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三百九十一話 ドワーフの結論が出ました

 フィーマさんたちに連絡を取った結果、向こうはもし輸入の話があっても問題ないそうです。ただ、忙しいので話し合いができるまでに最短で一週間かかるとか。フィーマさん、本当に忙しそうですからね……真面目な方ですから、ストレスため込んでないといいのですが。


 向こうはこれでいいとして、問題はドワーフたちですね。今ガドラスさんたちが他の方、主に長であるドギスさんと話し合いをするために洞くつに戻って行きました。どれくらいかかるかわかりませんが、私が行くと強制みたいになっちゃうので外で待つことに。


 話の内容を考えると、けっこうかかりそうですよねぇ。エルフと仲は悪くないですが、これまで没交渉でしたし。確か、フィーマさんがエルフになりたてくらいの頃デートに行ったくらいですかね。でもあの時出迎えてくれたマディルさんは今国にいませんから、直接の知り合いがゼロかもしれません。


 なんとか穏便に話がまとまってくれることを祈るしかありませんが……どうしましょう、そんなの面倒だとか言い出されたら。この世界だとエルフとドワーフの仲は悪くないですが、それは交流していないだけかもですし……


 とか思っていると。いなくなってからものの十分くらいでガドラスさんが単身私たちの元へ戻って来ました。若干困った顔をしているように見えますが、いつもあんな感じと言えばそうなので話し合いの結果がどうなったのかが読めません。というか、話し合って来たにしてはいなくなってた時間短くないですか?


「あの、ずいぶん早いですがなにか問題があったとかでしょうか?」


 不安に思いながら訊いてみると、ガドラスさんは言いにくそうに頭を掻いていました。


「いえ、その……即答でそうしよう、という話になりまして……」


「え? 即答だったんですか?」


「即答と言うか、『ああ、まあいいんじゃないか? たまには違う素材で作るのも、面白ものができるかもしれないし。代価がマジックアイテムでいいなら倉庫の没製品適当にもってけ。いくらでもあるぞ』とのことで……」


「よ、予想外に適当ですね……いいんですかそれで?」


「いいらしいです。基本的に、そこにある素材の良し悪しは執拗に気にしますが、わざわざ遠くまで行って更にいいものを探そうとは思わない同胞が多くて……そのせいで近くのものを使ってましたが、別に誰かがやってくれるならどこの素材でもいいそうです。それはそれでなにかはできるので」


 大雑把にもほどがあるのでは……? というか他人任せな人多いですね……ドワーフ、自由人多すぎるでしょう。そういえば、新しい素材の研究とかをやってる人もほぼいないんでしたっけ。世界中飛び回ってるマディルさんか、目の前にいるガドラスさんくらいしか聞いたことありません。


「そういやガルさんどしたッスか?」


 それまで退屈だけど退屈とは言いにくいみたいな顔で話を聞いていたルナちゃんが、ガドラスさんの後ろを見ながら訊いて来ました。それは私も気になってましたから、いい質問だと思います。


「そ、その……あいつは自分の補佐ってことになったので、倉庫からある程度の性能があって他の種族でも使えるものを選別してくれています。ちなみに自分は交渉を丸投げされました……長は今、増えすぎた道の整理やら無限に増築されていく公園の遊具をどうするかなんかで忙しいとかで……」


 疲れた様子で言うガドラスさんには同情を禁じえませんが、他に適任がいないと言われればそれまでなんですよね……ガドラスさん、苦労人気質なのでしょう。それに、ドギスさんはドギスさんで別方向で苦労してるようですし……あれですね、どこの世界でも真面目で律義な人が一番大変なんですよね。


 ガドラスさんには申し訳ないことになりましたが、とりあえず森の消滅は免れそうです。それを伝えると、ヴェルグアくんはホッと息を吐いていました。


『ありがとうございます、ミーシャ様。それから、ええと、おヒゲの……ガドラスさん、にお礼を言っておいてほしいです』


「ええ、わかりました」


『これでぼく、消えないで済みそうで……良かった、です。皆さん、本当にありがとうございました』


 そう言って頭を下げると、ヴェルグアくんはふっと姿を消しました。姿は見えなくなりましたが辺りからうっすら気配が漂って来るので、消滅したのではなく姿を見せているのに疲れたのかもしれません。ただでさえ力が弱くなっていますから、長時間姿を見せるだけでも大変だったことでしょう。


「べーくん、もう出て来ない?」


 ヴェルグアくんが姿を消してしまったのを、友達になると張り切っていたミツカミさんが残念そうにしていました。


「大丈夫ですよ。この森にもっと木が増えてヴェルグアくんの力が強くなれば、また出て来てくれます」


「ホント? じゃあその時こそ、ちゃんとお友達になる! お友達は多い方がいい!!」


「そッスよね! あたしも友達になるッスよ!!」


 この様子ならまた私が寝る時になっても、二人が気にかけておいてくれるでしょう。起きたばかりなのでまだ先の話ですけどね。


 その後エルフとドワーフの話し合いは順調に進み、木材の輸入は決定したのでした。今はまだ共通の通貨がないので、物々交換になりますが。この辺は問題が起きるかもしれないので、しばらく気にした方がいいでしょう。


 さて、詠乃介くんの件については今回空振りでしたから、また情報を集めるところから始めなくてはいけませんね。早く見つかるといいのですが。


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