【1マサカ】 まさか妹が学校に行ったら、世界征服を企む悪の組織が壊滅していたなんて 【ナンテ】
人は、簡単に自分の習慣を直せないと言う。それが悪習慣であったでもだ。
別に悪習慣ではないが、俺の習慣と言えば、やはり通学を妹とする事だ。
かれこれ小学校の低学年の頃からだろうか。
本来、妹は内気な女の子だ。昨日の一撃による顎への鈍い痛みが未だに残っているが、あの様な凶暴性は俺にしか見せない。
そんな内気な妹が、無事学校に行けるようにと俺が一緒に向かっていたのだが、いつしかこれが当たり前になっていた。
一応、妹が高校二年に上がった時に友達と通わないのかと聞いたのだが、問答無用のデンプシーロールを決められている。
きっと、友達が居ないのだろう。可哀想な奴だ。
ちらりと横の妹を見る。いつも通り長い髪で目を隠して俯いている。
まぁ、決して友達が居ないわけでも無いようだし、本人のペースに任せているのが現状だ。
「しかし、一緒に向かってるのに静かですねぇ」
そういえば、すでにここに普段の習慣をぶち壊してる事象が一つあった。
「……おい、女。お前いつまでついてくる気なんだ?」
当然のようについてくる女性に対して、白い目で問いかける。
「ちょ、女って言い方は酷いんじゃないんですか!?」
怒りでツインテールが上へと持ち上がる。その様はまさしく某三分間限定超人に出てきた怪獣の様だ。
「私にだってちゃんとプリティーキューティでブリリアントな名前があるんですよ!」
アニメや漫画だったら、頭の上にプンスカとでも出るのだろか、こちらに詰め寄りながら早口でまくしたてる。
「ほう、ならぜひともそのPCBなお名前を教えてくれよ」
「え、それは、機密事項です」
「よし、お前は女Aだ」
「酷いですよ!?」
残念ながら当然である。
「じゃあ村人C」
「いや、村人じゃないですから! というか、Bはどこにいったんですか!?」
細かい事を気にする女だ。そもそも名前が教えてくれないのに、どう呼べというのか。
結局、登校中はそんな彼女の戯言を聞いている内に、学校についてしまった。
結論、彼女は機関さん(笑)という名前で決定にしておく。
「じゃあ妹、放課後な」
妹は黙って首を縦に振る。すでに内気モードに入っている。本当に大丈夫なのだろうか。
妹と共に校門を跨いだ瞬間、不意に頭上が暗くなる。自分の耳が幻聴を聞いてないなら、何か飛行機のような物が飛んでいる音も聞こえている。
ゆっくり上を見ると、不安定に揺れる巨大な戦艦のような物が、煙を挙げながらグラウンドへキスをしようとしていた。
「おい待て、また突然」
言葉を言い切るよりも早く、戦艦が地面にぶつかった衝撃と爆風が俺の体を吹き飛ばした。
「う、うおおお!?」
地面を数回転がり、外周の壁に叩きつけられる。
痛さにのた打ち回っていると、上から声をかけられる。
「いやぁ、思っていたより、現象の発生が早いですねぇ」
見上げると、機関さん(笑)が携帯電話を片手に、グラウンドを見ていた。
「おい、一体なんだって言うんだ」
俺の問いを無視して、彼女は電話を掛け話し始める。周りの雑音も相まって何を会話しているのか分からない。
周りでは人のうめき声と、激しく炎がその姿を海にかえようとしているのにずいぶん余裕そうである。
痛みをこらえて、起き上がり妹を探す。
辺りを見回せば、あっさりと見つかった。
そこだけ、炎はその凶悪な熱を振るわず、何も焼いていなかった。
その場所だけ、空から降ってきた凶器は物を壊さず、静かに地に落ちていた。というか、触れた瞬間に粉々になっている。
青白い光の玉に包まれた妹が、そこに居た。