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二百九十一話 自殺ソングは勘弁してほしいです

 テレパシーじみた魔法が使えるようになったことにより、会話がスムーズにできるようになりました。なので、さっきの話をもう一度詳しく聞く必要があります。


『それで、さっきの歌の件なのですが……』


『はい、あの歌は聞いたものから気力を奪うものではあります。ですが死にたくなる、というよりは動こうとする意志そのものを凍結させる、と言った方が近いかと思われます。なので死にはしませんし、ぐっすり眠れば後遺症もありません』


『それならなんとかなりますかね……』


 でも、現在雷火家で行われている作戦というか戦争を止めるための方法が敵全員眠らせる、ですからね……相性悪い気もします。寝てるのと動けなくなるの、大差ないですし。それに、結局のところ争いは止まっても一時的が限界なんですよね。潯亀さんとか絶対今後もちょっかいかけて来ると思います。



 今さらですが……戦争止めるのってめっちゃ難しいですね……小競り合いくらいなら考えますが、戦争まで行くともう手に負えないです。本人たちの責任でどうこうなるならまだ多少しょうがない部分もありますけど、絶対巻き添えで死ぬ人が出てきます。それは止めなくちゃいけないと思うんですよ。


 もし地球に神的存在がいたら、その辺どう折り合いつけてるのか訊きたいものです。究極的には、放っておけばいいんでしょうけど……私には、それができません。止められるものなら止めるべきだと思うんです。


 とりあえず、すぐに死人が出る事態は避けられそうです。自殺ソング採用不採用にせよ、一時的になら争いは止められそうなので。


 ですので潯亀さん以外の説得は方法があるのでさておくとして、今は先に片付く問題の方をどうにかしましょう。


『歌の方はあとでどうしてもらうか決めるとして、用件がもう一つあるんです』


『なんでしょう?』


『実は、ミツカミさんという……』


 説明しようと振り返った瞬間、そこにいるべき存在がいないことに気づきました。


「み、ミツカミさん!?」


 慌てて辺りを見回しますが、どこにも見当たりません。ミツカミさんけっこうなサイズなので、そう簡単に見失うはずないんですが……


 私が声をあげたことでミツカミさんがいないことに気づいた他の方たちも一緒になって探してくれますが、姿が見えません。……他の人? 今なにか違和感が……シルフさん、クロノスくん、炯烏さんと梨蛟さん、狐鑰ちゃんに鼈氷さん……


「ルナちゃんどこ行きました!?」


 ミツカミさんだけかと思いきや、ルナちゃんまで行方不明でした。すぐ後ろにいたはずなんですが、どうやって誰にも気付かれずいなくなれたんですかあの二人!? こんなことにならないようにと私が最後に入ったのですが、ヨヤミさんと話しているうちにいつの間にか位置関係変わっていたようです。


「申し訳ございませんミーシャ様! ルナ様はつい先ほどまで、わたくしのすぐ後ろにいたはずなのですが……!!」


 事態に気づいたシルフさんが今にも土下座せんばかりの勢いで謝って来ましたが、別にシルフさんが悪いわけじゃないです。


「いえ、シルフさんのせいではないです。あの二人の行方不明スキルが高すぎるだけですよ。誰か、なんでもいいので変わったことなかったですか?」


 そう訊いてみるも、シルフさんとクロノスくんは首を横に振り、炯烏さんと梨蛟さんは二人で話していたらしくこちらもなにもわからない。狐鑰ちゃんに至ってはミツカミさんはともかくルナちゃんを存在ごと忘却しているらしく、誰だっけ状態です。つい昨晩、思いっ切り魔眼使った相手なんですけどね……


「あの……」


 本気で誰も気づかなかったようだと結論付けかけた矢先、そろそろと挙がった手がありました。鼈氷さんのものです。


「なにか気づいたことが?」


「あまり自信はないのですが、一瞬なにかが羽ばたくような音がしたような気はします。ですがここはヤタガラス様たちの住処ですから、まったく関係がないこともありえるかと……」


 確かに、そこら中に鳥型の生命体がいるわけですからね……羽ばたく音くらいしててもおかしくないです。ですが、他に手がかりないですし……状況から見て、ミツカミさんとルナちゃんが一緒にいなくなったのは間違いないんですが。


 魔法で探そうにも、この場所は異空間のせいかハッキリとわかりません。地磁気のせいでコンパスがグルグル回ってるのと似たような感じです。


 こうなると、しらみつぶしに探していくしか……


 そう思った時でした。バサバサと羽音がしたかと思うと、上から大きなものが降って来たのです。


「ふぎゅっ」


 それは、目を回したルナちゃんでした。


「る、ルナちゃん!? どこ行って、って、ミツカミさんも帰って……」


 ルナちゃんを落っことしたのはミツカミさんだと当たりをつけて上を向いた私は、思ってもみなかった光景に固まってしまいました。そこには、確かにミツカミさんがいます。ですが、それだけではなかったのです。


「し、白いカラス……?」


 ミツカミさんとほぼ同サイズの、白と銀の中間みたいな色をしたヤタガラスさんが隣を飛んでいたのでした。

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