彫文字
回るのは指先
頭は画面をとらえるだけで
心は動かない
好きなように好きなことを
好きなだけ打ちつけて
紡いだ言葉、まるで別人の顔
私の字はどこへ行った
こどものころに指の腹を
指の先が丸く擦れるまで
何度も何度も書けた文字は
どこへ行った
活字になればなんとなく
それなりに見えて
強気になって言葉はふんぞり返る
尖った言葉に切りつけられて
流した涙は芝居じみて
終わりのない
絵空な歌をうたっていたよ
私の字はどこへ行った
あのころの指先の名残は
もう一度言葉を心をこめて
一文字一文字彫りこんで
捧げよ、とつぶやいた