三百二十一話 大佐はまだまだ謎だらけです
コルザさんVS大佐は、順当に大佐の勝ちで幕を閉じたわけですが。色々と大佐に訊きたいことができましたよ。それを訊こうと大佐とところへ行く前に、後ろにいたシンシアちゃんがうれしそうに大佐に飛びついていました。
「師匠、さすが!! 強い!!」
「ふははは!! 我はいずれ最強になる予定であるからな! この程度造作もないわ!!」
なんか……はたから見てると本当に親子みたいですね、あの二人。とっても楽しそうです。この様子だと、二人はいい関係を築けているようですね。なら私が余計な口出しはする必要はないでしょう。なのでシンシアちゃんのことはおいとくとして、話さなくてはいけないのは別のこと……なんですが。
私が大佐に話しかける前に、私に声をかける人物がいました。
「あ、あの、ミーシャ様!!」
「はい、なんで……コルザさん、ですよね?」
声をかけられた方を見て最初に出て来たのは、そんな言葉でした。私の記憶上のコルザさんと今目の前にいるコルザさんが、うまく結びつかないのです。それもそのはず。なぜならコルザさん、この短時間で激やせしていたからです。
本人もビックリした様子で、自分の身体を見下ろしながら困惑しています。
「な、なんか気づいたらこんな感じに……たぶん、なんですけど。さっき戦いでブレス連発して余計なマナが減ったからじゃないかなあ、なんて」
「なるほど……要するに、身体溜め込んでしまってるマナが消費できれば太らないと。ただ、だからと言ってあまりブレスをその辺に吐かれても生態系に影響しそうなんですよね……でも糸口はこれで見えましたし、それも全部伝えておけばドワーフの誰かがいい道具を作ってくれると思います」
「わかりました!! アタシ、待ってます!!」
痩せたのがやっぱりうれしいようで、コルザさんのテンションが明らかに高いです。ずっと悩んでいた悩みが解決しそうとなれば、そりゃうれしいですよね。戻ったら喣金家の件も含めて色々と相談しなくちゃです。
コルザさんのことはこれでひとまずおいとけるので、あとは大佐に話を聞こうと思ったわけなんですが……なんか、シンシアちゃんとルナちゃんが楽しそうに大佐となにか話してるんですよね。ルナちゃんがテンション高いの見えるので、イヤな予感しかしません。
シルフさんとクロノスくんには目でしばらく待ってもらうよう合図してから、なにやら盛り上がっているように見える三人の元へ向かいます。
「マジッスか!! じゃこれ、自作なんスか!?」
「一応な。だが、前身である杖は以前も話した中年男の作ったものである。我はそれを改造したにすぎん」
「へー、大佐思ったよか器用なんスね!!」
「師匠、すごい。お洋服も作れる」
「それはホントすごいッス!!」
「あの、ちょっといいですか?」
聞こえて来た会話に、気になるワードがてんこ盛りだったんですけど。あのステッキが大佐の改造品だとか、大佐服まで作れるとか。もしや以前見た謎の服シリーズ、あれ大佐の自作だったんでしょうか? あと、シンシアちゃんが今着てるシンプルなワンピースとか。
とりあえず、一番気になるステッキから訊きましょう。
「そのステッキ、元はドワーフの方が作ったらしいですけど、なんのためにそんなデザインにしたんですか?」
「む? これか? これはシンシアが自分も杖が欲しいと言うのでな。我が以前使っていたものを改造し、シンシアの希望通りの外見にしたのだ」
「じゃあ、なぜ今大佐が使ってたんですか?」
「それは単なる実用試験だ。我が愛弟子に、適当な道具を持たせるわけにはいかぬのでな」
す、すっごく真っ当な理由!? そんなすばらしすぎる理由であんなファンシーな杖使ってたとか……ただ作るだけじゃなくて、実用に耐えうるかまで試してくれるとか……大佐、弟子であるシンシアちゃんには激甘なんですね。最初の頃は、こんなにうまくやってくれるだなんて思ってもみませんでしたよ。
ずいぶんとホッとしましたが、一つ確認しなければならないことがあったのを思い出しました。
「あ、じゃあさっきコルザさんを気絶させていた技はなんなんですか?」
「あれは自衛手段であるな。あのステッキは触れたもののマナを吸い上げる力を持つ。と言っても、微々たるものだが。それを応用し、コルザの体内にあるマナの流れを少々乱したのだ。人間に例えると、そうだな……脳貧血、とやらが近いだろうか」
「要するに、マナの流れを一時的に滞らせて瞬間的に昏倒させたってことですよね? そんな器用なことやってたんですかあれ……」
確かに一瞬ならダメージないかもですが……あんまり乱用してほしくない技術ですね。だってそれって、脳貧血と同じく長時間流れが滞ったら後遺症が残りかねないってことですし。あれですかね、頸動脈絞めて落とすのとおんなじ感じですかね。
大佐がこのまま調整を誤らなければ問題はないでしょうが……でも大佐ですし。その辺の技術ばっかり磨いてそうですし……どこまでやったらヤバいかくらいならわかりそうです。話聞いている限り、これまで死人が出るような事態にまではなっていないようですしね。まあ、釘を刺すだけ刺しておきましょう。
「一応言っておきますけど、それみだりに広めたり乱発しないでくださいね」
「当然であろう。我ですら、マナの量が膨大である存在にしかやらん。人間相手にやれば大抵はそのまま意識が戻らない、ということもあり得るからな」
「いやだからそんな危険なことやらないでくださいって言ってるんですけど!」
「だが、他に手加減が難しかったのだ。雷魔法の威力を上げ過ぎて黒焦げにするよりはマシであろう」
結局危険なんですね……まあ手加減にも自信あるみたいですし、人間相手に使わないのであればよしとしましょう。広めちゃいけない技術だって自覚はあるようですし。
ともかくこれで、面倒事は片付いたと思っていいでしょう。やれやれ、本当に疲れました……




