表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
268/471

二百六十八話 こんなところに、こんなものがいるとは思ってませんでした

「あ、あのー、ミーシャ様?」


 もふもふもふもふもふもふもふ……


「ミーシャ様……?」


 もふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふ……


「ええと、あの……」


 もふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふ……


「センパイセンパイ、さすがに長いッス」


「はっ!?」


 呆れたようなルナちゃんに声をかけられ、ようやく我に返りました。両手の中には、なんともキュートで愛らしい犬のような見た目の生物が。長いこともふられてくれたその生物さんは、困ったようにこちらを見上げていました。


「す、すみません……ついうっかり、もふもふスイッチが……」


「センパイ、ケサパサの時もおんなじことしてたッスよねー」


「面目ないうえに言い訳のしようもないです……」


 他の方に聞いてみると、どうやら十分ほどもふもふタイムに突入していたようです。すごく申し訳ないですね……


 なぜ私がこんなにも時間を取られたかと言えば、今現在も私の手の中にいる小動物型の妖怪。かの有名なすねこすりを見つけてしまったせいです。


 十五分近く前、私たちは門の中に入ってこの国の平安っぽさに驚いていました。そのまま炯烏さんの案内で雷火家に行こうとしていたのですが、その道中なにやら私の膝の下あたりにもふんとした至高の感触がありまして。私の足に触れられる存在にまず驚き下を見た結果、そこにいたのはすねこすりだった、という経緯です。


 いやもう、本当にうれしかったんですよ。この身体になって以来、もふもふなんて滅多に触れませんから。そのせいでテンションが上がってしまったわけですが……


 で、最終的にあまりのもふもふ加減にうっかり十分ほどみなさん放置でもふってしまったんです。


「ミーシャ様、よろしければ今度ノームを呼びましょうか?」


「しょ、しょーせーもケサパサ? に、こっちにこられないかきいてみるであります!!」


「ごめんなさい多方面に気を使わせてしまいました! 今本気で反省してます……」


 うう、深刻なもふもふ不足です……やはり、人はもふ分不足に陥ると禁断症状が出てしまうのですね……


 かなり真剣に反省です。いやもうホント、申し訳ない以外の言葉が浮かびません。炯烏さんなんか、事態がわかっておらずポカーンとさせてしまいましたし。ミツカミさんは……あれ?


 さっきまでいたはずの場所にいないので辺りを見回すと、いつの間にか私の真後ろに立っていて超ビビりました。


「うわっ!? ど、どうしたんですか?」


「もふもふ、なに?」


 不思議そうに首をかしげるミツカミさんには、もふもふの良さがわからないようです。まあ、生後半年では仕方がありませんが。


「なに、と言われると朝まで語りたくなりますが……一言で言ってしまえば、とても良いものです」


「ぼくと、違う?」


「ん? と、言うと?」


「ぼく、もふもふ?」


 ふむ……言われてみれば、ミツカミさんももふもふと言えなくないですね。全身羽毛なわけですし、ほ乳類とはまた違ったもふもふでしょう。そう言われると……一度、試してみたくなりますね。


「試したことがないのでなんとも言えません。なので、ちょっとじっくり味わってみてもいいですか?」


「ん、大丈夫」


 そう言いながらミツカミさんが一歩こちらに近づいてくれたので、もっとももふもふしていそうな首の後ろあたりをもふってみました。


「こ、これは……!!」


「どうしたの?」


「み、ミーシャ様!? なにか問題が起こったのでしょうか!?」


「ミーシャさま、なにがあったでありますか!?」


 精霊コンビは大慌てですが、ルナちゃんだけは全力であきれ顔でした。つまり、ルナちゃんには私の言いたいことがわかったのでしょう。いつもこれくらい察しがいいと助かるんですが……ちなみに炯烏さんは、わけがわからずキョトンとしていました。


「ミツカミさん、あなたはちゃんともふもふです。しかも、最高級と言って差し支えないです。ヤバいですよこれ、ハマりますよ」


「んあー」


 ミツカミさんもミツカミさんでなでられて気持ちがいいのか、ネコみたいな声を出して目を細めていました。


「センパイ、ほっとくといつまでももふってそうだから言うッス。そろそろけーさんガチで困ってるッス」


 言われて振り返れば、後ろで困惑している炯烏さんと目が合いました。


「すみませんホントすみません。ミツカミさんがあまりにもふもふなので、つい……」


「い、いえ、大丈夫です。ただその、そろそろうちへ向かってもよろしいでしょうか?」


「ええどうぞ、ホント申し訳ありません」


 もふもふって、最強ですよね……うっかりすると、心が囚われたまま時間が過ぎてしまいます。これ、紛争地帯とかに広まったら戦争終わったりしないでしょうか。もふもふ、世界を救う。私としては、割と本気でいけると思うんですがねぇ……


 謝りながら歩を進めますが、歩くたびにあっちこっち妖怪がいるのが目に入って来ます。有名どころでは、一反木綿とかですね。なにか運んでいるところをみると、宅配便とかやってるんでしょうか? 他にも唐笠お化けとかろくろ首、カッパなんかが有名でしょう。


 あとはちょっとマイナーになって、ぬっぺふほふとか油すまし、網切りに手の目なんてのもいますね。妖怪ワンダーランドって感じです。


 あちこち見ながら歩くこと、およそ十五分。私たちは、ようやく雷火家へたどり着きました。こんなに時間がかかったの、全部私のせいですけど。ホントごめんなさい。


 さて、見た目は立派な武家屋敷ですが……中はどんなことになっているやら。普通の妖怪屋敷なら、むしろ嬉しんですけどね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ