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九十一話 さすがダンジョン、と言うべきですか?

 肩を落とすカーネル大佐を見送った私たちは、奥へと進みます。


「センパイセンパイ、あのおじさんまた来るみたいなこと言ってたッスけど、大丈夫ッスかね?」


「さぁ……そもそもの話になりますが、このダンジョンをあとで消した時に、大佐は無事なんでしょうかね? 場合によっては、巻き込まれると思いますが。そうしたらぺちゃんこになるでしょうから、戦うどころではないと思いますよ」


「……センパイって、たまに怖いこと言うッスよね」


「え!? 私なんか変なこと言いました!?」


 ど、どうしてルナちゃんはうわぁ、って感じの目でこっち見てるんです!? ドン引きされるようなこと言いましたっけ!?


 よく見れば、後ろのウィルちゃんとクロノスくんもおんなじような反応でした。地味に傷つくんですけど……


「え、ええと、あれです! ほら、エスカレーター! あれ乗りましょう!」


 これ以上話を続けているとメンタルにダメージが行きそうだったので、話を変えさせていただきました。


 強引に話をそらし近づいて行ったエスカレーターですが、なんか普通に動いてます。よく考えると、まともに電気もないはずなのにエスカレーター動いてるって怖くないですか?


 初めてエスカレーターを見たウィルちゃんとクロノスくんのお二人は、ポカンとした顔でひたすら昇って行くステップを眺めてました。


「ホント、いったい動力源なんなんでしょうねぇ……やっぱり階段にします?」


「でも近くにないッスよ?」


 確かに、目視範囲に階段らしきものは存在しません。


「……とりあえず昇ってみましょう。私が先頭行くので、念のため手をつないでください」


 全員が了承するのを確認してから、順に手をつなぎます。私、クロノスくん、ルナちゃん、ウィルちゃんの順番です。


 恐る恐るステップに足を置くと、特に変わった様子もなく上へと昇って行きます。


 おかしなことはなにもないまま上へとたどり着いたはずなのですが、違和感がありました。


「なにか妙な気が……?」


「ミーシャ様、あしもとをみるであります!」


「足元?」


 クロノスくんに言われた通り足元を見てみますと、そこにはひらがなで『よんかい』と書かれていました。


「私たちが昇ったのは、どう多めに見積もっても二階分ですよね……? なのに四階に着くのは明らかに変です」


「あのあの、ここに地図っぽいのがあるですの」


「ウィルちゃんナイスです」


 そこには、このダンジョンのものと思しき地図がしっかりとありました。完全にデパートの案内板でしたが。


「ええと……私たちが入って来た入口が、本来正面入口だそうです。ですがここは西エスカレーター2になってます」


 エスカレーターが『えーすかれーるー』になってますが、たぶん合ってるかと。


 あちこち単語が間違っていて読みにくいところだらけでしたが、なんとか解読した結果、あることが判明しました。


「……どうやら、階段もエスカレーターもエレベーターも、全部見た目とは違う場所につながってるみたいです」


「それってあれッスか、異空間的な!?」


「そこまでではないですが……まあ、ワープみたいなもんです。第二世代の、エスパータイプジムの仕掛けが近いですかね。あれと違って、今来た道を戻ってもスタート地点とは全く別の場所へ飛ばされますが」


 あれは同じところを踏めば、ちゃんと同じところに飛びますからまだいいですが、これは完全にランダムのようです。階段やエスカレーターに『どこかいき』って書いてありますしね。


「うう、あたしパズルとかそういうんは苦手なんスよぉ……」


「大丈夫ですよルナちゃん。あなたには最初から謎解きなんて期待してないので」


「それはそれでひゃくぜんとしないッス!!」


「釈然ですよ」


 それはともかく。これでは完全に運任せで進むしかないようですね。


 エスカレーターを使ったことで到着したのは、四階とのことでした。案内板には、この場所は十階建てと書いてあったのですが。外から見た感じ、五階建てくらいだったんですよねここ。完全に時空めちゃくちゃですよねぇ……


 案内板によれば、ここは服飾品が売っているフロアだそうです。と言っても『そうびひん(ふく)』とか、『そうしょくひん』とかって書いてあっただけですが。


 危なくて店には入れませんので、なるべく離れて道を歩きます。


 歩き始めてすぐに、周りの店を見ていたルナちゃんが首をかしげだしました。


「センパイセンパイ、なんかこの辺の店変ッスよ?」


「そりゃあダンジョンですから、普通の店とは違うでしょう」


「そうじゃなくてッス。よーく見ると、値札ついてるんスよ、ここの物」


「値札ですか?」


 ルナちゃんに言われて一番近くにあった服屋を見てみると、『5000半』と書いてありました。


「円の記号を間違えたんだとしたら、これは五千円ってことなんでしょうが……」


 ナノさんたち、数字は普通に書けるんですね。


「そういえば、ミーシャ様言ってたですの。ここはお買い物をする場所って。なら、ここでお買い物するですの?」


「うーん、どうなんでしょう……? もしここが普通に買い物ができる施設だとしても、私たちは誰もこの世界のお金を持っていません。なので、買い物するのは難しいんじゃないですかね?」


 それに入った瞬間、服の形をした魔物に襲われても困りますし。


「一回入ってみればわかるッス!! お邪魔しますッス!!」


「え、ちょっルナちゃん!?」


 無警戒で店へと入ったルナちゃんを慌てて追いかけると、クルリとこちらを向いたマネキンと目が合いました。


 マズいです、まさかまた――

『イラッシャイマセ、ヨウコソオイデクダサイマシタ』


 出迎えたのは、そんな機械のような声とあからさまな営業スマイルでした。


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