ホピ族の言い伝え・世界の創造と第一世界の破滅
さて、文字も学校もないホピだが口伝によりこの世界の創造の様子が伝わっている。
ポピの一族と認められた俺はグランドマザーよりその話を聞いていた
「この世界の最初は無限宇宙と言われています。
そしてこの時に存在していたのは全ての創造主タイオワだけでした。
このときは始まりもなく、終わりもなく、時間も空間もなく、
形も生命もなく星々もなく山も平地も海もなかったのです。
これでは何もできないと困ったタイオワは有限を生み出したのです。
それが創造主の息子のソツクナングです。」
なるほど無限から有限をどうやって造り出したのかは全く想像がつかないが、人間ごときには理解できないのだろう。
「タイオワはソツクナングに命じられ、土を集め九つの星を作り上げたのです。
一つはタイオワのため、一つは自分のため、
そして七つの宇宙は後に生まれる生命のために」
9個の星と言うのは太陽と水金地火木土天海の惑星のことかな?
そういえばタイオワは太陽でもあったんだっけ。
「ソツクナングはタイオワにタイオワの意思にそっているか確認を取りながら
自分の作り上げた星に水や風をつくりだしたのです。
タイオワはこれを大変喜びました。
やっとこれで生命を生み出し育てることができるようになったからです」
俺はグランドマザーの言葉に頷いた。
「そうやって俺たち人間が生まれたのですね」
グランドマザーも頷きながら言葉を続けた。
「はい。
ソツクナングは、地球と呼ばれる星の上に降りて蜘蛛女を作り出し
彼女を目覚めさせました。
そしてコクヤングティに物質、空間と時間、始まりと終わりはあるが、
生命がまだないことを説明し、それが生まれるために
必要な動きと音がないことを告げました。
コクヤングティには生命を創造する力と知識を与えたのです。
コクヤングティは土に唾液を混ぜて、双子を作り出しました。
双子はポカングホヤとパロンガウホヤと名付けられ、
ポカングホヤには動き、パロンガウホヤには音を授けました。
ポカングホヤは土を動かして地球に固くて高い高い山々と
低くて柔らかい平地を作りました。
パロンガウホヤは、地球をの隅々に声を響き渡らせ、
その音により星は揺れて傾きました。
そして全世界に歌が響くようになったのです」
「音はその時に生まれたのですね。
では踊りは何時生まれたのでしょう?」
俺の質問にグランドマザーは言葉を続けた。
「山や大地や音が整ったあと彼等はコクヤングティに命じられ
ポカングホヤは北極に、パロンガウホヤは南極に送られて、
二人で星を常に同じ速度で回らせる役目を負わせました。
ポカングホヤはまた、地球を常に丸い形に
パロンガウホヤは、風をタイオワの望むように
秩序正しく動かし続ける力を与えられたのです
そしてコクヤングティは生命の想像に取り掛かりました。
まずあらゆる種類の植物を土から創造して生命と名前を与えたのです。
次にあらゆる種類の動物を土から創造して生命と名前を与えたのです。
世界を美しく彩るこれらにタイオワはたいへん喜びました。
そして最後に人間の創造に取り掛かりました」
「いよいよ俺たちが生まれるんですね」
「はいコクヤングティは、今度は赤・黄・自・黒・青の色の土を集め、
唾液と混ぜ合わせソツクナングそっくりの男を作り出しました。
次に、コクヤングティは今度は赤・黄・自・黒・青の色の土を集め、
唾液と混ぜ合わせ自分の姿に似せてさらに女を造ったのです。
これが最初の男女となります。
彼女は彼等に声をかけました
しかし、最初の人々は、彼女に答ることができませんでした。
彼等は会話ができなかったのです」
「なるほど、それは困ったでしょうね」
「はいコクヤングティは父であるソツクナング
に相談をしました。
彼等に話す力を知恵と創造主に感謝する心を与えてほしいと。
相談されたソツクナングは互いの違いがわかるよう、
肌の色に従って違った言語を与え、
知恵と感謝の心と踊りを与えました。
そして彼等は地上に増え始めました。
ソツクナングより知恵が与えられ、彼らは星が自分たちと
同様に作られた生き物であることを理解していました。
大地は母であり我々のためにトウモロコシが作られたのです」
「ありがたいことですね」
「はい、最初に作られたものは病というものを知リませんでした。
その為最初の人たちは長く生きることができました。
人間はあちこちに増え広がり神への感謝を忘れず、
幸せに生きていました。
この頃は肌の色も異なり、言葉も違っていたのですが、
話さずとも互いに思ったことを理解することができたのです。
また人は鳥や獣などとも意志を通じることができました。
しかし、何時からか、創造主タイオワを
敬うことを忘れたものが出てきました」
「やはりそうなのですね」
「はい、嘘という悪が世界に入ってきたため、
人は体や心に病を生じるようになり
長く生きることができなくなったのです
動物と心を通じることができなくなり
動物は人間から逃げ始めました。
人間も互いに争い始めました。
違う民族と言葉の者たちが争い、
カトヤという美青年が大きな頭をもつ蛇の姿をして現われ
彼はさらに人々を互いに引き離し、
神より与えられた知恵から遠ざけたのです。
人々は互いを疑い、非難し合って、
ついに暴力に訴えて戦い始めたのです。
世界中が戦いの渦に巻き込まれました。
そんな世界でも、創造主の教えを守って行きているものはいました。
そういった者のもとにソツクナングはやってきて、告げたのです。
”私はこの世界の状況があまりにもひどくなったので
そのことをタイオワに告げた。
私の言葉を聞いたタイオワは、この世界を滅ぼし、
タイオワの教えを守るあなた方が
新しい世界で生きられるようにせよと言われた。
歌があなた方を導くだろう、雲があなた方を導くだろう、
星があなた方を導くだろう。
何ももたずにタイオワの導きに従いその地に行きなさい。
星が止まるときに、あなた方の旅は終わるでしょう”と」
「彼等は、ソツクナングの言葉通り、歌と雲と星に導かれて旅をしました。
ソツクナングの声が聞こえなくなったものは、彼らを気が触れたかと嘲ったのです。
彼等には歌は聞こえず雲も星も見えなかったのです。
しかし、歌を聞くことができ雲と星を見える人々を
信じてついてゆく僅かな数の人々がそのたびに加わりましたがいた。
長い年月の旅の末に人々は集いました。
彼らは、違う肌の色とと言葉であっても
同じ神を信じる心をもっていることを知り喜びました。
しかし青い肌のものはそこに加わっていませんでした」
「なるほど、青い肌の人間はすでに全員神を
信じなくなっていたのですね」
「はい、神を信じるものが全員到着するとしたとき、
コクヤングティが現われ蟻人間の住む大きな塚のところまで人々を導くき
蟻のキバに入りるように指示しました。
そして、蟻人間たちから教えを受るように言ったのです。
蟻人間はとても働き者で冬のために夏の間食物を蓄えることをしっていました
そこで、選ばれた人々が地下に下り蟻人間に生き方をおそわっているころ
タイオワはソツクナングに世界を滅ぼすよう命じ、
命じられたソツクナングは、世界を火によって滅ぼした。
火山の口を開き、火は下からも上からも噴き出て、
地のキバの中に避難した人々以外はみな死んでしまった」
「あれ、動物とか植物はどうなったんでしょう?」
「……」
そこまでは伝わってないということかな?
「今日はこのくらいにしておきましょう」
「わかりました、ありがとうございます」
俺はグランドマザーに頭を下げた。




