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八十二話 紹介し忘れていた方々がいました 1

 お好み焼きパーティーが終わった翌日のこと。クロノスくんが住む洞窟の近くに、ルナちゃんは住んでるのですが。そこから起きて来たルナちゃんは、ぼんやりとした顔で目をこすっていました。


 おはようございます、と声をかけましたが、まだ寝ぼけているらしく視線が定まっていません。この子は朝弱いらしく、朝会う度にこうなんですよね。


「うぃー、センパイ、いつの間に二人になったんスかぁ……?」


「あの一応訊きますけど、別によっぱらってるわけじゃないんですよね?」


 セリフが寝ぼけていると言うよりも、よっぱらってる人っぽいです。どちらも思考能力が低下しているという意味では、同じようなものかもしれないですが。お酒飲んだことないので想像ですけどね。


「ミーシャ様の元いた世界では、みなこのような感じなのですか? なんと言いますか、眠りから覚めた直後は」


 フラフラしているルナちゃんを見ながら、シルフさんが不思議そうに首を傾げています。


「ええまあ、すぐに覚醒するのは割と難しいですね。私もここまでではないとは言え、寝起きはけっこうぼんやりしてますし」


 あれなんででしょうね? 私の場合肉体がないので、脳の働きは関係ないわけで。不思議です。


 そんなことを話していると、クロノスくんも起きて来ました。そうして近所に住むメンバーが揃った辺りで、私はふとあることを思い出しました。


「そう言えば、すぐに紹介できるのにまだルナちゃんに紹介してない方々がいらっしゃいましたね」


「? 他に連絡のつく精霊はいなかったと思いますが……」


 シルフさんがキョトンとしているところを見ると、本気で忘れてるんですねぇ……私も人のことを言えませんが。


「ああいえ、精霊さんではないんです。ただ紹介する前に……ルナちゃん、いい加減起きてください」


「あぅ……眠いんスよぉ……」


「えーと、こんなことを言うのもアレなんですけど、眠かったら別に寝ててもいいんですよ? と言うか、なんでそのレベルの寝ぼけっぷりで起きて来られるんですか?」


 今すぐ済ませなければいけない用事があるわけではないので、寝ていたかったら寝ててもいいんですよ。起きて来たから声をかけているだけで。


 するとルナちゃんは、目をほとんど閉じたままこてんと首を傾げました。


「んにゅ……そーいやなんであたし起きて来たんスかね……?」


「あ、自覚なかったんですね」


 ふむ、となると習慣でしょうか。


 太陽の位置から見て、今の時間はおおよそ午前七時だと思われます。学校に行くのだとしたら、だいたいこの時間に起きる人が多いでしょう。私は高校が徒歩五分でしたので、起きるのはほとんど八時でしたが。


「おそらくルナちゃんが学校に行くために起きていた時間が、今くらいなんでしょう。それで無意識のうちに起きて来たんだと思いますよ」


「なるほどッス……なんかそれくらい、だった気がする、ッスゥ、スゥ、スゥ……」


「後半寝息に変わってますね!?」


 朝弱すぎでしょう。もしやこの子低血圧……は、本来関係ないんでしたっけ。というか神獣なのにけっこう長時間睡眠時間必要ですよねこの子。まあ、五十年起きて五十年寝るサイクル私が言えた義理じゃないんですけど。


 どうしようかと思いましたが、特に害はないので一時間ほど放っておきました。


「と、言うわけであたし復活ッス!!」


「今度はずいぶんとハイテンションですねぇ……」


 テンションの落差激しいですよ、ホント。それともまともに起きてる時がここまでハイテンションだから、反動で寝起きがあんなにローテンションなんですかねぇ。


 それはさておき。ここでようやく、今紹介できる最後の方たちを紹介したいと思います。


「それでルナちゃん。今日は紹介しなくちゃいけない最後の方たちを、紹介したいと思います」


「了解ッス!! 今日はどこ行くんスか!? この前空の上行って砂漠行ったッスから、次は海ッスか!? それとも変化球で火山とかッスかね!?」


「全部違います。あと火山はこの世界中で見たことないですし、あったとしてもできれば行きたくない、と言うよりも近寄りたくないので却下ですね」


 火の山とか、もう語感だけでイヤです。なのでなくてよかったと、心から思いますよ、ええ。


「じゃあどこ行くッスか?」


「どこにも行きませんよ。ここにいますから」


「へっ? わざわざここに呼んだんスか?」


「いいえ、違います。元からいるんですよ」


 いよいよ頭の上にハテナマークを乱舞させ始めたルナちゃんとは対照的に、シルフさんとクロノスくんは紹介すべき相手がわかったようです。


「そうですね、うっかりしていました。いつもいるためか、逆に意識に引っかからず……」


「しょーせーも、あんまり話さないであります」


「私もそうですよ。存在そのものが特殊ですから」


「いったいどんな人なんスか!?」


 いい加減ルナちゃんが焦れ始めたので、そろそろ最後の方々を紹介しようと思います。


「本当にすみませんみなさん。こうしてお話するのは、久しぶりですね」


 ルナちゃんから見れば、私が突然虚空に向かって話しかけたように見えたでしょう。ルナちゃんがぽかーんと口を開く中、どこからともなく返答がありました。


『最近お話してくれないから、さびしかったのですー』


「本当に申し訳ないです、ナノさんたち」


「く、空気がしゃべったッス!?」


 紹介しなければならない最後の方々。ナノさんたちの存在を知ったルナちゃんが、辺りを見回しながらそんなことを言いました。


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