたちが僕に声をかけてくれてたんだ。だから、大丈夫だったんだよ」


「そっか。会えたんだね、よかった。……ケントくん、何か思い出せた?」


「それが何なのかなんて僕には分からないよ。でも、旅行先で優しいお姉さんたちに助けられたのも思い出になるよね。カナタさん、心配してくれてありがとう」


「ケントくん、強いから心配なんてしないよ。帰ってからまた男子に意地悪されても大丈夫? わたし、ケントくんを守ってあげられるよ」


 カナタさんも優しいな。何だか僕は女の子にばっかり守られているけど、僕は強くならなきゃいけない気がするよ。うん、旅行から帰ったらミオお姉さんにお土産を渡しに行こう。学校に戻ったら、また僕に意地悪をしてくるかもしれないけど、僕は変わらないと駄目なんだ。



 長いようで短かった修学旅行。僕は誰もいない自分の家に帰って来た。誰もいないはずなのに、どこからか入って来たのか、ネコが部屋の中に迷い込んでいてびっくりした。


「キミ、どこから入ったの? どこの子なのかなあ」


「にゃ~~……」


 困ったなぁ。追い出すのもかわいそうだし、それに部屋を荒らしたり暴れたりしないみたいだし、何だか分からないけど、僕をじっと見ながら行儀よく座っている。追い出したら何だか寂しい気にもなるし、だからそのまま気にしないことにした。


 そのうちに飽きてまたどこかに行くかもしれない。僕はそう思いながら、玄関の扉に鍵をかけて夕方の公園に足を向けた。


 連絡するようなものなんて僕は持っていない。でも、公園にいればお姉さんが来てくれるんじゃないかと思ってた。寂しいわけでもなかったけど、僕は誰もいない夕暮れの公園でひとりブランコに座っていた。


 夕暮れの沈みかけて行く太陽は、まだ眩しさを残していて何度か目をこすってしまう僕。まばたきを何度かしていたら、形の崩れた太陽をふさぐようにして、知らないお姉さんが立っていた。


「ひとりでブランコに乗ってるの? 友達は?」


「僕はいつもひとりです。でも寂しくないです。だって僕は、僕には優しいお姉さんがいるから」


「わたしもいるよ? わたし、夕映ゆえって言うの。キミはケントくんかな? 合ってる?」


 どうして会ったことも無いお姉さんは僕の名前を知っていて、話しかけてくれるんだろう。それも、いつも会うとかじゃなくて、時々こうして声をかけてくれるだなんて。何か見えない縁でもあるのかな。


「どうして知ってる? って顔してるね。わたしは知ってるし、覚えてるよ? キミはケントくん。わたしが好きなケントくんなんだよ? でも、わたしにはここまでしか話せないんだ。あとはネコちゃんに聞いてね。ネコちゃんがもしかしたら答えてくれるかもだしね」


「ネコ? 僕は誰なの? 僕はケント。僕は……」


「今はまだ、いいよ。ケントくん、夕暮れ時にまた会おうね。バイバイ」


「う、うん。バイバイ……あれ? 消えた? え……」


 まただ。僕のことを初めから知っているお姉さん。でも、今回は最初から知ってたみたいだ。どうしてなんだろう。古都で見えた昔の僕と何か関係があるのかな? 


「おーい、ケントぉ! なにきょろきょろしてんのぉ? ミオお姉さんが来てあげたぞー」


「えっ? あ、こ、こんにちは」


「んー? 何か幻でも見たのかな?」


「何でもないよ。あ、これ古都のお土産なんだよ。はい」


「おー! サンキュなケント。お礼にお姉さんはハグをしてやろう。ほら、ケント」


 そう言うと、強引に煙草臭い白衣に抱き寄せられて僕は、ミオお姉さんにハグをされた。何だろうこの安心感。僕は寂しい? お姉さんたちは何かを伝えようとしているのかな。でも僕には何も思い出せないよ。僕はまだ……。


「ケント、修学旅行先でも誰かお姉さんたちに会えたの?」


「うん。異国のお姉さん、アリサに助けてもらえたんだ」


「アリサ? 何かどこかで聞いたことあるな……ん、いや、まさか?」


 アリサに優しくされた時、僕は何か誰かの映像が見えた気がした。アリサと楽しそうに話していたのは誰? 誰かの記憶が僕の中にあるんだろうか。思い出したら何かが変わるのかな。僕はそれが怖い、怖いよ。震えた僕を、ミオお姉さんは何も言わずに抱きしめてくれた。そうして僕は目を閉じた。

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