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四百七十話 こんなところにあるとは思っていませんでした

 私が読んだ中では、即座になにかが起こるようなものは発見できませんでした。さすがに全部読めませんしここの他にもある可能性は高いので、とりあえずは安心ってことにしておくしかないでしょう。


 それにしても、ナノさんたちから直接話を聞けるほど魔法が得意な方ってどんな方でしょうね? これだけの種類の魔法を使えると言うことは、相当魔法に精通しています。大佐レベルとは行かないでしょうが、それに近いものがあるでしょう。


 ……どうも魔法関連のことはあの人を基準に考えている気がします。なんでしょう、この若干釈然としない気持ちは。大佐が悪いわけではない……いえ過去の大佐が悪いですね、今はともかく。つまり大佐のせい。


 今頃大佐くしゃみとかしていそうだなーとか考えていると、突然後ろからブツブツとつぶやく声が聞こえて来たではありませんか。


「むぅ、どうしたら……おっきい声ダメだし……るーちゃんも静かにって言ってた……」


 振り返ると、なぜか難しい顔で頭を抱えるミツカミさんの姿がありました。バランス感覚が優れているのか、はたまたなにかのセーフティのおかげか、かなり不安定な体勢であるにもかかわらずひっくり返る様子が全くありません。


「どうしたんですか、そんなところで唸って。わからない字でもありました?」


 そう声をかけると、ミツカミさんはどこか嬉しそうな顔でこっちを見ました。


「よかった、みーちゃん気付いた。ここ、おっきい声ダメだってるーちゃんが言ってたから、どうやって話しかけるか悩んでたの。これ乗ってると、手、届かないし」


 そう言って、不満そうに浮遊板を指さしました。どうやら浮遊板に乗っていると、安全上の問題かピッタリ横づけができないらしく一マス分離れた位置までしか近づけないようです。そのため私に触れることもできず、かと言ってここでは大声を出してはいけないとルナちゃんに言い含められていたので声もかけられなかった、ということのようですね。


 あれですかね、これに乗って遊んで落ちたりしないようにでしょうかね。あとはイタズラされたり、場合によっては突き落とされたりしないようにとか。双方の合意があればくっつけることも可能なのですが、今回は私が気付いていなかったので近づけなかったみたいです。


「すみません、気付かなくて」


「んーん、大丈夫。これでお話できる」


 そう言って、ミツカミさんは浮遊板に乗ったまま真横までやって来ました。ノロノロした動きがまどろっこしいのか、ちょっぴり口を尖らせています。飛んだ方が早いと思っていそうですし、実際その通りでしょう。不満そうながらも隣に来たミツカミさんのその手には、十数ページしかなさそうな真新しい薄い本がありました。


「写本したい本が見つかったんですか?」


 なんの本なのか気になってそう訊いてみたのですが、ミツカミさんはふるふると首を横に振って手に持っていた本を渡して来ました。


「ん-とね、るーちゃんよりみーちゃんの方が近くにいたから来たんだけど……みーちゃんたちが探してるの、これかなーって思ったから」


 微妙に要領を得ないミツカミさんの言葉に首を傾げつつ、渡された本を見てみました。えーと、タイトルは『物体X観察日記』……物体Xて。わかるのは、なにかの観察した日記である、ということだけです。いやまあまんまですね。それから著者は……『カイーラ』って、またあなたですか!! それとも名前だけ同じ人なんですか!? 苗字書いてないですし!!


 全力でツッコミたい気持ちをグッと堪え、表紙をめくります。前書きもなにもなく、いきなり観察日記らしき文章から始まっていました。


『七月十日。近所の森で、謎の物体を見つける。半透明の物体なのだが、今が真っ昼間であるせいかほとんど見えない。なんとなく、人のような気はする。』


『七月十五日。今度は夕暮れ時に謎の物体を発見。面白そうなので前回見つけた日の日記をこっちに書き写し、そこからスタートとしよう。やはりこういうものは、発見したところからにすべきだからな』


『七月十六日。二日連続で謎の物体を目撃。以後、物体Xと呼称しよう。物体Xは、大きさ一メートル半に満たない細長い物体である。半透明で向こうが透けており、時折声を発しているように思う』


『七月二十日。今日は物体Xに目があることを発見する。なにせ、目が合ったのだ。ただ物体Xは人見知りをするのか、目が合った途端に姿を眩ませてしまった。せっかく面白そうなものを見つけたのに、残念だ』


『七月二十一日。今日も物体Xを発見。昨日目が合ったことを向こうも気にしていたのか、物陰からこちらを窺っているのを感じる。目が合うとまた逃げ出してしまうかもしれないので、慎重に気付かないフリを慣行。なんだか、ノラネコでも相手にしている気分だ』


『七月二十二日。三日連続でいるのは、やはり向こうも気にしているのだろう。というか今思ったのだが、大きさといい雰囲気といい、あれってもしや子供の幽霊じゃ? いやいやまさかそんな、幽霊なんて……幽霊はほら、祟るって言うじゃん? 祟って来ないからあれは違う。あれはそう、幽霊ではなく物体Xだから!! 違うやつだから!!』


 日記なのに誰に言い訳しているんだというツッコミもあるのですが、それよりも。


「子供の、幽霊……」


 これはもしや、未だ見つかっていない詠乃介くんのことなのではないでしょうか?


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