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二百四十一話 一つ、思いついた使い道があります

 ガドラスさんを落ち着けたら、いよいよマナ・ダイヤモンドをどう加工するかに話を移します。


「この状態でしたら、どんなものにも加工できるんですか?」


「ええ、おそらくは。使い方によっては、もうしばらくマナキュールに漬けて完全に溶かしてしまうという手もあります。そうすると、マナ・ダイヤモンドのマナが全てマナキュールにたくわえられるようなので」


「あ、そうなんですか?」


「はい。それなら純度が下がり加工はしやすくなるのですが、マナキュールはずっと固体を保つのが難しいため、使い方はだいぶ限定されてしまいます」


 まあ、ずっと揺れ動く流動体のようですしね。決まった形を持たず、液体と固体の中間みたいな振る舞いをするのでしょう。以前巨大ロボの形態だったことを考えると、ある程度であれば形を設定できるようではあるのですが……


 高純度のマナの塊をどう扱うか考えている時、ふとダイスさんが目に入りました。


「あの、マナ・ダイヤモンドを溶かしたマナキュールって、どの程度まで形を保てるんですか?」


「そうですね……ずっと表面が動いていていいなら、それなりには。もしくは魔法で動きを抑え込むことも、マナの含有量が多ければ可能だと思われます」


「ふむ……」


 表面が動くのは、幻影で誤魔化せるでしょう。一定の部分だけ動きを止めたりできるのであれば、もしかしたら使い道があるかもしれません。


「先ほどガドラスさんは素手でマナキュールを触っていましたが、これは直接触れても問題ないものですか?」


「基本的にマナキュールが溶かすものはマナだけですので、人間が触れる分にはなんの問題もありません。他のマジックアイテムと組み合わせれば、そうですね……生ゴミとかを細かく分解して、マナに還元することは可能です」


「それって、一部分だけそんな設定にするとか、そういうことはできますか?」


「? え、ええ。入れる器の方を調節すれば可能だとは思いますが……ミーシャ様、なにを作ろうとしていらっしゃるのですか?」


 怪訝そうに訊かれるのは、想定内です。私も思いつきなのでできるかどうかは未知数ですが、やってみる価値はあると思うんですよ。


「なんと言いますか、そのマナキュールを身体の表面にまとって中の人が操作する、的なことは可能ですか?」


「え、ええっ!? それはまた斬新な鎧にはなりそうですけど……いやでも、これで鎧とか作ったらほとんどの魔法は吸収したのち分解されるのでは……」


「いえあの、鎧にしたいわけではないのですが……」


 でも、それもありかもしれませんね。魔物とか退治する時に、そういう鎧を着ていたら魔法攻撃ができるような魔物に対抗しやすいですし。マナキュールがどこまで物理防御力が高いかわからないので、一概には言えませんが。


 なにやらブツブツと鎧について考え出したガドラスさんには申し訳ないですが、私が思いついた活用方法はもっと別のものです。


「ええとですね、できればそれを使ってダイスさんの偽装を強化したいなぁと」



「僕ですか!?」


 それまで完全に蚊帳の外というか、話に上手く入れてなかったダイスさんは、突然自分の名前が出て来て驚いたようです。人見知りではないようなのですが、ダイスさんの場合下手をすると色々と面倒なことになるという点が足枷になっているのでしょう。もしくは、ワービスさんの件を引きずってしまっているか。どちらにせよ、あまりいい傾向ではありません。


 よく考えると、なにもない時はダイスさんって基本的に引きこもってますし。私が頼んだ魔導書の作成をガンバってくれているというのもあるのでしょうが、一番はやはり人付き合いの問題でしょう。


 もしもマナキュールによって疑似的とは言え骨だけじゃない身体を持てるようになれば、もうちょっと友達とかできるんじゃないかなーという、私のお節介です。


 ダイスさんはうろたえていましたが、事情を知らないガドラスさんはひたすらキョトンとしていました。そりゃそうですよね。ただ、それを頼む場合ダイスさんのことをある程度説明する必要があるんですよ。それをダイスさんが了承してくれるか、という問題も出て来ます。


「ダイスさんとしては、どうしたいですか?」


 色々ひっくるめてあいまいにした質問の意図を、ダイスさんはくみ取ってくれたようです。少し考えるような素振りをしたあと、真面目な顔でこう答えてくれました。


「僕としては、ありがたい申し出ではあります。ですけど、そんなことまで頼っていいのか……聞いていたところ、それはとても貴重なものなのですよね? そんな貴重なものを、僕のために使わせてしまうのは申し訳なくて」


「確かにレア度は高いですけど、拾い物ですし。それにダイスさんには頼んでいることもありますから、その分の報酬とでも思っていただければ」


 お金を渡すことはできませんから、私にできることはこれくらいです。


 しばらく黙っていたダイスさんは、スッと頭を下げました。


「ありがとうございます、ミーシャさん」


「そこまでかしこまらなくてもいいですって」


 ではガンバりましょうか。どうしたら、ダイスさんに最適な身体が手に入るのか考えるところからですかね。

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