化物と綱引きと決戦兵器
至らぬ所も多々ありますが(至らない所しかない)
ご愛読ありがとうございます。
それを初めて見つけたとき、俺は何処の荷物が紛れ込んだのか気になったのを覚えている。
部屋に無数に散乱する引越し用のダンボール。その中にあって特に異彩を放つ、インパクトの塊の様な段ボールが何故か俺の部屋にある。
段ボールの表面には、『割れ物』、『なま物』、『直射日光は避けてください』、『湿気のある所は避けて下さい』など、無数の注意書きが張られていやがる。
割れ物で生物で直射日光を避けるって・・・、一体何が入ってるんだ!
とりあえずアレだ、今直ぐ業者に引き取ってもらおう。
俺がスマホを取り出した瞬間、
『ガタガタ・・・』
・・・動いたよな?
今、このビックリ箱は動きやがったよな!?
・・・やばい、なんか凄く中見たいんですけど・・・
仕方ない、なんか怖いけど俺は手近にあった三天堂が発売する、某人気ゲーム機の細長いリモコンを掴んだ。これでまずは突っつく。
ちょん・・・
ちょん、ちょん・・・
ちょん、ちょん、ちょん・・・
ちょんちょんちょんちょんちょんちょん、ズボォォ!
・・・穴を開けてしまわれました・・・
「うっ、ガハァッ! ゲッホ! ゲッホォヴォォォ!・・・。くっ、くるしい・・・」
段ボールから呻き声が聞こえて来る、なんか俺のウェーリモコンがクリーンヒットしたらしい。
うん、とりあえずリモコン引き抜こうか。なんか段ボールさん日本語喋ってるし、話せば我が家から出て行ってくれるだろう。
力の限りリモコンを引き抜こうとすると、段ボールの中の住人は恐ろしい力で引っ張てきやがった。
「おい、貴様か、我の寝込みを襲う不届き物は・・・」
地獄の底から響き渡る様な声は、段ボールの中から木霊する。
・・・なんちゅうシュールな光景、一人暮らしの男子高校生が段ボールとリモコンの取り合いってwww
注:主人公は恐怖で正常な思考ではありません。
くっそ、彼女も出来たことないのに段ボール如きに殺されてたまるかよ!
俺は渾身の力を込めて引っ張る。
・・・しかし相手はそれ以上の力で引っ張てくる・・・
ミシミシ
わぁー、もうリモコンの原型とどめてねーよwww
俺もあんな風にグチャグチャにされるのかな・・・
その時、俺は閃いた。
(もう、このリモコンいらなくね?)
もうリモコンは見るからに再起不能である、こんな物を守る必要性が何処にあるのだろうか?
俺はそっと手を放した。
小学生の頃だったか、運動会の練習で悪ガキ共が結託して(俺もその一人)綱引きをしている最中に手を放すという事件が発生した。結果、怪我人15名、重症者2名(骨折)という大惨事となったのだ。
お陰でクラスは運動会の綱引きを出場停止にされた。尚、俺はこれから先何があろうとも、綱引きの最中に綱を放すなんて馬鹿な真似はしないと心に刻んだ。
・・・だがそれは人間に限りだ、
段ボールの化け物がどうなろうと知ったことではない・・・
俺が手を放した瞬間について解説しよう。
まず、謎の段ボールが綺麗な弧を描いて飛んで行った。その一拍後に謎の悲鳴が聞こえる。
「きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
可愛らしい女の子の悲鳴であることから、段ボールの悲鳴ではないだろう。
その後、段ボールは、引っ越し直後でまだ何も収納されていない、某ネコ型ロボットが寝てそうな押し入れに襖を突き破りダイブ。
辺りは埃が舞い上がり、ハウスダストが駄目な俺に間接的ダメージ。
あああ、目痒っ!
直ぐに近くに常備していたマスクとゴーグルを装備し(引っ越しの片づけするために用意してた)、埃の中へ生死確認するために向かう。
出来ることなら気絶しててほしい・・・
押し入れの中にはへちゃげた段ボール(あれだけ飛べば普通こうなるよな・・・)、そして中の人はいまだ段ボールの中で呻いている。
「・・・痛たたぁ、・・・おい、そこのお前よくもやってくれたな!」
ちっ、まだ息があるようだ・・・
なかなかしぶといじゃないか、なら、こちらも必殺兵器を使わせてもらおう!
取り出したのは、Gジェット!
あの黒い悪魔を討伐するために人間が作り出した決戦兵器。
しかし、こいつは人間にも効果がある。
本来なら人に向けて発射してはならない、注意書きもちゃんとある。しかし、昔、俺の馬鹿の友人が自分の顔面に誤って噴射したことがある。
・・・詳しくは書かないが、その馬鹿の子はGの様に踠き苦しんだ。
まぁ、Gジェットは有能だ。良い子の皆は人に向けて噴射してはいけません!
ただし段ボールの化け物は例外です!
瞬時に襖を噴射口が挟まるように閉め、密室の中に噴射!
『ぎゃああああああああああああ、目が目があぁ!』
懐かしい悲鳴を上げたのは俺です。
襖に穴が開いてたの忘れてました・・・、ガスが顔に直撃です。