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五話 伝言ゲームあるあるかと

「いつの間にか、すごく生物増えてますねぇ……」


 ナノさん達が生まれ、精霊さん達が生まれ。それから私がしばらく寝ている間に、世界は賑やかになっていました。


 私の足元は、いつのまにか底が透けて見えるほど透明度の高い、美しい泉に。その周りには樹々が生え、森になっていました。そしてそこかしこにいるのは、ただの動物とは言い難い容姿の、たくさんの動物達。


「動物というか、魔物ですかね? 角とか生えてますし」


『まものー?』


「ええと、魔法を使える強い動物のことです。その気になれば、食べられるかと。なんなら、食べてみます?」


「さすがミーシャ様、お詳しいですね! ですが申し訳ございません。我々には通常実体がありませんので、活動に必要なエネルギーは生命力(マナ)を直接摂取することでまかなっております。ですので、食事はいらないのです」


 なるほど、そういう理由ですか。私が水も何もない空間にいても枯れたりしなかったのは、マナのおかげなのですね。


 気づけば、シルフさんだけ居着いています。他の方々は、一度姿を見せた後は割と行方不明なのですが。

 ちなみに、他の方にもそれぞれウンディーネ、ノーム、ドリアード、フラウ、ヴォルト、シェイド、ウィルの名を進呈しました。思いっきりゲームまんまです。だって、見た目もほぼそんな感じなんですもん。百パー私の影響ですね。


「シルフさん、私の寝ている間に、何か変わったことは?」


「そうですね、月が昇りました!!」


「いえそうではなく……ん?」


 よくよく考えれば、私は一度も月の姿を拝んでいません。もしかすると、最近できたんですかね? なら、この報告は正解と言うことになります。


「わかりました。他には何かありましたか?」


「他、ですか……あ、何か得体の知れない生物が、土くれからムクムクと湧き出て来ました」


 そう言ってシルフさんが指さしたのは、私を中心とした森の外れ。


「って、人間が生まれてますよ!?」


 人間。どっからどう見ても人間です。ただし裸。男の人と女の人が一人ずついて、何やら仲よさげです。


「でも二人だけですか……原始人から進化する感じではないのですね」


『原始人ー?』


「サルの進化系だと思っていただければいいです。二足歩行をして、道具を使ったりするんですよ」


『どーぶつ、すごーい!! 二本足で歩くー!!』


「なんと、サルにはそんな特技が!?」


「ええと、この世界においてはたぶん違うかと……」


 シルフさんの話によれば、突然土から生まれたとのこと。つまりあれですね、聖書のようにアダムとイヴが生まれたわけです。聖書詳しくは知りませんので実は全然違う生まれ方かもですが。


 この先ノアの方舟とか来るんですかね? でもさすがにそれは……と言うかその場合、樹齢二千年近いうえに雲に届きそうな全長の私は、ここに置いてきぼりくらいますよね。それは困ります。


「この後、あれはどうなるのでしょう?」


「あれって……人間、と言うのですよ」


「人間、ですか」


「はい。人間の今後、でしたね。今後は……まあこの世界を覆い尽くすくらい、増えるんじゃないですかね」


 そんなことを私達が話している間に、二人は何やらヘビと話して――って、これは止めるべきやつですか!?

 確かヘビにそそのかされて知恵の実を食べてしまった人間は、羞恥心を覚えるんじゃなかったでしたっけ。あれ? これは止めた方がいいんでしたっけ、放置のがいいんでしたっけ?


 うろ覚えの知識を引っ張り出しながら、注意深く観察を続行です。ついでに魔法を使って、会話も聞いてみましょう。


「――や、やめてください、僕は食べても美味しくないですよ?」


「ウソつくんじゃねえよ、そんな美味そうな見た目しやがって!!」


「ねーこいつ焼いたら美味いんじゃね?」


 聞こえて来たのは、そんな会話。なんかおかしくないですか? えと、ヘビ食べられかけてますけど……


「待つんだそこの二人!!」


 そんなことを叫びながら登場したのは、なんでしょう。マントっぽく葉っぱをまとった男……もしかして、ヒーローのつもりとかでしょうか? ていうか他に人いたんですね。


「ヘビをいじめてはいけない!! その子は森へ帰すんだ!!」


「はあ? 何言ってんのこいつ、マジキモくね? つーかその羽織ってるヒラヒラ何?」


「よし、引っぺがしてやろうぜ」


「え、ちょっ、やめ、これはせっかく拾ったいい感じの葉っぱなのに、ちょおっ!?」


 あっという間に葉っぱマントのヒーローもどきさんは、唯一の衣服をひんむかれどこかへ追いやられてしまいました。ヘビはその隙をつき逃亡に成功しているので、一応ヒーローもどきさんの目論見は成功してる……んでしょうかねこれ。


「……なんか、すごいものを見ちゃいました」


 最終的に、一組の男女は色々言いながら、葉っぱマントを服にしてました。どうも気に入ったみたいです。


『ミーシャ様のお話どーり!! たのしー!!』


 ナノさん達の喜びようからして、やはり無関係ではないようです。ナノさん達には、現実に干渉する能力とかあるんでしょう。それを知らずに話してしまった、私の責任ですよね、これ……


「あれです、たぶん私が話したことがごっちゃになっちゃったんでしょうね……。ナノさん達、寸劇とか大好きですし」


 聖書と浦島太郎と、何か戦隊モノと――なんでしょう、オヤジ狩りの話とかですかね?


「なんか申し訳ないです……」


「どうしました、ミーシャ様?」


「いえ、ちょっと反省してるだけなので、気にしないでください……」


「完璧なミーシャ様に、反省するところなんてあるわけがございません!!」


「あはは……」


 どうも私、世界創造をミスったみたいです……気づけば神扱いですし、もう少し言動には気を付けましょう。

 私、たぶん世界樹に転生したのでしょうね。ただの樹じゃなかったわけです。超今更ですが。


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