「プロポーズ」
1「前夜」
僕と彼女は来世では会えなくてもいい。二度はきっと無い。別れても幸せだと思う。それぐらい分。きっと、僕と彼女は分かりあえた気がした。価値観も死生観も。そして存在意義も分かりあえた。僕達は「普通のルックス」の「特別な恋人同士」だと思う。
風呂上りに一番安い酒を飲んでいる。安い上品な酔い方が出来ない気がする。そんな酒の味を堪能している。ただ万遍なく注がれる冷たい熱が、窓から部屋にいる我が身へ注がれる。
独りで甘いものなどを食べている。今日は家族がいない日だ。照明を付けなくても済むくらい明るい昼。夜は多分、今宵も僕は訪れると信じている。それは僕にとっての希望的観測だけど。何時逝くのかは分からないが、いずれは「明日」は来ない日が来る。それは事実だ。何故か身内は来世でも巡り会う気がする。もしあるとするならばそう思う。しかし、彼女とは来世があっても会いたいとは決して思えないけど。僕が何故そう思うのかは未だによく分からない。酔ってきた為に、ぼんやりと霞のある世界になってきた。
何時も素面では臆病じみた感じがする。僕は醜い程、滑稽な程に僕一人でいると、死への強靭な恐怖感を時々感じる。それが幼い頃から腐心して悩んでいた。それは今でも思い出せる。僕はきっと、感情的には子供の時も死への恐怖心が根強くあった。
そんな僕の不確かな記憶を思い出せる。しかし、その僕が子供だった時の「死生観」の始まりは、僕の思い違いかもしれないけど。
そんな感じで僕は不安な時になると、彼女の懐かしいメールを見る。すると、僕の死への恐怖心が幾分かは和らぐ。寝る前に少しだけ酒を飲む。安い酒でいい。酒のわびさび等、僕には分からない。ただ僕の場合は、寝て、朝起きれば「死への強靭な恐怖感」は全て忘れるから。現実問題以外の下らない悩みは全て忘れられる。しかし、死への強靭な恐怖感に対して、僕にはまだ答えは出せない。僕の人生上の重大事項。彼女もそう思った事があると教えてくれた。
ただ、僕と彼女が、前回会った時に、彼女も僕と同じ「死生観」だと思うと言葉にして言っていた。ニュアンスで何となくは共通するなとはお互い思っていたけど。改めて確認が出来たのは良かったと思う。ただ彼女は僕よりは強いし賢明だ。二人はしかし、互いひ必要な他人と、ただ一緒にいたい相手がいる。それが幸せだと思った。
彼女は忙しいらしく、仕事の連絡が入って今日は会えないみたいだ。寂しいけど仕方がない。逆に一日で決めようとしている。一緒か別なのかと言う事は。
彼女は明日の昼間に会いたいと誘ってくれた。それ次第で僕は彼女と一緒にいるか別離するのか決定する。明日になれば、勿体付けないで思うと、僕と彼女は「恋人」でなく「夫婦」として生きていくか催促された。それだけの事なのだけど。
二人で生きていく事はとてもいい事だと思う。ただ、こんな状態で僕は彼女と結婚するのかどうか迷っていた。「昨夢」の中でも悩んでいた。
僕達の今の幸せの答えは二択しかない。どちらが幸せなのか今日中に片を付けたい。
2「昔の日常」
今日も天気予報では予言された雨の降らない時間を確認してから、家事手伝いをしようかなと思った。家族用の衣服を適当に洗剤を使って、洗濯機に衣服を詰めた。しかし、詰め過ぎにした為か、中々調子よく洗えない気がする。
これはただ単に下らない妄想を日々考えている。その妄想中に感じる音を聞いた。この洗濯機の音。かなり、悲鳴を上げている。非常に家の洗濯機は怒っている。現役を終えるか、ストライキするのか分からないけど同じ家にいる残り時間も近そうだ。毎日毎日稼働するのは、嫌だろうなとは察している。この洗濯機にとっては、この毎日の稼働はある意味で「虐め」に等しいのだろうとは思うようになってきた。僕も流石に可哀想にと思いながら、それでも今日も洗濯機は稼働している。僕のせいで。僕は多忙な掃除機が自ら回っている間に、何時も近くのスーパー等で買った菓子パンと野菜ジュースを飲みながら今日も昼飯を終えてテレビを見ている。見たら面白いし、見なければ人生に付着しないだろうなというテレビを見ている。母親は買い物に行き、昼食後は母親の自由時間だ。僕も同じくだけど。
恥ばかりの「失敗」が多すぎて困っている。その一番の例はやはり虐めだろう。
その滑稽で貧弱なエピソードは笑える程ある。今となればネタにできる。噂は真実。それを認めて少しでも成長していければそれが何よりも収穫だと思う。おそらくだけど、僕は生きたいと言う願望は他人よりも数段強いだろうとは思っている。
現実的に振り出しに戻るが、洗濯機も生命と同じように意識があるなら、きっと僕は洗濯機と気が合う気がする。役目が終わるまで動き続けるのだろうと思うから、共感できる部分もある気がする。しかし、最近、この毒な家電は一番つらい役回りは、この洗濯機ではなく、他の家電なのかもしれないと思うようになった。最近になりそれに気が付いた。その家電はやはり冷蔵庫だろう。年中無休はかなりこたえるはずだ。しかし、僕は本当に冷蔵庫が一番家電の中でつらいと思うが、それでも活躍をしている。誰にも感謝されないけど、大切な役回りだ。電子レンジはさほど感情移入はしない。愛情は家電の種類により差別して注がれる。僕に愛情を持たれても大半の家電は嬉しくはないだろうけど。冷蔵庫は、何が哀しくて二十四時間動いているのか全く理解できないだろう。しかし、家電が「恩義」を電機メーカーの方々に対して感じていたら凄いとは思う。特にこの冷蔵庫が恩義を感じていたらと思うと、今のこの冷蔵庫も案外いい奴なのかも知れない。殆どの家で稼働している冷蔵庫は違う気がするけど。しかし、殆どの家にあるだろうと思う冷蔵庫達。その冷蔵庫達もメーカーさんに恩義を感じているのかもしれない。
しかし、感情移入も出来ない家電達も、毎日壊れないように動くのも疲れるだろう。感情移入が出来ない家電達はメーカーさんや消費者の方々に「恩義」を感じているのかどうかは分からないけど。
僕は流石に冬の景色には勝てないなと思う。雪が降る訳でもないのに、そこに辿りつこうと思っている。冷えた手羽先みたいに手先は冷たく、空気は綺麗だけど、何だか味気ない季節だ。銀河系の中心の太陽のご機嫌を損ねたかなと思った。すぐにまあいいかと思い直したけど。人生の希薄さが滲み出ている黒いコートに青いジーンズ姿。そして防臭処理している靴を履いている。靴下は一応履いているけど。色とりどりの手袋もしている。身内が起きていない時に寄っている場所がある。ただ、空気は太陽も見えなくする。黒い灰色の空は、意外と視覚的には案外暗くはない。街灯のお蔭だなと思った。
そんな季節を見出すと、僕の人生は反省と後悔が必要だ。太陽はまだ「始動」していない。でも、家を出た時からこの世界の視界は良好だ。
最近立ち寄るコンビニがある。そのコンビニではお姉様が何時も「店番」をしている。何時もワンパターンな買い物をする。暇な時に僕はお姉様の愛想のある笑顔を見てみたいけど、ただ僕は暑い中でお姉さんに会いに行く程、純粋な思いがある訳でもない。ただ何時ものように僕はアンマンと暖かい缶コーヒーを頼み、丁重に店員以上に丁重な態度で、会計をして貰っている。
僕は何時も見る番組で、僕はただの視聴者であるのに関わらず、テレビのキャスターの方々にも頭を下げている。そんな視聴者は余りいない気がする。万事が万事でそんな感じで挨拶をする。そして、お姉様と会えるのがまた明日も続けばいいなと思う。
コンビニでの温もりが外に出ると醒めてしまう。なら、最初から散歩しなくてもいいのかもしれないと思う。コンビニはまだ夜明けをしない。何時も起きているから。
お姉さんに綺麗ですねと何時か言ってみたい。
僕が思うにカウンターのお姉さんは35歳ぐらいだ。結婚指輪をしている。大人だなとその指輪を見ると実感して「おめでとうございます」とは思う。何が「おめでたい」のかは分からないのだけど。別に自分の幸せでないのに、何故かそう思ってしまう。
お姉さんの頑張りは僕ぐらいしか理解せず、他の客達はそう思わないだろうと思った。
お姉さんの夫は分かっているとは思う。
ただ毎日、冬の季節のみに「いらっしゃいませ」と「ありがとうございました」の繰り返しの僕と店員の女。他人だなと何時も思う。仲良くはならないのは分かり切っている。
僕は「僕」にやる餌も此処で買う。ただ寂しい為、人の温かさと人情味に出会う為に敢えてここにきている気もする。ただその女性店員にとって僕の存在は、別に意識はしていないだろうとは思う。もし、その店員に悪く思われても、今の僕なら多分、普通に落ち込む程度で済むかもしれない。しかし、僕にもそのお姉様の僕に対する不快感が、僕にも「理解」出来たとすれば、僕は仕方なく少し遠いけど、違う店で買い物をしようと思うだろう。
お気に入りの店員さんに悪く思われたとしたらの話だけど。ただ、違う店でも同じように僕の事を悪く思われていたら、多分、お姉さんのいる店に、また「知らない」振りをして買い物をしようとは思う。
こんな感じの器の小さい事は自分でも最近分かってきた。しかも、僕は大抵悩みを抱えているが、どれもこれも、本当に下らない悩みばかりで、僕は明らかに馬鹿だとはっきりと分かってしまう。
何時の世も「男」にはモテなくても「女」を選ぶ権利がある。逆も当然あるが。
強がりを思うならば、「男女」共にモテなくてもいい時代が訪れた。その事自体は嬉しい事だと感じる。しかし、僕の場合はやはり本当はモテたい。そう思うのだが現実を捉えると無理だと分かってしまう。そう気づくまで回り道をしたと思っている。
僕はそれならモテる為に、モテる努力を何かしているのかというと全くしていない。まあ、努力すればどんな男であれ、チャンスを掴めるだろう。チャンスを掴んだ「先駆者」の方々が、掴んだ時に必要な手段は「企業秘密」で教えては頂けないのだろうけど。
ただ僕は片思い同時進行して生きている。しかし、僕はすぐに思いが変わる。どうあがいても届かないと思ってしまうと次に行く。割り切りと案外純粋な思いが矛盾して成立する。
それを「善」である事は容易に理解できてしまう。僕のように、すぐ思いが変わるくらい変節男はいないだろうとは感じてはいるけど。ポリシーが無い生き方を「善」とする。今の言い訳に過ぎずと苦しい心の弁明だ。ただ賢明な処世術な気がする。ポリシーがストレスの元凶だと今の僕はそう考えるようになった。今の時間は瞬きをするごとに現世が見えてしまう。そんな馬鹿な事を思っているから何時までも成長しないのだろうと思うけど。
僕には意識している女はその店員でない。もう一人身近の女性がいる。
寧ろ、この女性の方が僕の本命なのだけど。
しかし、「本命」とも上手くは余り行かないのが辛いかなとは思う時もある。太陽が傾き過ぎて暗い夜空の時になった頃。僕にその本命からメールが着く。何時からこう思っていたのだろう。それを感じていた。そのメールを見て思い出せる部分がある。それは最初の男女関係を拒まれた「感覚」と一緒にいた時の「温かい記憶」などが思い出せる。
僕達はやがて「無」になる事時はどうなるのか分からない。僕と彼女が「叶った」時の記憶は思い出せない。出会いが会った数年後ぐらいだろうか。
僕と彼女は、男女の関係になるまで遠回りしていた。それが僕と彼女の優しさが空論ではなくなった日。お互いを直視して二人での生存生活を、真剣に考え始めてから変わった気がする。お互い未練が無い恋愛をしている。僕は少なくても現時点で、未練が無い恋愛程、素敵な恋は無い気がすると思っている。今まで付き合っていた女達の記憶よりも少し円熟みがある味わいを楽しんでいる気がした。最初のメールの文面を覚えている。
彼女は僕の物事の捉え方程、色んな変化を繰り返す僕の感性を面白がってくれた。
その時から彼女は僕に対して、きっと歯がゆさを思っていたのだろう。
僕が本当の恋人なれるといいなと言う期待感が彼女にはあり、特に僕の男としての実力に「歯がゆさ」を感じたのだろうと思った。
彼女は大学時代の友人に紹介をされた「女」だ。友人は彼女と別れたいと彼女に幾度も告げたらしい。その時の彼女は、友人と別れたくないとごねていたらしい。友人はそんな彼女の処遇に困窮していたらしい。友人は彼女にしたら残念ながら、友人の新しい女に愛情が完全に変わっているらしく、円満に彼女と別れたいと言っていた。
紹介されても今の僕では付き合える訳がない。それに写真を見て、僕でいいのかなと思うぐらい真面な女だと思う。思考回路を駆使しても結論は出なかった。だから、僕は紹介されるのは困ると伝えた。
しかし、その三か月後に、また僕は友人と飯を食べる機会があり、僕もその場で承諾しようと思った。真面な女だよと強く言われた。余程、友人は新しい女との関係が、切羽詰っている事を容易に察しがついた。今更だけど、僕はようやく友人に恩恵を返す事にした。友人は彼女の事を説明してくれた。
元アダルト人で今になり普通の世界に戻りたいが、タイミングを見失って生きていたらしく、しかも、アダルトの仕事を辞めてしまったと言っている。友人は今の彼女が、どんな職業なのか分からないと言われた。友人がどの分野で生きているのかも気にはなったけど、今となればどうでもいい気がする。
彼女はただ話し相手が欲しいと言っており、まずはメールだけならいいかなと思っていた。そして、慎重過ぎる僕でも何となく今回は期待してもいいのかなと直感が働いた。
それに僕は暇人な為、寂しさがまぎれると期待して承諾した。友人が二年続いた女だと彼女の事を言っている。しかも、友人は浮気しなかったらしい。奇跡はあるのだと思う。それぐらいいい女だと言うから少し緊張はしている。ただのイメージとしてはいい女。
それが彼女の第一印象だ。
彼女の写真とメールを見る限り、彼女はおそらく暗い感じで病んだ形跡もありそうな気がした。何となく人生を暗く思っているとは推察出来る。
彼女の顔を写真越しで知っている。ずっと彼女は「暗闇」を見ている目をしている。笑っている写真も物悲しい。快楽もあるけど、満たされていても、なお深い困惑している感じがする。その写真でイメージしている限り、どうやって独りでいる女に返事をしていいのか分からないけど、なるべく「事実」に触れない感じでメールを送った。彼女は真面目で浮気はする前に別れるタイプの女だと言っている。今は「表」の世界の仕事を見つけたし、今は明るい感じでも接客しているとメールで知らせてくれた。まあ、そんな感じで僕と彼女とのメールの本格的なやり取りは始まった。取り敢えず、アダルト時代の「源氏名」を教えて貰い、僕はニックネームを教えた。お互いそれが呼び名になった。
彼女曰く、友人との別れが彼女には、耐えきれなったらしい。友人には内緒にしてねと言われた。複雑すぎて僕はよく分からない。
ただ、彼女はその内、幸せになるといいなと他人事のように思っている。恋愛になりかけていたから、余計な事は言わなかったけど。まだただの他人だった頃だと思う。
そして、彼女は極度に不安の日だけ、誰かと手を握って落ち着きたいと思っているようだ。その日が近づいて、せっかくだし、一遍飯でも食べようかと言う流れになった。どんな感じなのかも面白そうだ。しかし、僕は、他人と飯を食うのも久しぶりで懐かしい。
初対面の前から僕は音痴な歌を歌っていた。当然、馬鹿だから恥ずかしいとは思わなかったけど。そして、僕が腹をすかして、外出をしようとしていた時に、父親から「彼女出来たのか?」と好奇的な眼差しと言葉をかけてきた。「友人だよ」と伝えて待ち合わせの場所に行く。待ち合わせ場所は近くの喫茶店。喫茶店で独り女がいる。その時にすぐに彼女だと僕は気が付いた。彼女は寒いらしく手袋をしている。眼鏡をかけている。白い吐息が暗さに拍車をかけている。ガラゲーをいじくっている。前まではスマートフォンを使っていたが、節約の為に替えたと言っている。その時の彼女は多分、誰かにメールを送っているような気がした。僕が声をかけた。
「初めまして」
彼女は僕に反応して、一秒越しに、声をかけてくれた。
「初めまして」
そんな万能な挨拶をしてから二人共、近くの喫茶店に歩いていた。彼女は29歳と言っている。僕よりも「若い」と思った。主に見た目なのだが。
下校中の学生さんや生徒さんの視線を感じながら振りほどいて喫茶店に着くまで会話をしていた。冬の空気は醒めきっている。せかすように僕と彼女は近づくのを阻む風。少し彩を加えた風の音がした。それを感じて風が季節を表現していた事にも気づいた。それは寂しい感覚だなと少しまたセンチになった。
僕は良く考えると、普通に飯を食べるのであれば、飲食店に行けばよかったと思った。
しかし、どうせ話しをするなら喫茶店が一番無難だろうと思った。しかし、僕は凄く緊張している。彼女は外の世界に、僕よりは幾分馴染んでいる感じがする。途中で彼女は僕の手を握ってきた。いちいち恥じらう事もないのだろう。元の仕事柄、それ以上の恥じらう性格でもない気がしている。
彼女が美人局でなければいいとは思っている。喉が渇く感じで思い出した。
僕は昔。どんな感じで「彼女達」と付き合っていたのか忘れてしまった事を思い出した。店の店員さんに席を紹介して頂き、大人しく二人は喫茶店に入った。しばらくはお互い身の上話をしたが、メールで情報は知っている為、あんまり盛り上がらない初対面になってしまった。僕は彼女の方に意識をしながらも、同時進行的に店員の女を見ていた。彼女も隣の席のイケメンの男を見ていた。相手以上の魅力がある異性に目が良く視線が移るのは自然界の法則。そんな気がする。そんな話をすると少し表情が自然になった。初めて普通に笑ってくれた。僕もいいなと思ったから少しだけ笑った。そんな馬鹿げた「男女論」を胸に秘めて僕は注文したアイスティーを飲んでいる。トーストも食べている。
彼女はカプチーノだ。それにトースト三つを食べている。
彼女は恋人たちが全くいなくなった為。実家以外に帰る場所が無いらしい。実家に帰ると煩いしとは愚痴をこぼす。僕は彼女に対して、やはり彼女は十分恵まれていると思う。
そんな愚痴を言いながら彼女は結局自分の住む実家があるから。彼女は感謝しているのかどうか分からない。身内に感謝が無い彼女は、正直、僕にとって凄く我儘な女だなという気がしたが、僕と話していて彼女はため息をついて、仕方なく実家に泊まると言っている。帰るのではなく「泊る」という発言が少し子供じみている気がした。その後はただ同じ喫茶店で週に一回は会う事にした。
店を出る前の空気は、ほのかに体温が温まる感じがしていた。会計を済ませて僕達は外の空気が美味しく感じた。
そして、少しだけ熱を伝える為に、彼女は僕の手を握っている。その後、何処に行ったか。関係はあったのかは、当然「秘密」なのだけど。
僕達はマンネリが好きなのかもしれない。彼女は「醒めたコーヒーみたいに、生温い空気が好きなんだ」と言っている。僕もそうかもしれないと思った。
僕は温かいコーヒーは猫舌な為余り好きではない。彼女も同じらしい。ただこの日は、珍しく会話が弾んでいた。その原因は単純。彼女が最高に明るい表情で自らの恋愛を澱みなくなく話していたからだ。「アダルトの仕事」の苦痛を皮肉で味付けして話してくれた。
僕は料理が出来ない故、どんな話をどう味付けして更に面白い盛り付けすればいいのかは分からなかった。
まあ、世間話をしようと思った。受けるギャグなど一つも持ってないから。
「僕の場合はストレスが溜まる時。何時も小さい問題で悩む時は、甘いコンビニのロールケーキを買って、楽しく過ごしていますよ」
「太らないの?」と尋ねられる。
「幾ら食べても太らない体質です」
「いいな。羨ましいな」
受けようと思ったこの話題も続きが無く沈黙の時間が過ぎていく。ただ二人共、飲み物を飲んでいる。ただこんな空気が僕は楽しく感じる。本音では彼女がどう思っているか理解できない。演技されたら見分けられる程、賢い知能など持ち合わせいないから。女は気紛れ。僕も気紛れだけど。
そんな彼女の視線は僕の網膜まで届いた。そして最終的には「肥満部」まで届いた。会計は一応僕が払う事にした。店から出ると、年月は早いなと思った。
出会ってから数年してようやく体はせめて昔よりは大人になった。彼女は距離を少し歩いていた。僕から視線を外した為、彼女がまたイケメンの男でも見ているのかと思っていた。どうやらイケメンでなく、彼女は烏が電柱にとまる瞬間を見届けていた。高性能のカメラのように一瞬で獰猛で知性も兼備した烏の姿を写した。
その写した瞬間は、僕にはもう正確には思い出せないけど。
彼女は仕事先でもモテると言っている。彼女は自慢が好きらしい。そこが笑えるのだが、笑った事はない。家で思い出すと少し笑ってしまうのだけど。
彼女がモテる理由はよく分かる気がする。顔でもスタイルが特段すぐれている訳ではない。性格的に彼女は清濁があるからだと思う。綺麗ごとも悪い事も良識として理解して生存している。それが魅力的な感じだと思う。外見は憧れの女と似ている。ただ僕が昔好きになった女とは違う性格的な違いを感じる。大人だけど、彼女の方が大雑把な気がする。それにまず「好意」がある事が最大の違いだと思う。勿論「好意」があるのは彼女で、昔憧れだった女は僕の「アンチ」なのだけど。それが少し今でも哀しい気がする。
その事を彼女に話すと、彼女は下らないと笑っている。明るくも哀しくもあるのが人生だと何時もホテルで教えてくれた。「指導」をされて改善していく技術面。それは「何の技術面」なのかは、現時点では言えないけど。ただ成長するのがいい事だと思う。
――暗闇で白昼夢を通り越した記憶が見える。笑っている女の方がいる。そこへ行くのは多分、夢の外でしかない気がする。それが「共有」だと思った。その記憶は「夢」だと気付く。夢の中では会える「女の方」がいる。会えない方が僕もいい気がするけど――
そんな夢から覚めてまた「今日」が来たのだと思う。それで生きている事を実感する。それが人生の繰り返しで終わりが来るから有難いと何時か思ってみたい。強がりでは僕は何時でも言えるのだけど。
彼女は震えた手を握っている。「会いたい」時は何時も、そんな感じだよという内容のメールをくれる。どんな感じかは、僕には何となく分かる。朝から震えていないで生きて行ければいいのにとは思う。彼女の事を強く言えない僕もいるけど。
実際に会ってから数年経ち、僕と彼女は下心さえも共有しようとしている。それぐらい親しくなれたのが良かったと思う。
ただその僕達の「下心」は「夢の中の女の方」とは全く関係はないのだけど。その「共有」は。今日はロールケーキを食べて家族と一緒にいる。まあ、多分、忙しいのだろうけど、彼女は仕事をしているから仕方なく、会えない時間は飲み会を梯子して、友人や同僚達と過ごすらしい。ただ浮気は無いのだろうとは思う。その感情を否定する事に対する我慢が本当に行動に移した時は物凄く「快楽」はあると推察できる。ただそれはルールだから守る方々は多いのだろうとは察する。
しかし、「女」という生き物は三割以上「好色」だと僕は睨んでいる。だから、僕と彼女との関係は、ただの彼女の演技で成り立つのかも知れないけど。まあ男性誌の見過ぎかなと思った。ただ、彼女は心を持たれていて少し楽だよと言っている。今日もメールが着た。
「私には白昼夢等要らない」と言う。本気かなと言う思いは僕にはあるけど彼女に伝えきれなかった。翌日、僕と彼女は、寒いイルミネーションの灯りは点滅しないまま、ずっと煌めいている。その景色を見送って、今は喫茶店以外の店を探しがてら適当に店を訪ね歩いている。勿論、この行動は意味は無いのだけど。偏屈なカップルだなと思う。
近くに居酒屋を発見してそのまま店に入った。暖房で少し暑い気がした。夕方の五時半だから結構空いていた。遠くのテーブル席に座り、お互い酒が運ばれたグラスを店員が持ってくれた時に、初めて僕と彼女は乾杯をした。
今年も仕事きつかったと言っている彼女。僕は分からないのが彼女に恐縮だと思うけど。近くの居酒屋で飲んでいる。彼女は年々色めき立つ存在になってきた。
身内と飯を食べてきた為、僕は食欲が珍しく無い。ただ将来の話も出てきた。あと数年したら真剣に考えた方が良いだろう。別れたらその悩みも闇に消えるけど。
それでもいいと思っているから、敢えて僕は無理だと伝えている。彼女も迷っているが取り敢えず僕と付き合っている。いい加減に答えを出さなければと思う。
そんな居酒屋で飲む酒は「前菜」に過ぎない。これからが恋人の醍醐味。その時間が味わえるから何時も楽しみなのだろう。イルミネーションが心に纏い付く。
僕はこれから快楽を求める。彼女は何時も手を握る。手袋越しの冷たい感触をしながら。答えはもうすぐ出したいが、それよりも快楽が深まる度に付き合いに深みが増す。ただ体温は伝わらない。今の僕達では。
出会ってから六年経つ。僕と彼女は何時の間にか、一緒にいるだけでいいと思えるようになった。僕は彼女に夢を託した。普通の方々のように生きられるという「普通」という希望を。今更、終わった時間が回復する訳でもない。ただ、彼女の休みの日は笑って過ごしたら、泣いたりもするセンチな時間を一緒に共にする。彼女の暗さは今も伝わるけど、それでも演技で接してくれるとしても大目で見たいと思うぐらいいなと思っている。今の僕。
「結婚はどうする?」と不定期に食事の時に聞かされたが、僕は無理だと思うと何時も伝える。ただ彼女の稼ぎはかなりある。元々「普通」に働く事も向いていたらしい。
そして、不定期に僕達は会っている。最近は僕が若くして「不能」になった為。半年ぐらいしていない。それでも、彼女もしばらくは「不能」でもいいよと言っている。快楽よりも心の繋がりが大切だと認識する。女にとっては不幸せで破局になるのは常識だという事は間違いない。
しかし、彼女はどうやら前の彼氏だった友人より、僕の方を大切に思っていると伝えてくれた。僕は彼女とは、出来れば来世では会えない方が幸せだろうと思う。もっといい男が出来た方が良い気もするし、それが僕にとっても幸せなのかもしれない。
彼女は三十五歳になり、円熟味が出てきた。
彼女は何時しかの「コンビニのお姉さん」を髣髴するぐらい更に魅力が増した気がする。出会った頃よりも、ずっと明るくなった事も魅力が増した部分ではあるのだけど。
今もコンビニのお姉さんはこの国の何処かで生存しているのだろうけど。今はもう会う事も「コンビニのお姉さん」の行き先には興味は無いし、何処かで浮き沈みながら生きているのだろう。この年齢になったのだと切なくなる。それも年のせいかなと持っている。
僕達はきっと、今しか味わえない時間を過ごしている。
笑いながら生きている。怯えながらでも生きていこうとする。
最近は仕事の「近所づきあい」も疲れると買っている彼女。僕は「自由」過ぎる為。それがより僕の人生の「闇」を麻痺していると思わせる。この空虚なマイナス思考の回路が、何時までも人生に付きまとう。そのような気がするが、少しは成長するから良いと思っている。今は僕もこんな感じで歳を重ねる。出来るだけ健全な成長を繰り返しながら歳を重ねたい。それが僕と彼女との結論になった。「生きる事」の答えは。
今は彼女の元彼の友人も賑やかに生きているようだ。たまに友人からメールが来る。勿論僕だけに。その友人とのメールを彼女は勝手には見ないだろうと思っている。
それぐらい気を許す関係になり、思考回路がまた一本。僕と彼女は繋がった気がした。
他人の事よりは自分が大事だ。「結婚して欲しいけど」と彼女は言う。本当に嬉しいとは思っている。しかし、僕は両親を見ていると結婚しない方が幸せな気がする。価値観が違いすぎる。多分、僕は彼女と同棲すれば長くても半年で別れる気がする。
きっと、もしこのまま二人で生きたいと思っても、長くは持たない。誰もが終焉していく命には追いつけない。それが少なくても僕の救いかと思っていた。
その終焉が何時なのかは分からないけど。それだから楽しいのだろう。それが慰めになってくれる。辛くても悔しくても。どんな感情も含めてそう思う。「無」になるのが慰めだと思っている事を。
彼女はアダルトの世界では無名だから、精神的にはまだ気楽なのか分からないけど。ある晩。珍しく喫茶店でなく彼女の実家で、二人きりの日を過ごした日。
彼女が作ってくれた味噌汁とご飯を二人で食べている時にこう言われた。
「結婚出来たら、私達は今よりも、もっと長く一緒にいられるかな?」と。
「このままが良いと思うよ」
「そっか……有難う。そうだね。あと少ししたら答えが欲しいな」
「分かった。その日まではこんな感じで会いたい」
「有難う」
彼女の思いが時が経つにつれて本気で好きになれた気がする。必要としてくれる事が特に僕には嬉しかった。だけど、このままの関係が最良だとは実感している。
好きなだけではこの先は行けない気がする。彼女はほろ苦く、切なく、また臆病な笑顔を見せてくれた。来年まで続けば、僕はその気になると思いたいけど。
もし、幸せを彼女が見つけたらと思う。もし、来年の今頃に幸せを彼女が見つけたとするなら、僕は関係を終わろうかなと思っている。綺麗事を言ってみても、やはり楽しかったから終わってもいいとは思う。
ただ生まれてよかったと思うように逝ければ、それが本当の幸せかもしれないと思った。きっと、僕はそんな感じを熟慮して生きている。しかし、彼女は完全に「大人」だけど、可愛い部分もあると思う。自然に滲み出る。
彼女は今でもたまに暗い時は寝られないらしい。鼓動が激しくなり、パニックになると言っていた。僕の場合は僕自身の事は全く可愛くは無い事は承知している。
ただ、気持ち的なニュアンスが良く分かる気がする。お互い常識が通用しない偏屈な優しさがある。それを無数の緻密な温かさで優しさをお互い表現して伝え合っている。
僕がまた情事に出来るように治療薬を変えて、また行為をした。その後仕事がない翌日に、一人暮らしの部屋で落ち込んでいたらしい。でも、彼女はまた「恋人」は出来るから別に寂しい気はしないからと言っている。しかし、もう明るいニュースが欲しいなと言われた。本音だろうなと思った。初めて僕は彼女の純粋な気持ちが伝わった気がした。
決意したから、僕が無意識に軽度のプロポーズをした。
「僕がまた『不能』になった時はどうする?」と。即、彼女に言われた。
「私も性欲が無くなる薬でも飲もうか?別れるまで」と。
僕達は少し笑った。お互い考える事も一緒かなと思った。僕にとっては凄くいい女だなと思う。他人から見ると、いい女かどうか分からないけど。そんな感じで僕達はしばらくすれば離れて生きていく。それだけは、間違い無さそうだ。だから、今は現実を見たくはない。来年の冬まで持てばよろしいのではないのかと思っている。
出来れば来年の冬まで持てば結論が出る。それがいい事だと思う。
3「今晩の答え」
吐息が白濁食色に染まる季節。今日は珍しく二人で冬の花見をした。主夫も結構似合うんじゃないと言われた事もある。僕は格好つけながら珍しく穏やかな気分だ。
彼女と一緒に暮らせるまで、こうしていたいと言われた。
身内との生活が終われば、僕はもしこんな僕でよければ、一緒に「家族」になりたい気がする。しかし、彼女はゲップをしながら、コーラを飲んでいる。僕もゲップをした。安心した時に僕達はゲップをするらしい。明るいものに憧れて、明るい方向に確実に進む。毎年、見ている公園の前のツリー。煌々と幸せに憧れを寄せるイルミネーション。カップル達は僕達と同じぐらい真剣さがあるのかは分からない。ただ同じ気持ちだ。好きな相手と一緒にいたいという気持ちは。彼女はもう終わったらしい。自分を苦しませる事を。色んな明るさがあるのはいい事だろうとは思う。僕は割とセンチだと思う。37歳になった彼女は、どんどん魅力が増す。冬になり、結婚のタイミングを待っていてくれる。「上手くなったね。誰のお蔭だと思う?」とそんな事を言う彼女は結構面白いと感じる。言わなくても分かっているだろうとは思っている。その時の表情が一番面白いと思う。「素面」になると、また冷静な話になる。彼女の髪は茶髪に染め直した。改めて彼女に「作品が売れなくて良かったね」と僕は言った。
「確かに……今の方が幸せだし。アイツの事も完全に忘れさせてくれた。本当に有難う」そんな事を聞いて少し涙が出そうになった。彼女の言った「アイツ」は友人の事だけど。彼女も服装は昔ほどダサくはない。カップルの方達は現代では毎日が華やかだと知っているから、華やかな雰囲気を出せるのだろうと思った。
雲は見えないが、確実に水蒸気は、吸い上げてくる夜。白濁食色の吐息はただ空へと流れていく。吸い取られていく。綺麗な吐息は天高く届くといいなと思っている。
笑っている時。泣いている時。怒っていた時。嘆いた時。ずっと、僕を受け入れてくれた時。せめて彼女が忘れても、僕だけは覚えていこうと思っている。
お互いの手が冷たくなるのは何時もの事。例え、彼女と手を握っていても冷たく感じる。お互い温かい手袋で繋いでも。その繋いだ温かさが、却って温かい熱よりも、孤独な冷たさをより一層感じさせると思う。
ただこの地上でずっといられる時間を大切にしたい。彼女はきっと人の温もりが欲しかっただけだろう。結婚すれば温もりが完全に伝わるのかもしれない。体温が本当に彼女に伝わるのが。年を重ねるごと屈折した季節も灯りが見えている。また今年もツリーがライトアップされる季節。別れが来ない事を祈っている。僕達も周りの幸せそうな方達や人達も。
通り過ぎるカップルの吐息が綺麗だ。イルミネーションには無い色だけど。
僕達は体温よりも温かい温もりを持てたら完璧だろう。僕と彼女の関係は少なくてもそうだと思い込みたい。
決心した。僕は初めて僕の方から彼女の手を握った。体温が何時もよりも心地よい。もう体温の温もりを超えた気がした。
僕と彼女は、月日を重ねて彩が増える。二人が眠る前に、ぼんやりと終焉に思考を巡らしてみた。僕は終わる瞬間。「無」になる時の最後に笑顔を見たい。「大切な方達」の笑顔が。
「幻想論」が崩壊する日。偉そうに、しかも僕達は気取らずに生きていくだろう。
何時も寝る前の「無」の景色が、極楽浄土に近いのかなと妄想をする。「無」からまた見える景色を見られたら、それが「来世」だと思っている。彼女には言った事はないのだけど。
離れた瞬間に、二人は思い出せないだろう。今日の手を繋いだ感覚と冷たい温もりも全て。
朝がある保証は何もない。だから幻想論で生きていきたい。「無」になるまでは。そんな小手先の思い出なく、彼女は指輪を渡してくれた。
「私は一緒にいて欲しい。もしダメなら別れたい」
僕は少し感動した。やがて会えなくなる日までは一緒にいたいと彼女に伝えた。
彼女は少し泣いていた。有難う。互いにそう思ったと思う。僕達の関係らしいなと思った。やはりこれからも少なくても僕は「幻想論」で生きていくのだと思った。
ファッションホテルまで行く際中。指輪を隠すような手袋。やはり僕の方から彼女の手を握った。やはり、その互いの手袋越しに「熱」が伝わった気がした。今まではとても冷たく感じたけど。明日になれば、また手を繋いでも、「熱」が逃げてしまうかもしれない。もう二度と手を繋いで温かいと思う日が来ない気がする。今夜だけは特別な気がした。
「幻想論」で生きぬく為の術を知りたい。「現実」を知っている彼女から手ほどきを受けながら生きていく。強靭な死への恐怖感が少しは落ち着く気がする。彼女は笑っている。「生きている間は幸せにしてあげるよ」と。それで凄く落ち着いた。
「有難う」
そう言ったら彼女は嬉しそうだった。余命は明日かも知れない。僕はそう思った。友人は二年続いた。それ以上の時を過ごせた。彼女は僕に明るい眼差しで僕に笑ってくれて言ってくれた。
「明日も一緒にいられたらいいね」
いい年こいた大人が言うセリフではない気がする。だから伝わる気がする。「今」いる時間が一番貴重であるという普遍的な価値観が伝わった。少なくても僕はそう思った。
僕達はきっと後悔したくはない。しかし、本当はもっと早く出会えたら良かった気がする。回り道したから逆に幼稚な感情も共有できるから、もっと前に出会っていたら良かったとは思わないけど。
「避妊具はもう必要じゃないかも知れない」
僕も彼女の発言の内容を理解した。すぐに意味を飲み込んだ。これからはきっと、避妊具は縁がないかもしれない。「死別する」までは「家族」になる。今日から「家族」なのだと僕は思った。彼女とのプロポーズを受け入れた日。だから、もう僕達は「家族」になるのだと思った。