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百七十五話 設定を練りましょう

 私が優柔不断だったせいで、やたらと目立つ美人が生まれてしまいました。いえ別に悪くはないんですよ、美人が生まれても。ですがやたら目立つので、ちょっと申し訳ないです。


 袴が似合う、という条件をクリアした結果こうなってしまって……せめて性別どっちかに固定できればまだマシだったんですが、どっちを選んでもなんだかしっくり来なかったんですよ。


「と、とりあえず、これで人間の中に混ざっても不審には思われません」


 すごくモテそうですけど。男女問わず告白されそうですけど。中性的な美形なので……


「マジですか? ありがとうございますミーシャさん! そだ、鏡! 鏡とかないですか!?」


「えーと……これでどうですか?」


 水鏡を作ってダイスさんに見せると、一瞬固まった後再びクルクルと、しかもさっきよりも激しく回り出しました。もはや竜巻が起こりそうな回転速度で。


「すっご、なにこれ超美形!! なんか違和感あるけど僕カッコイイ、いやキレイ? どっちでもいいやあっはっはっは!! わーい!!」


 なんだかすごい喜びようで、よっぽど嬉しかったのが伝わって来ました。喜んでくれているならいいんですけど、あとでナンパに気をつけた方がいいと言っておきましょう。


「あとは魔法がある程度扱えるようになれば……」


「そのことなのですが」


「シルフさん? どうしました?」


「いっそ、この者もフズリ村で魔法の練習をしたらどうでしょう?」


 なるほど……その手がありましたか。


 たしかにダイスさんもそこで練習すれば、いっぺんに面倒見れて楽と言えば楽です。そのままフズリ村で暮らすのは難しいでしょうけど、練習が終わったら引き上げればどうにかなります。それなら多少……いえだいぶ目立っても、いなくなってしまえばいいですから。


「ならもうすぐ夜が明けるので、その時にフズリ村の人たちに紹介しましょう。その格好は……ええと、あれです。どこか遠い国の民族衣装とでも言っておきましょう」


 ウソではないです。ギリギリですが。一応、日本での正装と言えないこともないこともないですから。変わった服だなー、くらいにしか思われないはずです。


「問題は、それ以外の細かい設定です」


 最低限、年齢と性別は必要ですよねやっぱり……名前は名字がなくてもさほど問題がないのでいいとして、せめてなぜ一緒に練習することになったのかくらいは決めておかないとでしょう。でないと、あとで面倒なことになります。テキトーに答えたせいで、辻褄が合わなくなったりとか。


 いつの間にか回るのをやめていたダイスさんは、真面目な顔で腕を組みました。こう、普通の人間のようになると、やっぱりオーバーアクションですね。問題がないレベルだとは思いますが。


「とりあえず、そのどこか遠い国の名前とか必要ですかねー」


「あ、そっからなんですね。性別か年齢はいいんですか?」


「そこはほら、こうしてニッコリ微笑んで……秘密です♡ って言っておけばいいんじゃないですか?」


 ぐ、すごい説得力です……!!


 なんかもう、微笑みの威力がハンパないです。私も今、ちょっとクラッと来ましたよ。


 というかこの人、変なところでずる賢いというか知恵が回るというか……そんなんどこで覚えて来たんですか。


「あれ? ダメでした? ここを通った人の一人が、そんな感じのこと言ってましたけど」


「いったいこの森には、どんな人が来てるんですか!?」


 俄然気になって来たんですけど……!! どのような人が通れば、そんな知識おいて行くんですか。この森ってなんかおかしな力とかあるんですか……?


「えと、僕が覚えてるのはよく来る仲良し三人娘とか、よくわからない高笑いしてる人とか、あともぐら……? みたいなおかしな動物かと思いきや、しゃべる変わったやつでした!!」


「最後思いっきり身内なんですけど!?」


 もぐらに似ていてしゃべると言ったら、該当する方は一人だけでしょう。


「え、しゃべるもぐら知り合いなんですか? 遠目からチラッと見えただけなんで、絶対にそうかって訊かれたら微妙なやつだったんですけど」


「それ、おそらく土の精霊であるノームちゃんです」

「マジすみません精霊様」


 ズザーと音がしたかと思うと、速攻でダイスさんが土下座していました。


「だ、ダイスさん!? いやあの、行動早いですね!?」


「せせせ、精霊様に向かって、僕はなんてことを……!! シルフ様も、申し訳ありませんでした!! いっそ指とか詰めるんでご容赦を、って僕指切っても割とすぐくっつくんだった!? 意味ないやどうしよう!?」


「私としてはその情報が驚きなんですけど!?」


 さ、再生能力でもあるんですか……? 指を切ってもすぐくっつくだなんて、けっこう強力な再生じゃないですか。


「その、なんだ。間違いは誰にでもあるな、うん。反省しているようであるし、今回自分はなにもしない」


 謝罪があまりにも全力であったためか、シルフさんも怒る気になれなかったみたいです。私が再生能力の方に驚いている間に、その件に関しては片付いていました。


「ありがとうございます精霊様、ミーシャさん!!」


 どっちかって言うと私の方をさん付けした件の方が、シルフさんには不満だったみたいですが、そこはスルーで。


「えーとまあ、あれです。じゃあもう陽が昇るんで、とっとと設定練っておきましょう」


 最終的に、ダイスさんは『ヒノモト』という遠い国から魔法の事故で飛ばされて来た、一般人ということで落ち着きました。性別は設定されてないので秘密で通すとして、年齢は二十歳ということに。


 ここがどこだかわからず森に住んでいたということにし、あとで私が帰る時に一緒に連れて行く、という設定です。


 さて、この設定でどこまで村の人たちの追及を逃れられるでしょうか……


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