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百八十九話 帰って来る場所は重要です

 フズリ村の件がとりあえず片付いたため、私たちは本体である世界樹の根元まで帰ることにしました。ドリアードさんは本体ではなく魂だけで来ているので、自力で帰るそうです。


 約一名、帰るのではく初めて行く人はいますけど。


 というわけでいつもより安全運転――というか、心の準備の時間を取ってから出発します。これのおかげか、ダイスさんはとくに混乱するようなこともなく根元までたどり着くことができました。


「う、わ……近くで見ると、すさまじい大きさですね……」


 フズリ村からは気温の関係かハッキリ見えなかったので、ダイスさんは初めて世界樹を見たらしいです。


「明るいところで見たら、もっと迫力あるんでしょうね」


 現在時刻は陽がほぼ暮れた、七時くらいでしょうか。魔法の練習を終え、さらにそのあとのワービスさんのプロポーズなんかもあったので思ったよりも遅くなってしまいました。とは言っても、やることがあるわけではないので問題はありませんが。


「さて、今日はどうしますか? このまま寝ます?」


「うーん、今まったく眠くないんですけど……」


「じゃあ、寝床というか住めそうなところでも探しましょうか。この辺りは天気の変化もあまりないので、その辺で寝ても大丈夫ではあるみたいですが……やはり、腰を落ち着ける場所があった方がいいですからね」


 そう言った瞬間、意外な場所から声が上がりました。


「センパイセンパイ、なんかダイスさんに甘い気がするッス」


「そんなことはないと思いますが……」


「甘いッスよ!! あたしの時は放置されたッス!!」


「あー……」


 そう言えば、その辺の洞窟紹介したような気がして来ました。


「すみません、たしかに配慮が足りなかったですね」


「そッスよ!! 一リットルくらい足りないッス!!」


 その単位は謎ですし多いのか少ないのかすらわかりませんが、いくらルナちゃんとはいえ、もうちょっと真面目に寝床とか探してあげるべきでした。ルナちゃん本人がかなり適当というか能天気なので忘れがちですが、ルナちゃんは一度死んでこの世界に転生しているわけです。初めて来た世界で、きっと不安もあったでしょう。


 そう考えると、なんだかこれまでのことが申し訳なくなって来ました……私、ちょっとルナちゃんのこと適当に扱いすぎたかもしれません。ルナちゃんだってまだ子供なわけですしね。


「ごめんなさい、ルナちゃん。これからはもう少し、子供扱いしますね」


「あれっ!? なんか悪化してる気がするんスけど!?」


「え? 私としては、とっても改善したつもりですが……」


 私からすると、子供というのは優しくするべき対象です。相手にもよりますが。最初に私の生前フォルムよりも大人っぽい姿を見てしまったせいか誤解しがちですが、ルナちゃんは立派に、というのもおかしいですが、子供なわけで。であれば、限度はありますが優しくすべきでしょう。


 ルナちゃんは、どこか釈然としなさそうに首をかしげていました。ううむ、言葉って難しいですね。


「では、こうしましょう。今回、お二人にはちゃんとした家を建てる、というのは」


「家、ですか?」


「家!! いいッスね!!」


 ダイスさんとルナちゃんの間に温度差が見受けられましたが、少なくとも否定的な反応ではないようです。ちなみにシルフさんですが、彼女には生まれてすぐに一度家が必要か訊いたことがあります。その時にそんなものはむしろ邪魔だと迂遠に言われたので、それ以来提案していません。


 シルフさんだけでなく、たいていの精霊さんが家を必要とはしていないみたいです。狭い場所に閉じこもるのが、あまり好きではないそうで。例外と言えば結界がないと周囲の時間に干渉してしまうクロノスくんと、どうやらまだピィアさんと一緒にいるらしきシェイドさんの二人ですかね。


 シェイドさんはともかく、クロノスくんは性質上仕方なくって感じです。


「何か希望とかありますか?」


「はい! はいはい!! なんかこう、魔王が眠ってそうな感じの――」

「そうですね、魔王の封印ってかっこいいですものね。よく思いつきました、とーってもすごいです。さすがはルナちゃんです。でもルナちゃん、よーく考えてみてください。本当に、そんな家に住みたいですか? きっと数年後辺りに、後悔すると思います。ですので今回は、その一流のセンスは封印する方向でいきましょう?」


「な、なんかいつものツッコミより傷つくんスけど……」


「え? あれ?」


 相当ガンバって、優しく言ったつもりなのですが……なにがいけなかったんでしょう? 


 よくわかりませんでしたが、ルナちゃんがちょっぴり大人しくなったのでいいとしておきましょう。


「ダイスさんはなにか希望はありますか?」


「その、できたらでいいのですが……あまり、明るくないところがいいです」


「え? いいんですか?」


「はい。どうも僕、暗いところの方が得意みたいで……」


 ふむ、夜目が効くんですかね。スケルトンだからでしょうか。


「ちなみに、お墓とか棺の中で寝たい願望とかは……」


「え、えぇっ!? お墓ですか!? そんなとこ怖くて眠れませんよ!!」


 あ、お化けはダメなんですね。


「では窓の少ない家にしましょうか。灯りを点ける魔法は修得しましたか?」


「あ、はい。一日くらいならもつと思います」


「では灯りが必要であれば、随時自力でどうにかする形で。あとは、どこに建てるかですね……」


 この森のどこかにはなると思いますが、どこに建てればいいでしょう? なるべく私の近くで、それでいてルナちゃん、ダイスさん、クロノスくんの三人が近づきすぎないことがベストです。


 ルナちゃんは騒がしさの問題で、クロノスくんは時間関係で念のためにです。どこかちょうどいい場所が見つかるといいのですが……


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