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なぜかハーレムが作られ……

「おおおお……大前さん!」


 ミヤの声は震えていた。


「ななななな……なんですか、このかわいうるわし美少女は!」


 部屋に招かれ、頭からかぶせていたマントをとった途端だった。

 ミヤは、まだ玄関先で靴さえも脱いでいない、青い髪の少女に飛びつくように抱きついた。


「うわわわわわっっっ! やばい、やばいですよ、この子!」


 そして今度は両手でアズの肩を掴み、その驚きのあまり呆然と固まっているグレーの明眸を正面から見つめる。


「超きれいなサファイアの髪! 真っ白な肌! 整った顔つき! 実はミヤ、自分がかわいいと自負しておりますが、今始めてそのことを恥じる想いですよ!」


 自分でかわいいと自負とかすごいが、正面から負けを認められるところもすごい。

 この前、酒を飲みながら話していてわかったが、彼女は良くも悪くも本当に素直なのだ。

 それがわかってから、オレは妙にミヤを気に入っていた。

 彼女の入社当時は、単に「かわいい」と思ったので粉をかけていた。

 今考えれば、別に好きだったわけではない。

 だから、異世界に行くようになってからは、今度は単なる同僚としてしか見なくなっていた。

 しかし、今は友達として仲良くなりたいと思うぐらいの好意は持っている。


「……はっ!」


 アズが突然、我を取りもどしたのか、ミヤの手を振りはらってオレの背後に身を隠した。

 気のせいか、微妙に震えてる感じがする。


「ちょっとミヤちゃん。怖がってるから」

「あやや。ご、ごめんね、アズちゃん。……って言葉わかるのかな?」


 少し気まずそうにしながらも、ミヤは合掌ポーズで謝ってみせる。

 しかし、アズはオレの背後からなかなか出てこない。


「言葉は大丈夫。こちらに来た時に、オレみたいにわかるようになるらしい」

「おお! ラノベでありがちなご都合主義ってやつですね!」

「身も蓋もないな、こんちくしょう……」

「あははは。いいじゃないですかー」

「つーか、アズ。大丈夫だ。彼女は【神寺 宮】」

「ミヤって読んでね、アズちゃん。ゴメンねぇ。アズちゃんがあまりにかわいいものだからさぁ……」


 そこでやっとアズが、オレの背後から顔を少し覗かせる。

 そして、上目づかいでオレをうかがう。


「アウト様。失礼ですが、どのようなご関係の方なのでしょうか?」

「アウト様? え? 大前さん、アウト様なの? なにそれ、かっこいいです!」

「なんで、かっこいいんだよ!」

「なんとなく。……でも、なんでです? なんでアウト様なんです?」

「最初に異世界に行った時、本名の現人(あらと)とアウトランナーを混ぜられて覚えられたんで、まあそれ以来……」

「アウト様の本名は、あらと様なんですか!?」


 今度は、後ろでアズが驚く。

 というか、お互いに説明が多すぎて、このままだと話が進まない。

 いつまでも玄関で話していても仕方ないので、とにかくおじゃますることにした。

 廊下を抜けてリビングに入ると、ビックリするほどきれいに片付いている。

 どうやらミヤは、掃除などはきちんとやるタイプのようだった。

 そう言えば、職場でもコーヒーを入れるだけではなく、流しの片付けや荷物整理なんかもけっこうこまめにやっていた。

 テーブルにとりあえず招かれたので、椅子に腰かける。

 するとティーパックだが、紅茶を入れてくれた。

 アズには、ホットミルクが用意された。


「えーっと。さっきの話だけど、ミヤはアウトさんの職場の後輩。つまり仕事仲間ですよー」


 オレの正面に座ったミヤが、オレの隣でミルクを飲むアズをニコニコと観察するように見ながら答えた。


「つーか、なんでミヤちゃんまでアウトなんだよ!」

「えー。だって良いじゃないですか、その呼び方。ミヤもアウトさんって呼ばせてくださいよ」

「……会社ではやめろよ」

「もちもちもちろん!」

「くっ……調子良いな」


 ミヤと二人で顔を見合わせて、少し笑い合ってしまう。

 なんか先日、腹を割って話したせいか、ミヤとはかなり気楽に話せるようになっていた。

 こんな風に気楽にミヤと話すのは、なかなか気持ちいい。


「…………」


 だが、その様子がアズには面白くなかったのか、少しだけ不満を目許に浮かべた。


「……ご挨拶が遅れました」


 アズは飲んでいたホットミルクを置くと、椅子から降りて優雅に頭をさげる。


「わたしは、【イータ・アズゥラグロッタ】と申します。……アウト様の許嫁です!」


 アズにしては強い自己主張には、ミヤへの対抗意識が見て取れた。

 完全に宣戦布告である。

 しかし、それを受けとった方は、別の要素で萌えていた。


「いっ……いっ…………許嫁キータァァァァー!!」


 予想外のミヤの興奮に、アズはまた呆気にとられる。


「さっすがー、アウトさんですよ! ラノベの定番をかたく押さえましたね!」

「別に押さえようとして押さえたわけじゃねーよ!」

「……よし! ならばミヤも、アズちゃんと一緒に許嫁になります!」

「…………はい~ぃ?」


 ミヤがまたわけのわからないことを言い始めました。


「だって、ラノベならハーレムが定番ですから。ミヤもアウトハーレムの一員になりますよ!」

「い、いや、ちょっとぉ~? 別にハーレム募集してないぜ?」

「なに言ってるんですか! 異世界とチートとハーレムはお約束ですよ!」

「お約束なんかどうでもいいけどさ。……つーか、君はそれでいいの!? オレのハーレムだぞ!」

「……わりと嬉しいです」


 ミヤがちょっとだけ頬を染める。


「ハーレムに参加すると、まさに自分も異世界メンバーみたいじゃないですか。それに、けっこうミヤはアウトさんを気に入っているんですよ!」

「…………」


 そんなことを正面から言われては、オレとしては言葉もない。


「――と、いうわけで、アズちゃん。私もアウトさんの許嫁仲間に入れてください!」

「……わかりました。そういうことでしたら、よろしくお願いいたします」


 あまりにすんなり認めるアズに、オレが驚いてしまう。


(それでいいのか、二人とも……)


 なぜか本題が進まず、代わりにオレのハーレムが作られ始めたのだった。


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