三十四話 レッツ、パジャマパーティーです!
私が村でひと悶着起こしてしまったせいで、フィーマさんは帰りづらくなってしまいました。今帰ると、面倒なことに巻き込まれること請け合いです。それでどうしようかという話になったのですが、なぜかパジャマパーティーが開催される運びとなりました。
要するに村に帰れず行く当てのないフィーマさんの本日の宿に心当たりがなかったため、急きょ私が魔法で簡易ハウスを作り、そこで寝ることになったのです。そして私たっての希望で、パジャマパーティーになった、というわけでして。
一回でいいから、やってみたかったんですよねパジャマパーティー。これまで友達のいなかった私には、そんなイベントやったことなかったわけです。と言うか、まともに家の外に泊まった記憶すらないですね。
小中の修学旅行は『そんなことしてないで勉強しろ!』ってことで強制不参加でしたし、高校の修学旅行はまだでした。林間学校なんかも同じ理由で休みでしたので、友達とこうして夜を過ごすのは初めてです。
まあ笑えるのは、そこまで勉強漬けの日々を送っていたにも関わらず、成績は全国平均で中の上程度だったところですかね。勉強キライなので、ほぼやってるフリだったせいですが。
「み、ミーシャ様、この布の家はいったいなんなのですか? わたし、初めて見ました」
簡易ハウス――というか大きめのテントですが、それを見たフィーマさんは興味津々でそう尋ねて来ました。
「これはテントと言いまして、布製の簡単な家です。キャンプ――ええと、一泊とか短い期間泊まる場合に使用するものですね」
本当はログハウスくらい建ててもよかったのですが、それでは雰囲気が出ませんし、材料がムダになってしまいます。これなら適当に後で服にでもしてもらえますので、なにかと都合がよかったのです。
「さすがはミーシャ様、このようなものを思いつくとは!」
「いえ別に私が考案したわけではないので……」
普通に昔の地球人です。ここまで感心されると、普通に困りますね。
「とにかくあれです。三人寝るには、ちょうどいいと思いますよ」
厳密に言うと私とシルフさんは中にいるだけで眠らないのですが、そこは気分を味わうのが目的なのでスルーの方向で。
そんなわけで、私達はさっそくパジャマに着替えることにしました。まだ夕方ですが、この世界はまだ街灯の類がないので陽が落ちると真っ暗になってしまいます。ですので、早めに床に就くのです。
ちなみにフィーマさんの晩御飯は、自力で狩ったものだったみたいです。
「あの、パジャマとは寝間着のことだと伺いましたが、このような感じでよろしいのでしょうか?」
不安そうに声をかけて来たのは、かわいらしいもふもふの着ぐるみパジャマを着たシルフさんです。
「グッジョブですよシルフさん!」
パジャマのチョイスはシルフさん本人に任せましたが、まさかこう来るとは……! そう言えば前に、着ぐるみパジャマを詳しく説明したことがありました。覚えていたんですね。
シルフさんが着ている着ぐるみパジャマは、薄茶色の柴犬をモチーフにしたものでした。フードまで被っているので、三角の耳がぴこんと立っていてとてもかわいいです。
シルフさんの場合、正確に言えば着替えたのではなく『服そのものを変化させた』のでしょう。その方が手っ取り早いですから。現時点で、実体化してないようですし。
「シルフさんあの、撫でてもいいですかね?」
「ど、どうぞ心行くまで!!」
今にもしっぽを振りそうな――って、実際振ってました。着ぐるみパジャマについた柴犬のしっぽが、本当にパタパタしてましたよ。芸が細かいですね……
「では失礼して」
ワクワクしながら着ぐるみパジャマの頭を撫でると、なんとも言えないもふもふ感が……!! 本物の柴犬とは違うもふもふ加減ですが、パジャマだと考えれば上等ですよ!! 久しぶりにノームちゃん以外もふれましたよ……
そうやってしばらくシルフさんの頭を撫でていると、着替えを終えたのかフィーマさんがこちらへやって来ました。
「あ、あの、ぱじゃま、とはこういうものなのでしょうか……?」
そう言うフィーマさんが着ていたのは、私が魔法で出したネグリジェでした。ヒラヒラはしていますが全体的にシンプルなデザインで、色は淡いグリーン。細身で背が高めなフィーマさんには、よく似合ってました。
「ええバッチリですよ!」
フィーマさんはパジャマに該当するものを持っておらず、たいていは着古した服を着るか着替えないで寝ていたそうです。まあ、時代が時代なので仕方ないですね。
「な、なんだかスースーするのですが……」
「似合っているので問題ないです。って、もしかして寒いですか? すみません、肉体がないので今の気温がわからなくて……」
地球でしたら動植物の様子から察することもまだ可能でしょうが、よく考えるとこの世界も同じように季節で変化するとは限りません。魔物の毛が薄くなっていたのと樹々の緑が濃くなっていたので、てっきり今は初夏くらいだと思っていたのですが……
「いえ寒くはないんです!! 外はもう暑いですしそれはいいのですが、こんな格好は初めてなので……」
恥ずかしいのかもじもじしていますけど、とても似合ってるのでいいと思うんですけどねぇ。
「それであの、ミーシャ様。このような格好でなにをするのですか?」
「普通は恋バナをするらしいですが……」
「「コイバナ?」」
「まあ、そういう反応になりますよねぇ……」
この二人に恋バナとか、想像できませんもの。
念のために恋バナとはなにかを説明をしてみたところ、一瞬だけピクリとフィーマさんが反応を示したのを、私は見逃しませんでした。
「フィーマさん、まさか……」
「い、いえ違います誰もいません、気になる人とかええ、一切!!」
あからさま過ぎるその反応に、私とシルフさんは顔を見合わせました。そしてニヤリと微笑み合います。
「フィーマさん、ぜひそこkwsk、じゃなくて詳しくです!」
「自分も聞きたいぞ、誰のことが気になってるんだ!?」
「だ、誰も気になってなんていないのでありますよ! べべっ、別にガノのことなんてみじんも、」
「「ガノって!?」」
「が、ガノはただの知人で、たまたま会話が成り立つと言うか、わたしを拒絶しない人で……」
「つまり脈ありなんですね!?」
「まだ友人ではないのか!?」
「「付き合ったりとかは!?」」
「あ、あうあうあうあう……」
矢継ぎ早に繰り出される私とシルフさんの質問に、フィーマさんは顔を真っ赤に染めタジタジになっていました。
その後、朝までフィーマさんは『ガノ』という人物について問い詰められることになったのですが……ふむ、これは近いうちにお赤飯ですかね。




