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百八十五話 カラータイマーが必要だったかもしれません

 ワービスさんの料理話がようやく終わり、ほっと一息吐いたのもつかの間。ダイスさんの身体に、異変が起き始めました。


 最初に変化に気づいたのは、ダイスさんの正面に座るワービスさんでした。いきなり首をかしげたかと思うと、目を何度もこすっているではありませんか。


「どうかしましたか、ワービスさん」


「いや、その……なんだか目の調子がおかしくて。どうしてか、ダイスさんのお顔が白く見えて、いえいつも充分白くて美しいのですが、どこか骨みたいな白さと言いますか……」


 骨というワードを聞いた瞬間、ぎょっとしました。そこで慌ててダイスさんの身体を調べてみますと、あちこちにほころびが出て来ているではありませんか。変身が解けかかっている証拠です。


 一時間ならもつと思ってましたが、ほつれ始めるのはもっと早かったですね……!! このままでは完全に魔法が解けて、ダイスさんの真の姿がスケルトンだとバレてしまいます。急いでこの場を離れなくては……!!


『ダイスさん、なるべく早くこの場を離れますよ!』


『りょっ、了解です!!』


 慌てて念話で意思疎通を果たすと、私は魔法の維持、ダイスさんはこの場から離れることを最優先に動き出しました。


「まあ、お疲れなのですね、ワービスさん。ムリをさせてしまったようで、申し訳ありません」


「いえいえいえいえ!! ダイスさんのせいじゃないですよ!! それにほら、俺とっても元気ですから!!」


 そう言ってなぜか突然ボディービルダーのようなポーズを取り始めました。腕立て伏せやスクワットならまだわかりますが、ここで筋肉自慢をすることと元気なことは無関係だと思いますよ?


 ツッコミたい衝動に駆られましたが、今はここから離れることが優先です。私がヘタにツッコミを入れれば、ダイスさんが困るので自重せねばなりません。


「自分の状態は、案外自分では気づかないものです。ここは大人しく、早めに寝てください。ワービスさんが体調を崩されてたら、僕、悲しいですから……」

「わかりました、すぐに治します!!」


 ダイスさんに乗せられてくれたらしく、ワービスさんはブンブンとうなずいていました。


「それではまた今度」


「ええ、いつでもお待ちしております!!」


 そんなワービスさんの期待のこもった別れの言葉を背に、どうにか私たちは外に出ることが出来ました。このままでは元の姿に戻ってしまいそうなので、扉の外で待機していたシルフさんと一緒に急いで森へ行くことに。今回私はダイスさんの実体を維持するのに精いっぱいでしたので、シルフさんの魔法で空を飛ぶという方法をとりました。


 はたから見たら竜巻に飛ばされた被害者みたいになっているかもしれませんが、緊急事態でしたので仕方がありません。


 森に着き誰もいないことを確認してから、私はダイスさんの身体から出ます。それとほぼ同時に、幻影の魔法も解け元のホネホネなダイスさんに戻ってしまいました。


「あ、危なかったですね……」


「すみません、ダイスさん。思ったよりも魔法がもたなくて……」


「仕方ありませんよ。なんだか難しい魔法だったみたいですし……」


 自分で自分にかけるなら、きっともっと長時間もったことでしょう。まあ、そもそも私の実体は世界樹なので、人型の実体持てませんけど。基本的に、一つの魂は一つの実体しか持てないみたいなので。


「ミーシャ様、体調の方はいかがですか?」


「私は大丈夫です。ダイスさんは?」


「今風に飛ばされた時にビックリしたくらいで、具合は大丈夫です。いやあ、実体があったせいかすっごい心臓バクバクでしたよ」


「ちなみに今は?」


「え? うーん、なんだか胸の辺りがフワフワするような気もしますが、バクバクは収まりました」


 実体がなくても、心臓に類する部分はあるのかもしれませんね……見えないだけで。


「それで、今日はこのあとどうしますか? この状態では、どこかに泊まるのは厳しいかもしれませんが……」


「ああ、それなら大丈夫ですよ!! その辺で寝るんで」


「いえでも、さすがにまた木の洞とかで寝かせるのは……」


 雨風の凌げる場所と聞いて、あれだけ喜んでいたんです。またそんなところで寝かせるのは不憫で仕方ありません。


「じゃあこうしましょう。今日はここに結界を張るので、そこで寝ればいいんです。小さな結界であれば、普通に張れますし」


「で、でも、さっきので疲れているのでは……」


「小さい結界一個くらいなら余裕ですよ。でなければ、昼間にあんなにたくさんいっぺんに結界張ったりできません」


「たしかに……」


 ちゃんと納得してくれたようです。今から村に戻って寝床だけ探すというのは困難ですから、これに納得してもらわないと野宿になりますからね。


 最初はダイスさん一人でそこに寝てもらおうと思ったんですが、こんなところで一人はさみしいかなと思い直し。最終的に、シルフさんを含めた三人で寝ることになりました。といっても、本気で眠れるのはダイスさんだけのようですが。


「なんでしたら、僕も寝なくても問題ないんですよ? 普通の人間よりも、睡眠の必要ないみたいですし……」


「必要なくても、眠れる時に寝ておいた方がいいですよ。本当はシルフさんも眠った方がいいのですが……」


「ここでわたくしが眠ることなどできません!! ミーシャ様が働いておられるのですから!!」


「ですよねー」


 シルフさんは精霊の中でも睡眠の必要性が薄いらしく、全く寝ないことはできませんがそこまで寝る必要もないみたいなんですよね。昔はもっと寝てたみたいですけど。それでも、いつもなにもない時は寝てもらってます。寝れる時に寝た方がいいですからね。


 ここでシルフさんも起きているとなると、ダイスさんも気になって眠れないでしょう。なので最終的に、私も横になることでシルフさんも寝ることに納得してもらいました。明日の夕方には、いよいよ帰る予定ですしね。


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