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7日間  作者: 山側 森
3/8

じんわりとした水曜日

昼間12時、駅前で。待ち合わせではありません。制服着てますが不良クンでもありません。ただ、家に帰りたいだけなのです。


「あーだりぃ」


今時の若者じゃありません。

年齢は確かに今時の若者ですけどね。髪の毛だって染めてますけどね。

だからといって真昼間から制服で外にいるのは決してサボっているわけではありません。

NO さぼたーじゅ、YES ほどほど。


「あったまイテぇ」


イタい頭って意味でもありません。

頭が痛い方です、正真正銘の頭痛です。

ガンガンガンガン脳みそが刺し振られてる。


「もームリ」


ようやく改札を出ると最近出来た噴水が目に入った。囲むように石段が円を形作っている。

ちょうどひよこ園児たちが石段から離れ去った場所に座る。これ以上歩けない。

ぴーちくぱーちく

ぴよぴよ きゃんきゃん

頼むから黙ってくれ…。

顔面を覆うように両手を額に当て、肘は膝に。

額が熱いのか、掌が熱いのか、はたまた両方が熱いのか。

保健室に世話になったの、何年振りだ…。たぶん最後は小学生の時で…。

頭痛から気を逸らそうと記憶をたどってみるが、響き揺れる頭はもちろん働くわけもなく。


「家に薬あんのかな」


この時間に帰宅しても家には誰もいないに違いない。

薬の在りかなんて知らないし、そもそも薬箱なんて家にあるのか。

寝たい。

どーでもいいから寝たい。

この頭痛とおさらばしたい。

その時聞こえたひよこたちのウルサイ歓声。

加えて感じた背中への軽い圧力。

一拍遅れてじわりと染み込む感覚。


「…」


いやーな予感がして額を抑えながら斜め後ろを見る。

視界に入ったのは濡れた石段。

手を叩く立ち止った通行人たち。

「これが噂の12時の大噴水」という言葉。

正面下に戻る自分の頭。


「…」


理解した。

どうやらこの噴水は12時に爆発するらしい。普段学校にいる自分に知る由もない情報だ。

風邪ひいてるヤツに水浴びさせるとかバカか。

この現実から出来るだけ遠くへ遠ざかりたい。

その為にはこの二本の足で歩いていかねばならないのだが、残念で哀しいことに不健康男子高校生の心は完全に折れていた。


「ねた、い」




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