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二百二話 ドワーフルールってたいへんです

 マナ・ダイヤモンドを加工する方法を探してくれることになったガドラスさんでえすが、ここでじゃあお願いしますと渡すだけでいいなら最初から問題がなくてよかったわけです。研究をお願いするに当たり、研究場所を確保することが大事なわけで。


 ある程度の強度がある場所でないと研究も大変だろうということになり、まずはガドラスさんの研究に使っている場所に結界を張ろう、ということになったのですが……


「あのう、ガドラスさん。これはギャグとかではないんですね?」


「? どういうことでしょう?」


「いえ、大丈夫です。そのリアクションでわかりました」


 ガドラスさんだけでなくシルフさんも首をかしげていますが、私としてはおおいにツッコむべき家でした。なぜなら、ガドラスさんの自宅は。


「どうやったらこの世界でダンボールハウスなんてできるんでしょうねぇ……」


 それはもう、見事なダンボール製の家でした。見た目からして妙だったので触ってみたところ、間違いなくダンボールという結論が出たんですよ。そしてそのダンボールを、どうやったのかレンガ状にして積み上げるという、おおよそ地球では造れそうもない家なんです。


 いやもう、耐震強度とか全力で無視しないとダメなやつですよ。地球の技術では、普通にムリでしょう。だってこれ三階建てですし。ダンボール製のはずなのに継ぎ目が一切見当たらないですし、そもそもレンガを積む時に使った接着剤が謎すぎます。地球だと、コンクリとかモルタルあたりでしたっけ?


 とにかくもう、ウケ狙いじゃなければ地球ではお目にかかれない家でした。


 私がポカンと家を見ているので、ガドラスさんは違う方向に勘違いをしたみたいです。


「すみません貧相な家で……自分には、こんな家しかできなくて」


「ああいえ、そういうわけじゃないんですが……というかこれ、ガドラスさんが建てたんですよね?」


「ええまあ。自分、鉄等級なのでいい素材じゃ家はムリで……ドワーフは独り立ちする時に自分で自分の家を造って住むんですが、その時から全然ランクアップしてなくて。たいていのドワーフはランクアップするとともに、自宅を改築するんですが」


「なるほど、それで素材に紙をチョイス……いややっぱりわかんないです。普通に鉄で造りましょうよ……」


 そこで紙で造ろうと思うところが常人にはない発想です。


 感心半分呆れ半分で聞いていましたが、そこでふと妙なことがあることに気付きました。


「たしか、現村長のドギスさんの家は白金じゃなかったでしたっけ? それは誰かが魔改造したせいだと思ってましたが、ドワーフは自力で家を建てるなら、色々おかしなことになりませんか?」


 魔改造は別件で、ドギスさんが自力であの家を建てたということはないでしょう。なぜならドギスさん、金等級らしいので。つまりそれは、白金を扱えないということを意味しています。なら、いったい……?


「ああ、それはドワーフの習性というか、やっかいなところでして。どこかで誰かがこんなものほしいなー、とかつぶやいたのを聞くと、造れるものだと判断するや否や造っちゃうんですよ」


「ってことは、あの家は……」


「ええ、村長がうっかり『最近雑務が多くて家を建て直せない』とこぼしまして。それをどこかの誰かが『新しい家を建ててほしい』という風に曲解したんですよ。それであんな感じに。自分らのルールで言うと、その場合できた家が欠陥品でもないかぎり、おとがめなしってことになってて」


 大変ですねドワーフルール……おちおちグチも吐けないとは。私、ドワーフ社会だったらやって行ける自信まったくないです。


「まあでも、案外住みやすいみたいで、自力でどうこうしようとは思ってないみたいですよ」


 それならギリセーフですかね……


「ありがとうございます、ガドラスさん。ドワーフってどういう種族なのか、私はよく知らないので助かりました。今後またなにか頼む時に、参考にします」


 とりあえずそれで、家の件は納得です。ガドラスさんちも見た目の割に中身は普通で、あちこちに結界を張るだけで問題はなさそうでした。あと問題だったのは、経過報告なんかのために必要な連絡手段ですが……


「ちなみに今のドワーフの技術で、遠くにいても意思疎通ができるような通信アイテムって、ないんですか?」


「ああ、それでしたらありますよ」


 そう言ってガドラスさんが出して来たのは、なんだかどこか見覚えのあるデザインの二体の人形でした。


「これは片方に話しかけると、それそっくりにもう片方がしゃべるんです」


「面白そうですね」


 なるほど、電話の一種ですか。これならやたらと魔力を使う必要もなく、安全でしょう。ただ、誰かに似てる気がするんですが……いえ誰かっていうか、このファンシーなデザインは……


 ああそうだわかりました、ナノさんたちです。ということは、ドワーフさんたちにもナノさんたちが見えているのでしょう。そしてある程度の距離なら影響し合うナノさんたちの性質を利用して、こういうものができたと思われます。


 色々考えているんだなぁと思いながらその人形の片方を受け取り、私たちはそろそろ帰ろうともう一度ガドラスさんちを見上げ――

「あ、そうだ忘れてましたルナちゃんたちのこと!!」


 そもそもレンガの家を造るために、石材探すのにダンジョン跡地まで行ったんですよ!! すぐ戻るって言ったのに、ずいぶん時間経ってるじゃないですか!?


 重要すぎることを思い出した私とシルフさんは、ガドラスさんへの挨拶もそこそこに大急ぎで私本体の元へと戻りました。そしてそこで待っていたのは、今にも泣き出しそうなクロノスくんと、ひたすらオロオロしているダイスさんの姿でした。


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