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三百八十四話 想定外でした

 一分ほどでマソオさんの再起動が完了しました。


「あ、あの、その、この間は色々と申し訳ないことを……」


 前回会った時のルナちゃんへの態度を思い出したのか、慌てた様子でマソオさんが頭を下げていました。


「別に問題ないッス!! あ、いやでも食べるのは勘弁してほしいッス」


「たたた、食べませんよ!? いやその、少しはおいしそうだなとか思わなかったわけでもないのですが……」


「まーちゃん、焼き鳥が好きって言ってたよねー」


「その情報は今余計だよみっつー!?」


「え、だって生だと羽がジャマだからって……」

「お願いだから空気読んで!!」


 マソオさんに必死に言われ、ミツカミさんはどこか納得できない表情を浮かべていましたがおいしそうの件については言うのをやめました。代わりに、

「前にもそれ言われた……空気、なにも書いてないから読むとかムリなのに……」

とぼやいていましたけど。


 空気を読む読まないに関しては、私でも難しい時ありますからあまり強くは言えません。しかも、一番近くにいるルナちゃんが空気読めるとは言い難いですからね……最近はずいぶんとマシになりましたけれど。


「それでその、この度はなぜこちらに……?」


 ミツカミさんが黙ったのを見計らってそう訊かれ、なんと答えるか返答に困りました。正直に答えるのであれば、もふもふがたくさんいるという餌に釣られたからになるのですが……流石にそれをご本人に直接言えません。


 そう思っていたところに、本人に自覚はないでしょうが助け舟がありました。


「るーちゃんが寄り道しようって話して、近いから来たの!」


「近いって言ってもセンパイならッスけどねー。飛んだら微妙に遠いッス」


「……つまり、遊びに来たってことでいいのみっつー?」


「そう!!」


 ミツカミさんに元気よく肯定され、マソオさんはわかりやすくホッとしていました。なにか事件でもあったのかと心配していたのでしょう。ミツカミさんの態度では、なにがあったか測りづらいでしょうし。


「えっとあの、なんのおもてなしもできませんが……」


「ああいえ、大丈夫です。突然来てしまったわけですし。そうだ、一つ訊いてもいいでしょうか?」


 せっかくですし、マソオさんにも訊いておきましょう。もしかしたら、なにか知ってるかもしれませんし。


「はい、わたしの答えられることでよければ……」


「最近、幽霊の男の子とか見かけなかったでしょうか? もしくは、幽霊がらみの事件があったなんて話を聞いたとか……」


「幽霊ですか……」


 うーんと悩むように首を傾げるその姿はとても愛らしく、普通の猫であれば速攻で撫でていたことでしょう。いえ、撫でまわしていたことでしょう。こんな礼儀正しい方にそんなことは申し訳なくてできませんから、ガマンしますが……ガマン……もうもふもふとか関係なく猫が撫でられるならそれでも……膝の上に乗せて縁側で日向ぼっことかしたいです……


「すみません、心当たりなくて……」


 理性が負ける前にしょんぼりとした声に現実に戻されました。よかった、うっかり撫でまわそうとしなくて本当に。


「そんなに気になさらなくて大丈夫ですよ。手がかりゼロで探そうって方が無謀なんですから」


「ですが、女神様が自ら探されるとなればよほどのことでは……」


「そんなたいそうなもんじゃないですから、私自体。たまたま管理人っぽいことやってるだけで、名ばかりですよ」


 管理人っぽいこともあんましてないかもしれません。最初に魔法作ったので、その功績がどうとか言われるなら多少わかりますが。それにしたって理由は暇つぶしですし、試し打ちでバカでかい湖とか谷とか、逆に山作ったりしちゃってますからね。生物がいる時だったら大虐殺ですよ。いたらあんなことしませんでしたが。


「ミーシャ様、名ばかりなどとそんなことはございません! わたくしたち精霊が生まれたのは、ミーシャ様のおかげではありませんか!!」


 と、そこでシルフさんに力強く言われましたが……いや、それもそれで偶然なのであいさつに困るんですよね……


「そうであります!! 世界中にマナが循環してるのも、ミーシャ様のおかげでありますし!!」


 それは私の意識が介在しているわけでは……


「大丈夫ッス、あっちこっちで人助けまくってるセンパイはちゃんと神してるッス!!」


「ちょ、ルナちゃんまでそんなこと……別に助けまくってるわけでは……」


「みーちゃん、大ゲンカ止めた!! あれ神様しかできないってみんな言ってたからちゃんと神様!!」


「よし、わかりました。わかりましたからそれ以上はやめましょう恥ずかしいので……!!」


 自分の意識とは無関係なこととか、成り行きでやったこととか個人的な好き嫌いで動いた結果を褒められても困ります!! こう、なんか背中がかゆくなりますから!!


 なんだかいたたまれなくなった結果、つい私はその場を逃げ出してしまいました。


「えー、そう、あれです!! もしなにか変わったことあったら教えてください!! じゃあ今日は帰りましょう!! それじゃまた!!」


「え、あ、わかりました、他の猫又やまだ猫又になってない子たちにも伝えておきます!」


 後ろでそんな声が聞こえましたが、おざなりに手を振ってその場を離れました。いや、もうホント勘弁してください。シルフさんだけなら慣れましたが他の方にまで言われると困りますから! 褒められ慣れてない以前に、自分の功績扱いなのが疑問の残るものばかりですから!!


 そのままの勢いで本当に帰ってしまったので、後日会うことがあれば絶対に謝ろうと誓ったのでした。友だちにせっかく会ったのに早々に強制送還になってしまったので、ミツカミさんにも謝らないとですね……

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