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百四十七話 いったいどれだけ寝てたんでしょう?

 長いうえに時系列があっちこっち飛ぶフラウちゃんの話を要約すると、こんな感じになりました。


 フラウちゃんはいつもシウス氷山の頂上付近にある洞窟の中で寝ていたそうなのですが、ある日突然その洞窟が潰れてしまったというのです。フラウちゃんが寝ている周囲の気温は下がり吹雪になるのですが、それが百年単位で続いた結果重みで洞窟がもたなくなったらしいのです。


 洞窟が潰れる直前、とっさに結界を発動させ氷の棺に閉じこもったのはいいものの、突然のことだったのでうっかり魔力量を誤りやたら丈夫な結界になってしまったのだとか。


 丈夫すぎる結界は中から壊すこともできずどうしようかなと思っていた時期もあったようなのですが、すぐに諦め再び眠りについたと。


 そしてしばらく経ってから目が覚めると、今度は雪崩れに巻き込まれ数十キロを移動した後。そのまま川まで流され、川を凍らせながら進むうちにここの村人に拾われた、というのがここにいる理由らしいのです。


「ここにいる理由はわかりました。では、この村の人たちの反応がおかしいことに心当たりは?」


「冬だから、寝た。んと、です」


「……え、ええと? それはどういう?」


「寒いと、死んじゃう。でも、寝てると平気。ます。……? です? ます?」


「あのフラウちゃん、難しいのであればムリしてていねいな言葉使わなくても大丈夫ですよ?」


 『です』が正しいのか『ます』が正しいのかで悩むくらいなら、普通に話してくれた方が私としてはありがたいのですが……


 私としてはそう思ったのですが、隣をそーっと見るとシルフさんが厳しい顔をしてましたので、たぶんお説教になるでしょう。そういうところ厳しいですからね。シルフさんの中では、私にタメ口とかあり得ないとか思ってそうです。


 現に、唯一私に初対面からずっとタメ口どころか上から目線で話す大佐のこと、目の敵にしてますし。


 とか思考が逸れていたのが悪かったのか、いつの間にかフラウちゃんが舟漕いじゃってます。


「んぅ、眠たい……」


「が、ガンバってください!! せめて説明終えるまで寝ないでください!!」


 くあぁと大きく口を開けてあくびをするフラウちゃんは、本当にただのちびっ子に見えます。髪と同じ色の大きな瞳にはあくびをしたせいで涙がにじんでますが、それを気にすることなく話を続行する辺りも、なんとなく子供っぽいです。


 まあ、精霊さんたちに年齢の概念はないっちゃないので、見た目がいくら大きくても中身が子供だったりしてもおかしくないですからね。今のところ、精神年齢と肉体年齢がかけ離れた精霊さんはいませんが。


 というか、どれほど長く生きていても見た目に引っ張られるのか精神年齢が大きく変わった様子はありません。ヴォルトさんは存在した時点からあんな風におじさんな感じでしたし、逆にウィルちゃんは昔も今も幼女のままでほぼ変化はありません。


 精霊という存在が成長するのかどうかはかなり興味深いですが、今はフラウちゃんの話を解読する方が先決です。


 フラウちゃんは眠そうに目をこすってはいましたが、どうにか寝落ちまではいきませんでした。ただし、こんな謎なことは言いましたが。


「んと、なんかみんな、クマさんと同じになった。です」


「クマさんと同じ?」


 ますますわけがわからなくなって来ました。冬だから寝る、寒いと死んじゃうけど寝てると平気、クマと同じ……


「あ、もしかして冬眠ってことですか!?」


「ん」


 確かにクマ冬眠しますけど……どうやら、冬眠というワードがパッと出て来なかったんでしょう。


「ミー様、ボク帰る。です」


「ちょ、ちょちょっ!? 待ってくださいなフラウちゃん!! いきなり氷山の方へ歩き出すのやめましょう!! まだ話終わってないです!!」


 本当に。ほんっっっっとに自由ですねこの子は!!


 不思議そうに首をかしげていますが、なんでそうも全部話したぜスッキリ! みたいな顔してるんですかあなた。全然終わってませんよ。


「どうしてここの村人は冬眠したんですか?」


「冬だから、です」


「いえあの、そもそも今現在季節は真夏です」


 この世界に北半球とか南半球の概念があるかどうか以前に星が丸いのかどうかすら不明なので断言はできませんが、この世界は現在時点で全国的に真夏です。いや全国的ってのも違う気もしますが……とにかく、私の知る限り星中が真夏です。


「冬は、寒い。今、寒い。だから冬。です」


「その三段論法間違ってますから……!!」


 微妙に間違ってないような気もしますが、とにかく今は冬ではありません。夏です。


 本気でわかってないのか、フラウちゃんは不思議そうに首を傾げています。


「冬、寒いから起きてるの大変、です。だから、みんな寝た、です」


「ええと……つまり、周囲の気温が急激に下がったせいで生命維持が難しくなり、なんらかのセーフティが働いて村人全員冬眠状態になった、ということでしょうか」


「そんな感じ。ます」


 要するに、フラウちゃんが意図せずしてこんなところまで来てしまったせいで、辺りに妙な影響が及んでしまった、ということなのでしょう。


「なら、フラウちゃんがシウス氷山に戻れば全部元通りってことですね?」


 それならよかったと思ったのですが、フラウちゃんは首を横に振りました。


「一気に暑くなると、色々危ない、です」


 確かに、いきなり気温が十度も二十度も上がってしまえば、あちこちで色んな問題が起こってしまうでしょう。下手をすると、この辺りがもう人の住めない不毛の地になることも考えられます。


 ならゆっくりと時間をかけて戻らなくてはならないわけですが……その辺り、どうしましょうねぇ……?


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