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百六十五話 話すだけ話してみましょう

 精霊さんたちよりも、ナノさんたちはだいぶ昔から存在しています。というかナノさんたちに大量に集まったうえで核になるほどしっかりとした人格が生まれた存在が、精霊さんたちです。ですからナノさんたちの方が昔からいて当たり前です。


 そしてナノさんたちは昔、私が作った数々の魔法をすべて記憶しています。普通の人間はこの時ナノさんたちが覚えたの呪文を唱えると、その通りの現象が起こるのです。


 今のところナノさんたちは融通が利かないため、少しでも呪文を間違えると魔法は発動しません。これについては先ほど村人たちやルナちゃんに協力してもらい実験したので、間違いないです。


 つまり魔法というものは、基本的にナノさんの気分次第で威力が変わることもありえます。場合によっては、ナノさんたちの機嫌を取ることができれば威力も上がるのです。


 そしてさらに、ナノさんたちは自分たちの声が聞こえる人間に肩入れする傾向があり、聞こえている人は魔法をうまく扱える可能性が高いです。フィーマさんも、声が聞こえるようになってから威力が上がりましたし。まあ、あれはエルフ化が原因で聞こえるようになったので、確実かどうかは微妙ですが。


 ただ間違いないのは、ナノさんたちと話せれば魔法の威力が上がるということです。


 ってな感じのことを、一度結界を解除してから村人たちにナノさんたちの歴史として話したわけなのですが、真っ先にリアクションしたのは一緒に聞いていたルナちゃんでした。


「センパイセンパイ、あたし思ったんスけど、大分(だいぶ)大分(おおいた)って、漢字で書くと同じになるッス!! ややこしくないッスか!?」


「話を勝手にややこしくしているのはあなたです。村の人たちが混乱してしまうので、そういう地球人じゃないとわからない話とかはやめましょうか」


 確かに漢字同じですけども。だからなに、としか言いようがありません。せめてもうちょっと有益なこと言ってくださいな。あとここ地球じゃないので大分県がなく、それで悩むことは絶対にないんで心配する必要がないです。


 いつものルナちゃんの思いつきは放っておいて、村人たちにナノさんたちのことやわかる限り魔法のことを知ってもらわないとです。


 さて他に話すことはと考えた時、そーっと手が挙がりました。


「あの、ひとつしつもんがあるのですが……」


「なんでしょうか?」


 そう質問をしてきたのは、ついさっき魔法を暴走させてしまった男の子でした。男の子にしては髪が長く、こうして見ると顔は全然違うのですが雰囲気がどことなくクロノスくんに似ています。


「え、えと、そのナノさまたちとおはなしできるなら、まほうのいりょくも、コントロールしてもらえないのですか?」


「うーん……どう、なんでしょう?」


 たいていのナノさんたちは、おしゃべりが大好きです。ですが、自由すぎてなにを言っているのかわからなかったり、こっちの話を聞いてもらえないことも多々あります。


 私もその可能性については考えたのですが、ナノさんたちの気まぐれでがどこまで制御できるかわからなかったので、却下した案です。ですが……一度やってみる価値ならあるでしょうか。


「あの、ナノさんたちにお願いがあるのですが」


『どうしたのですー?』


「この村の方たちが使う魔法の威力を、ちょうどいい感じにしてくださいと言ったら、できますか?」


『んー? んー……』


 しばらくの間、ひそひそとあちこちでナノさんたちの相談する声が聞こえました。


『できなくないのですー。でもたいへんなのですー』


「と、言うと?」


『わたしたち、ちょうどいい威力よくわかんないのですー。魔法は強い方がいいと思うのですけど、違うのですー?』


「時と場合によります」


『TKO、むずかしいのですー』


「それを言うならTPOですよ……」


 テクニカルノックアウトにしてどうするんですか。


 ですがやはり、ナノさんたちに細かい調整は難しいということが判明しました。こういうさじ加減というのは、私も苦手ですし。


「なら、ちょっとだけ威力を抑える、という方向では?」


『ちょっとって、どれくらいなのですー?』


「え? えーっと……こう、気持ち?」


『どんな気持ちなのですー?』


 そ、そこまで考えてませんよ!! どうしましょう、ナノさんたちに頼むには具体的な指標が必要みたいです。どう説明すればわかってもらえるでしょう……


「今が百の力だとしたら、九十ぐらいに、というのは可能ですか?」


『十パーセントオフなのですー?』


「ええまあそんな感じです」


『やってみるのですー!!』


 というわけで、代表してルナちゃんに魔法を使ってみてもらうことになりました。


「べつにいいんスけど、なんであたしなんスか?」


「そりゃあ、村の人たちよりも、あなたの方が丈夫だからですよ。それに、なにかあった時に対処しやすいですし」


「……なんか、実験体扱いされてる気がするんスけど……」


 ルナちゃんにジト目で見られましたが、気づかなかったフリをしました。ほら、べつにそこまで思ってるわけじゃないですし。それにこうして見てますから、滅多なことは起きません。


 というわけで、ルナちゃんに適当に魔法を使ってもらうことになりました。さっき実験の時に使った、簡単な氷結魔法が妥当でしょう。凍らせる対象は、直径二メートルほどの水球です。さっきやった時は、一瞬でこれが中まで完全に凍りつきましたが、果たして……


「えっと……『凍てつく息吹、フリーズブレス』ッス!!」


 ビシッ大きなと音がして、水球は凍りつきました。ただし、表面が濡れているように見えます。


 威力が落ちたには落ちましたが……なんとも言い難い微妙な落ち方です。十パーセントってこんなもんなんですかね? でもこれ以上落としてもらうと、一気に落ちそうで怖いですし……


 どっちにしろ、まだまだみなさんには練習が必要みたいです。


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