表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
229/471

二百二十九話 本気で忘れてました

「平和ですねぇ……」


 ここ最近、なにも問題が起こっていません。強いて言うならフズリ村で冬眠やらなんやらがありましたが、つつがなく終了しましたし。ただ、なにか引っかかってはいるんですよ。ワービスさんとダイスさんの件については、あの時ワービスさん一切話しかけて来ませんでしたから、進展ないですし。


 うーん、やっぱり私、なにか重要なことを忘れているような気が……


 なんでしたっけ? 大佐のことは片付いていますし、まあそれも直近のやつだけですけど、今は問題ないはずです。一応シンシアちゃんの面倒を見てくれる約束も取り付けましたし、あの人変なところで律儀なので衣食住には問題ないでしょう。


 ただ、衣食住以外が心配なんですよね大佐の場合……シンシアちゃんに変なこと教えてないといいんですけど。たとえば、知り合いに会ったらまずは攻撃を仕掛けるのが常識だとかなんとか……そうなったら、最悪国が滅んでもおかしくないです。


 だってシンシアちゃんが作ったあの毒の沼を見る限り、あの子本気で毒を使ったら辺り一帯が毒まみれになりますから。だから大佐が、その辺の教育をどうしているかが本当に心配で……ああもう、いっそ大佐が言っていた通り、私も一緒に住んだ方が、いえそれはやっぱり嫌です。うーむ……


 そんな風にモヤモヤしていますと、近くで空を見上げていたシルフさんが突然驚いたように空を見上げました。


「どうしました、シルフさん」


「いえその、たった今ウンディーネから連絡がありまして」


「ウンディーネさんから? いったいなにが?」


 この様子だと、絶対ろくでもないことだと思っていたら、案の定でした。


「泉から少し離れたところに、なにやら妙な木が生えたらしいのです」


「妙、と言いますと?」


「その木の実を食べた生物が、なんだかイライラしているそうで……最初は突然変異した有毒の植物かと思ったらしいのですが、その木はどうもよくわからない魔法がかかっているそうで。ウンディーネの力だけでは、解析しきれないようなのです」


「魔法の木、ですか……」


 食べたらイライラする木、とはまた微妙なものを。ですが人間はイライラするとなにしだすかわかりませんし、動物もそれは同じでしょう。怒り、憤怒というものは七つの大罪の一つでもありますし、あまりいい感情とは言えません。


「そんなものが生えた心当たりはないんですよね? 誰かが植えたのを見たとか」


「ええ、わたくしが聞いた限りでは。ただその木、どうもこの辺に生えるような種類の木ではないと言いますか……ウンディーネによれば、もっと遠くに生えているような木に近いようです」


「遠くというと……」


「フェイルー湖の辺りですね」


 あの辺には確か、ドリアードさんが管理する森がありましたね。あそこに生えているような木、ということでしょうか。となるとここは、ドリアードさんを呼んでどうにかした方がいいですかね。


 そこでふと、なにかが引っかかりました。具体的になにとは言えないのですが、なんだか喉に魚の骨が刺さったようなモヤモヤ感があるんですよ。どうガンバっても取れない、変な位置に引っかかったような……なぜでしょう?


 私が悩んでいるのに気付いたのか、シルフさんがどこか心配そうです。


「ミーシャ様? どうかされましたか?」


「いえ、なんでもない、と思うんですけど……とりあえず、現状を確認したいのでその木が生えているところを詳しく教えてください。幸い早朝なので、ルナちゃんたちは寝ています。適当に書置き的なものを残して行くので、ここはさっさと二人で済ませてしまいましょう」


「了解しました」


 というわけで、シルフさんと二人でウンディーネさんの待つ泉へと向かいました。瞬間移動を使い一瞬でたどり着くと、そこには困った顔のウンディーネさんが。


「あ、ミーシャ様。すみません急に呼んでしもうて」


「いえ、構いませんよ。よくわからないことが起こっている時は遠慮なく呼んでください。それで、その例の木がこれですか?」


「ええ、そうです」


 ふうむ、見た目はごく普通の木ですね。強いて言えば、葉っぱの形が星型なことくらいでしょうか。でもまあこの世界ではそれくらいあってもおかしくないですから、見た目はあてにできません。となると、魔法的に調べるしかないですね。


「じゃあちょっと調べてみますね」


「お願いします」


 というわけで調べてみると、確かになにやら妙な魔法がかかっています。しかもこの魔法、以前どっかで見たことのあるものです。ほぼ間違いなく、前に大佐が作ったジュース。あの時の魔法と同じものです。


 やっぱり大佐ですか……あの人はまったく、こんなところにまで……こんなところ……えっと、あれ? 大佐って、ここまで来られましたっけ……?


 こんな森の奥深くまで大佐が来たことはなかったはずです。ていうか来ようとして、全力迷子になっていました。では、じゃあ誰がなんの目的で、こんなところにこんなものを……?


 あのあと、大佐ここまで来られるようになったんでしょうか。でもあれだけ騒がしい人が来たら、どう考えても気づく人が出て来ます。最低でも、ウンディーネさんは気づきますし……では?


 そこまで考えた時、ふと脳裏によぎるものがありました。それは少し前、フズリ村での出来事。あの時私だけでは問題を解決することができず、仕方なく助っ人を呼んだんです。ドリアードさんを。よくよく思い出してみれば、ドリアードさんはなにか依頼を持って来ていたような……


「ああっ!?」


 後ろでシルフさんとウンディーネさんがびっくりする気配が伝わって来ましたが、今フォローをする余裕が私にはありません。なぜならば。


「この木、あの時ドリアードさんに相談受けてたやつじゃないですか……!!」


 正確に言えば、あの時は木の実だったらしいですが……まさかいつの間にか、ここまで成長しているとは。


 色々ありすぎて忘れてましたが、これけっこうヤバいんじゃないですか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ