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百十話 特徴的過ぎます

 以前はどちらかと言えば穏やかだった人たちが、突然イライラして怒りっぽくなる理由。あるとすれば、いったいなんでしょう?


 カルシウム不足……ではないでしょう。精霊さんたちは基本的に食事を必要とせず、カルシウムうんぬん以前の問題です。そもそもカルシウムと怒りっぽくなることの因果関係って、科学的にハッキリ立証されてたか怪しいですし。


 となると、なにか他に個人的な問題を抱えていたとかですかね……?


「ヴォルトさんは、なにか最近変わったことなどはありましたか? どんなに細かいことでもいいので、おかしなことがあったら教えてください」


 とりあえず私がヴォルトさんに、シルフさんがドリアードさんにそれぞれ訊いてみることにしました。クロノスくんはドリアードさんの方に行きましたが、ルナちゃんはこっちに来ましたので二手に分かれた形になります。


 そんなわけでヴォルトさんに訊いてみますと、うーんと悩み始めました。ドリアードさんと距離を置いたせいか、さっきよりもイライラは治っているようなので安心です。


「最近……どれくらいが最近なのかはわからんですが、ふた月ほど前は含まれますかい?」


「ええ」


 人間的にはギリ微妙なレベルですが、精霊さんたちにとっては充分最近の範疇です。


「でしたら、変わった酒を飲みましたっけねえ」


「変わったお酒、ですか?」


「わしは基本的に、あの山の向こうに住んどるんですが」


 そう言って指差したのは、闇恵山でした。ここからだと遠くて霞んでいますが、方角からして間違いないでしょう。


「住んどるというか、寝ぐらがあるんです。でそこに二月くらい前に、妙ちきりんなナリの人間が来ましてねえ」


「妙、と言うと、具体的には?」


「なんかこう……真っ黒い見たこともない服でしたよ。そんで頭にはおんなじ真っ黒い帽子が乗ってて……平たい皿の上に逆さにしたコップ置いたような、とにかく変な帽子で」


「お皿の上に逆さのコップ……?」


 つまり丸いツバに、円筒形のものが乗っている、ということになります。


 その説明で私が思いつく帽子なんて、一つしか思いつきません。


「まさか、シルクハットにタキシード……」


「なんスか、そのどこぞの怪人みたいな格好。上だけしか隠れない仮面つけてたら、完璧ッスね!」


 それ、私も思いましたけど。今ではなく、最初にその格好をした方を見た時に。


 いえでも、いくらなんでもおかしいです。だってもしその人物が私の思った通りの人だったとしたら、時系列がメチャクチャになります。あの人……人かどうかは微妙ですが、あの方が二ヶ月も前にヴォルトさんに会えたわけがないのですから。


「あ、あと、かけている意味があるんかないんかわからん、片方だけのメガネかけとりました」


「追加情報がドンピシャ過ぎますよ!」


 シルクハットにタキシード、更にはモノクルだなんて、マジモンの怪人やって来たわけでもない限り、一人しかいないじゃないですか!


 ま、まだそうと決まったわけでは……なんかこう、そう! どこか遠い国で流行ってる人気の服なのかもしれないじゃないですか! どこかの国の貴族に大好評、みたいな!


 ……我ながら、ずいぶんとムリヤリな可能性でした。ないですね、どう考えても。


 それに一つ引っかかるところもあります。私の記憶が確かなら、あの方は黒ではなく白い服を着ていたはずです。とすると、よく似た別人……?それはそれでイヤですが……


「ちなみにその方、なんて言ってお酒をくれたんですか?」


「たしか……『これはとても珍しい酒で、めったに手に入らない』とか、『とても美味い酒で、我の特別製なのだ!』とか……」


「また余計な追加情報が……」


 これ、もう確定しちゃっていいですかね? あちこち違和感はありますが、ほぼほぼ本人と見て間違いないと思うんですよ。


「センパイセンパイ、あたしそんな感じの人、最近見たような気がするッス」


「奇遇というかここでようやくですかと言いたくなりますが、私もバリバリありますよ心当たり」


 シルクハットにタキシード、さらにはモノクルに自分のことを我とか言ってる変な方。


「なんでこんなところにカーネル大佐がやって来てるんです……?」


「そうッスそうッス! そんな名前の白い人ッス! って、今の話の人黒いんじゃないッスか?」


「そこは私も疑問なんです」


 私たちがそんなことを話している横で、なぜだかヴォルトさんが難しい顔をしていました。


「カーネル、大佐……?」


「どうしました? なにか思い出したんですか?」


 ヴォルトさんはしばらく難しい顔のままでしたが、やがてポツリとこう言ったのです。


「わしが聞いた名前は違う名前だったはずですが……ええと、たぶん『カーネル中佐』とか、なんとか……」


「はい!?」


 なに勝手に昇進してるんですあの人!? 二ヶ月前が中佐でつい先日私が会った時には大佐でしたから、僅か二ヶ月の間に昇進してるってことですよ。なに基準なんです!? 上司的な存在でもいるんですかいないなら自己申告ってことになりますけど!! ていうかそのせいで大佐被ってたんですか!?


 謎は深まるばかりでしたが、一つわかることがあります。お二人のケンカに、カーネル大佐が関わっている、ということです。


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[気になる点] 「わしが聞いた名前は違う名前だったはずですが……ええと、たぶん『カーネル中佐』とか、なんとか……」 「はい!?」  なに勝手に昇進してるんですあの人!? なに基準なんです!?  降格か…
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