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八話 来ちゃいましたか……

「ミーシャ様!! 大変です!! 起きてください!!」


「んー、まだ眠いのですが……」


 微妙に寝足りない気がします。と言っても、一年ほどでしょうが。


 寝起きの頭ではわかりませんでしたが、目が覚めるに連れてどれほど大事なのか理解しました。シルフさんが寝ている私を起こすだなんて初めてで、相当な事態が起こっていると見て間違いないです。


「すみませんシルフさん。目が覚めました。いったい何が起こったのか、説明していただいてもいいですか?」


「そ、それが、ついさっき空に謎の物体が!! まさか、前にミーシャ様がおっしゃっていたUFOというやつでは!?」

「なんですって!?」


 大慌てで空を見上げると、そこにはとんでもないサイズの一隻の船が存在していました。未確認でしたので、UFOでも間違ってないのですが……なぜ、あんなものが空を?


 船は少しずつ動いており、少なくとも動力が積んであるのが覗えます。でなければ、魔法使いでも乗っているかですね。


「ミーシャ様、あれはなにかおわかりになりますか!?」


「船、ということはわかるのですが、それ以上は……」


 空飛ぶ船と言えば飛行船ですが。この時代の人間に、そんなものを作る技術はないでしょう。では誰が作ったか。


「ん? 待って下さい? 空飛ぶ船?」


 空飛ぶ船。まさかとは、本当にまさかとは思いますけどあの飛行物体。


「ノアの方舟ってことはないですよね……?」


 この話、しちゃった記憶があるんですよ。ナノさん達に。


 あの方々、どうも聞いた話を勝手に再構築して、現実に影響を与えちゃうみたいなんですよね……前のアダムとイヴもどきや、ダークウルフさん達の二足歩行化の件に関わってたみたいですし。


 どうしようかと思いながら空を見上げていると、予想外の展開が起きました。空飛ぶ船が、唐突に大量の水を降らせて来たのです。


「待ってください!? 洪水ってこんな起き方じゃなかった気がしますけど!?」


 そもそもの話、方舟って神様が洪水起こすよって予告してから起こってたはずです。それでノアさんが船作って逃げたって言う……ていうかそれ以前に、この世界的に神様私では!?


「やっぱりめちゃくちゃになってます……ナノさん達に悪気はないのでしょうけども……!!」


 ナノさん達ときたら、楽しいって理由でなにをしでかすかわかったものじゃありません。正直、真面目に困ります。しかも今、本人達の気配がないですし……!


 ナノさん達は気まぐれで、どこにでも存在していますが意思の疎通ができるかどうかは向こうの気分次第なのです。しかも意思の疎通が可能であったとしても、すでに起こってしまった出来事をなかったことにすることはできないみたいなんですよね。


 シルフさんもその事実を知っているので、大慌てで私を起こしたのでしょう。元が同じでもすでにナノさん達とシルフさんは違う存在なので、どうにもできなかったようです。


「ど、どうしましょうミーシャ様!! このままでは、この世界すべてが危険、いえ、ミーシャ様が一番危険です!!」


「ですよね、私動けませんから。……とりあえずシルフさん。まずはウンディーネさんと連絡を取ってください。この水の制御が可能かどうか」


「承りました!! ……ダメです、制御不能だそうです!!」


「連絡早いですね!?」


 シルフさんの説明によると、精霊間には特殊な魔力のラインが通っているので、一瞬で意思の疎通ができるのだとか。向こうが応じるかどうかは、相手の気分によるそうですが。便利ですね。


 水の制御ができないとなると、他にできることは限られて来ます。


 あまり気は進みませんが、炎の魔法で蒸発させましょうか。いえ、それはムリですね。それをすると、どっちみち辺り一帯灰になって全滅ですから。シルフさんに吹き飛ばしてもらう……のも、この規模では難しいでしょうね。


「仕方ありません」


「み、ミーシャ様……?」


 私の様子に何かただならぬものを感じたのか、シルフさんが不安そうにこちらを見つめて来ます。そこまで心配しなくても問題ないんですけどね。


「大丈夫ですよ、シルフさん。そこまではっちゃけたことはしません。ていうかできません。私の本体は、動けないですから」


 人間化できたら話は別なのですが……そうも言っていられません。私、一応とはいえ、この世界では神様みたいなポジションですからね。世界樹ですが。


「詠唱は……まあ、いらないですか」


 そんなものは私が適当に考えたものなので、あろうがなかろうが何も問題なく魔法は発動します。


「水よ、私の呼び声に応えなさい」


 ピタッ。そんな音がしそうなほど、キレイに水は動きを止めました。


「水よ。あなた達は、元いた場所に帰りなさい。その時、何ひとつ傷つけてはいけませんよ」


 次の瞬間。ものすごい勢いで、降っていた水はすべて船に向かって行きました。地面に降って土に染み込んだ水すらも、全部浮いて戻って行きます。


 水が降り始めてから、およそ十分の出来事でした。世界が海に沈みそうなほど大量の水は、数秒と経たずに一滴残らず船へと帰りました。


「船も水も、消えてください。何ひとつ傷つけることなく、跡形もなくですよ」


 そう声をかけられるのを待っていたかのように、船も中に戻ったはずの水も、キレイさっぱり消滅しました。今まで水があったと思えるものは、空にかかった美しい虹だけです。


「そう言えば、もう洪水を起こさない誓いを立てた神様は、空に虹をかけたんでしたっけ」


 ということは、これでミッションコンプリートですかね。


「さ、さすがはミーシャ様!! お見事でした!!」


『ミーシャ様、すごいすごい超すごーい!!』


「まあ、これは私のせいみたいなものですからね……」


 これでどうにか、ノアの方舟の危機を回避できたみたいです。ていうか、いつの間にナノさん達いたんでしょう。こちらから呼びかけても答えないのに、気づけばいるんですからもう……


 でも、本当によかったです。世界が水の底に沈まなくて。


 とりあえず、まだ世界は滅ばないみたいです。


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