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七十六話 とりあえず、料理の方をなんとかしましょう

 泉でけっこうな問題があったのでうっかり忘れかけていましたが、そもそも今回は料理の材料を探しにあそこまで行ったわけで。なので材料を集めるわけですが、やっぱりこの他にもなにか欲しいですよね。


 マナのカタマリにつきましては、ウンディーネさんと相談した結果とりあえずは泉の近くに封印することになりました。ムダに動かすのも危険だったのでそんな措置になったのですが、あまり放置してしまうと今度はまた泉で問題が起こってしまうわけです。


 それはさすがにまずいので、早急に――具体的には三日以内くらいにあれの処遇を決めたいところです。ウンディーネさんに悪いですし、今も余計な心配かけてしまいましたしね。なんでしたら、あとで出来た料理を持って行きましょう。実体化すれば食べられますから。


 話し合った結果、私の本体である世界樹の周りにある植物を数種類採取することになりました。食べられるかどうかは誰もわからなかったので、とりあえず全部持って行ってピィアさんに判定してもらうことになったのです。


 あの人――人じゃないですが、ピィアさんは唯一普通の生物なので、毒持ちかどうかの判断が最も向いているのです。その辺の知識がないと、食事できませんからね。


 こうして探してみて気づきましたが、私の周りってムダに色んな種類の植物があるんですね。見たことのないものも大量にあり、確実に地球とは違う植物なので判別に困りました。よくわからないキノコも混ざってますし。


 にしても、ルナちゃんがものすごく推すので持って行くことになりましたけど、この赤地に白の斑点があるキノコってあれですよね……


「食べたら残機が増えそうじゃないッスか!?」


 ってハイテンションで押し切られましたけど、これパッと見毒キノコなんですよね。形はベニテングダケっぽいですし。あとはドクツルタケっぽいやつなどもあって、採取しない方がいいかもとは思ったんですけど……まあ食べられないなら捨てればいいだけなので、結局持って来てしまいました。


 今の季節は地球なら春なのか、桜っぽい樹もありました。とは言うものの、フィーマさんちの庭にあるやつは咲く季節が違ったので、これもそうな可能性高いんですけどね。どうしても桜を見ると、春って気がするんですよ。元日本人だから仕方ないです。


 そんな感じで相当量の食料になりそうなものを採取しあの亜空間キッチンへ行きますと、そこではすでにシルフさんたち三人が待機していました。ただ、なぜかシェイドさんがぐったりしてるような……?


「あのなにかあったんですか?」


 まずはシルフさんに話を聞いてみますと、胸を張って堂々と言われました。


「いえ、なにも! わたくしが知る限り食すことのできるものを持って来ただけで、特別なことなどしておりません。あの二人、ピィアも特に問題は起こしませんでしたし、平和なものでした」


「そうでしたか、ありがとうございます」


 でも本当になにもなかったら、こんなにシェイドさんがぐったりする理由がないんですよね……


 次に話を聞くのは、ぐったりはしていませんが微妙に不満げな顔のピィアさんです。


「そちらは、なにか変わったことなかったですか?」


「なにもなかったのだがの。あの風の精霊め、ことあるごとにわらわとシェイドさんの仲を引き裂きおって……わらわ、あやつがキライじゃ」


 あらまぁ……そんなことになってましたか。でも逆に考えれば、ピィアさんの暴走を未然に防いだわけですから、ミッションは成功してることになります。


 さて、最後はシェイドさんですが……


「シェイドさん、なにか変わったことってありましたか?」


「いえ、その……変わったことと言いますか……」


 とても言いにくそうに声のトーンを落とすシェイドさんを見れば、なにかがあったというのは一目瞭然です。


 ちょっとだけシェイドさんの方へ寄りますと、声をひそめたシェイドさんが言ったのは、こんなことでした。


「その、シルフがピィアさんの過剰な接触を防いでくれたことそのものは、大変ありがたいことでした。けれども、その行い自体が過剰で……はりきり過ぎたのか、ピィアさんが私の半径一メートル以内に近づく度に説教をしまして……ついでなのかなんなのか、私にもよくわからない方向からダメ出しがありまして」


 そ、それでこんなにぐったりしてるんですね……なるほど、原因はシルフさんのはりきりすぎですか。心配していたことが実際に起こってしまったわけではあります。が、さほど大事にならなかったのでよかったです。いやほんとに。


 最悪、シルフさんとピィアさんでガチゲンカに発展していてもおかしくなかったですからね。それくらいで済んだのでしたら、シェイドさんには悪いですが合格でしょう。


 昔からシルフさんは、はりきりすぎて空回るタイプと言いますか、やる気が周りに多大な被害を及ぼしかねない子ですから。一応、致命的な問題にはなっていないのでその辺はわきまえてるのでしょう。というかそう信じたいです。


 まあでも、これで料理ができるくらいには材料が集まったわけです。


「あの、ピィアさん。一応材料は集めてみたのですが、この中で食べられないものってあります?」


「ふむ? うぅむ……これとこれは、食べたら死ぬぞ。こっちは死にはせんが、顔が十倍くらいに腫れ上がるやつであるな。あとは……あ、これはいいやつだぞ。食べたあと、すごく惚れっぽくなるやつなのだ、というわけで少しもらって――」

「いやなにしれっと持って行こうとしてるんですかダメですよ」


 まさか惚れ薬の材料混ざっていたとは……そんなものあるんですね。


 ピィアさんが惚れ薬の材料だと言ったのは、白とピンク色をしたかわいらしい、しま模様のアサガオに似た花です。間違って食べたりしないよう、注意しないと。うっかりルナちゃんが食べかねませんから。


 惚れ薬製作を止められたピィアさんは不満そうでしたが、なにはともあれこれで食べられないものは取り除かれました。


「さて、ようやく料理ができます」


 材料はそろいましたが、大きな問題があるんですよ。


 私って実体ないんですけど、どうやって料理したらいいんでしょうね?


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