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美少女二人と同棲してしまったのは……

 今日は残業だった。

 このオレが自分の仕事が遅れではなく、他人の手伝いで残業をすることになるとは思わなかった。

 見直したぞ、オレ。

 すごいぞ、オレ。

 でも、疲れたぞ、オレ。

 週の初めから、こんな調子で大丈夫か。

 いや、大丈夫だ。

 今のオレには癒やしがある。

 そんなことを考えながら、オレはマンションのドアを開けた。


「ただいま」

「お帰りなさいませ、ご主人様」


 オレが玄関口に入るのと同時ぐらいに、奥からサファイアのような輝きのある長髪の少女が、スリップをパタパタとさせて走ってくる。

 その笑みは穏やかで微笑みに満ちている。

 もうその笑みだけで、オレの疲れが癒されてしまう。


「お仕事、お疲れ様でした」


 彼女はフリルの多いワンピースエプロン姿で、ペコッと頭をさげる。


「食事にします? お風呂? それとも、わ・た・し?」

「そりゃ、もちろん、すぐにアズを――じゃねーよ! 何教えてんだ、ミヤちゃーん!」


 オレは廊下の向こう側で、こっそり頭を出して覗いている【神寺 宮】をにやけながらも睨んだ。

 どうしてもかわいいアズの姿で、口元の締まりがなくなってしまう。

 青い髪の美少女がフリフリエプロンでお出迎えなんて言うシチュエーションで、にやけない方が難しい。


「えー。男の人は好きですよね、こういうの」


 そう言いながら出てきたミヤは、対照的に動きやすいジャージ姿だ。

 完全にくつろぎ着である。

 これは絶対に、アズを着せ替え人形にして楽しんでいる。

 オレの反応が予想外で、状況についていけないのか、アズが困惑した顔してオタオタする。


「ミ、ミヤ様。なんかアウト様が困ってらっしゃいますが……」

「――!?」


 ミヤの方を見たアズの背中に、オレは目を奪われる。

 真っ白な艶々していそうな背中も太股も、背後からは丸見えだった。

 隠れているのは、下着の部分だけ。


「ちょっ! ミヤちゃん、アズになんってカッコさせてんの!」

「裸エプロンですよ、裸エプロン。新妻ならこれですよね! しかも、こんな美少女幼妻に着せるチャンスなんてもうありませんよ!」

「だめ! つーか、年齢的にアウト!」

「大丈夫です、下着はつけさせてますよ!」

「大丈夫じゃねーよ!」


 気持ちはわかるが、オレには良識がある。

 そしてアズを守りぬく使命があるのだ。


「だってぇ、やりたかったんだもーん」

「つーか、そんなにやりたいなら、自分でやれば良いじゃんかよ!」

「えー。だって、どう見てもアズちゃんのがかわいいじゃないですかぁ。さすがのミヤも、これは認めますよ」

「なに言ってんの。つーか、ミヤちゃんも十分かわいいでしょうが!」

「……え?」

「とにかく、アズにこんなかっこさせちゃだめ!」


 そこまで言って玄関に上がる。

 遠慮しない。

 しばらくは、ここがオレの家なのだ。

 と、なんか雰囲気が微妙になっていた。

 ミヤが妙にモジモジしはじめて、一方でアズの顔がシュンと落ちこんでいる。


「アズは……こんなかっこ……かわいくないですか……」


 裸エプロンの幼妻が、服の裾を握ってくるのがかわいくないわけがない。


「かわいすぎるからダメなの! そんなかわいかったら……困るだろうが!」

「…………」


 ぱっと明るい顔に豹変するアズは、わかりやすくてかわいい。


「ミヤ様! わたし、ずっとこのカッコでいます!」

「うんうん。積極的でイイネ、アズちゃん!」

「ダメだって言ってるでしょ!」


 そんな会話をしながら、かわいいピンクの壁飾りがかけられた廊下を抜けてダイニングに向かう。

 部屋は、三LDK。

 ダイニングは八畳、リビングも一〇畳ある。

 そして、その他に六畳間が三部屋だ。

 もちろん、バストイレ別でついている。

 三人で暮らすにしても十分な広さである。


 ダイニングのテーブルの上を見ると、ビニールの買い物袋がいくつか並んでいる。


「頼んだのは全部、買っておいてくれた?」

「はーい。今日はアズちゃんと買い物にいっちゃいました」


 アズがミヤの言葉にコクリコクリとうなずく。

 つい声を出していいことを忘れていたのか、彼女は手ぶりで楽しかったことを伝えようとしてから、しばらくして慌てて口を開く。


「あ……。た、楽しかったです!」


 魔力がこもっていなくともかわいく魅力的な声だ。


「すごいですね、神の世界は! 本当に何でも簡単に手に入ります! お店の大きさにもビックリです。ちょっとした領主様の家よりおおきいかも知れません!」

「そうか。よかったね」


 嬉しそうに話すアズを見ていると、オレまでも嬉しくなってしまう。

 きっとこうやって思いっきり話したかったのだろう。

 ある意味、彼女にとっては、こちらの世界は楽園かも知れない。


「つーか、二人とも飯が作れないくせに『食事にします? 風呂?』とか聞いてくるなよなぁ」

「どーせ、アウトさんはアズちゃんか風呂を選びますよね? そこで食事なんて選んだら、とんだヘタレですよ」

「…………飯、作るわ」


 オレは机の上のビニール袋を手にとってキッチンに向かう。

 それが、この生活を始めるに当たって決められた役割なのだ。


(つーか、まさかこんな事になるとは思わなかったけどな……)


 そう。

 本当にこんな事になるとは夢にも思わなかった。

 まさか、アズとミヤの三人で同棲を始めることになるなんて……。


※2016/02/20:タイトル修正(熱があるとろくなタイトルをつけませんなw)

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